auとソフトバンク、デュアルSIMでドコモからユーザー奪う?
ASCII.jp / 2023年2月7日 9時0分
昨年7月に起きたKDDIの大規模通信障害によって「事業者間のローミング」が検討されている。通信障害や災害が起こった際、キャリアのネットワークが使えなくなったときには他社のネットワークに接続することで、通信を維持しようという考えだ。
海外に行けば、現地のキャリアにローミング接続するし、4キャリアで同じiPhoneが導入されている。国内でも簡単にローミングできるかと思いきや、実際に運用するのはかなりハードルが高いことがわかってきた。
特に110番や119番、118番といったような緊急通報は「呼び返し」といって、通話が切断されてしまった場合、センターから発信者に折り返す必要が出てくる。ローミングの場合、そうした呼び返しの機能を提供するのが難しいのではないかと言われており、技術的に検討すべき課題が出てきているようだ。
月数百円で使える「通信障害保険」
そんななか、いち早く、通信障害時のネットワークを確保する取り組みとして、KDDIとソフトバンクが名乗りを上げた。2社で「デュアルSIMサービス」を今年3月にも提供すると発表したのだ。
iPhoneなどデュアルSIM対応スマホであれば、auに加えてソフトバンク、もしくはソフトバンクに加えてauのSIMカード(もちろんeSIMも対応)をスマホに指しておける。万が一、どちらかのネットワークが使えなくなっても、もう片方のキャリアのネットワークを使えばいいというわけだ。
料金は「数百円の下の方にしたい」(ソフトバンク宮川潤一社長)といい、万が一、別のキャリアを利用する際には「従量課金で少し高くなると思う」(KDDI髙橋誠社長)という。
ただ、スマホに詳しい人であれば「基本料金のいらないpovoや数百円で回線を維持できるMVNOもある。わざわざ契約する必要なんてないのでは」と思うだろう。しかし、povoや安価なMVNOを契約できる人はリテラシーの高い人だったりする。
KDDIとソフトバンクではショップで契約できるオプションとして提供するようで、リテラシーに関係なく、幅広い人が気軽に契約できる「保険的なオプション」にしていくようだ。
しかも、単なるデュアルSIMではないようで、ひょっとすると、これまで自己防衛的にデュアルSIMを使ってきた人でも魅力的に感じるサービスに「大化け」する可能性が出てきた。
同一番号でどちらの回線も使えるように?
宮川社長によれば「全然、知らない番号からかかってきたら、身内でも電話を取ってもらえないのではないか。自分でも息子からの電話だと気がつかずにとらない可能性がある。できれば発着信は同一番号で提供したい。すでにiPhoneとApple Watchは同一番号で提供しているし、テクノロジー的には不可能ではない」というのだ。
Apple Watch単体でも、iPhoneに入っている携帯電話番号で発着信できるのは同じキャリアで契約しているから当然とも言える。しかし、宮川社長が語るには、auとソフトバンクというデュアルSIMであっても、auのユーザーがソフトバンク回線を使ってもauの電話番号、ソフトバンクのユーザーがau回線を使ってもソフトバンクの電話番号で使えるというかなり画期的なサービスだ。
ただ、この内容は「どこまで現場が準備しているかは置いといての話。こうした話し合いを現場でしていないのであれば議論を詰める必要がある。いまのところは僕の思いつきだ」(宮川社長)のようで、あくまで構想的な考えであるようだ。
実際、関係者に話を聞くと「中身はなにも決まっていない」とのことで、3月には単なるデュアルSIMで、将来的に宮川社長の考えるサービスにアップデートしていくという可能性が高い。
ただ、本当にauとソフトバンクのデュアルSIMサービスが同一番号で使えるようになると、業界に与えるインパクトも大きいだろう。
まず、これまで予備回線としての需要を一生懸命に掘り起こしてきたMVNO、特にIIJなどに与える影響は甚大だろう。IIJはフルMVNOとして、eSIMサービスを提供し、KDDIの通信障害時には、加入者を一気に増やした。しかし、データ専用と言うことで音声通話は提供できていなかった。その後キャリアからの回線を提供することで、音声通話もできるeSIMサービスを始めている。
MVNOとして新たな市場を開拓したのに、auとソフトバンクがデュアルSIMサービスを始めれば、ユーザーが逃げてしまう恐れもある。
KDDIとソフトバンクとしてはデュアルSIMサービスをメインブランドのみの提供として、サブブランドのワイモバイルやUQモバイルでは提供はしないのではないだろうか。
ドコモは提供遅ければユーザー奪われる可能性も
となれば、「安さよりもいざという時にもつながる安心感」を得たいと言うユーザーであれば、ワイモバイルやUQモバイルからソフトバンクやauに契約を切り替える人も出てくるだろう。
そうなれば、KDDIやソフトバンクとしては基本料金の収入が上がるわけで、デュアルSIMがサブブランドとの差別化としての「キラーサービス」になる可能性もある。
もちろん、KDDIとソフトバンクはNTTドコモや楽天モバイルとも話を進めていくことになるだろう。将来的にはNTTドコモからもデュアルSIMサービスが出てくるだろう。
しかし、それがいつのタイミングになるかはわからない。
NTTドコモからの提供に時間がかかるとすれば、その間にKDDIとソフトバンクがNTTドコモユーザーを奪う可能性も出てくる。
KDDIとソフトバンクのデュアルSIMサービスは、単なる「保険的なオプション」に留まらず、ユーザーの獲得合戦につながることも予想されるのだ。
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。
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