障害時の保険として始まる「デュアルSIM」 現時点で気になるポイントや格安SIMに与える影響は？

　主要格安SIMの料金表とともに、格安SIM、SIMフリースマホなどの1週間の動きをまとめてお届けしている本連載。今回は、KDDI／ソフトバンクが3月中の提供を予定している「デュアルSIMサービス」について紹介。それがMVNOの格安SIMに与える影響についても考えていこう。

KDDIとソフトバンクによる「デュアルSIMサービス」は両社の決算説明会に合わせて公表された

昨年7月のKDDI通信障害で議論が始まった非常時対策 他社回線を保険として契約できるように

　昨年7月にKDDIで発生した大規模通信障害を契機に、障害・災害時に他社ネットワークにローミング接続して、緊急通報などを可能にする仕組みについて、総務省で検討が進められている。

　そんな中、KDDIとソフトバンクは、両社の連携で障害時のバックアップ回線としての「デュアルSIMサービス」を3月下旬にも開始することを発表した。これはKDDIがソフトバンクから、ソフトバンクはKDDIから回線を提供してもらい、それぞれのユーザーに自社のサービスとして展開するというもので、デュアルSIM対応のiPhoneなどで利用できることになりそうだ。

　料金イメージについては、「数百円の下の方で考えている」（ソフトバンク宮川社長）とのことで、日常的に用いるサービスというよりは保険的な意味合いが強いと言える。

ソフトバンクの宮川社長は、KDDI髙橋社長の呼びかけからで取り組みがスタートしたと紹介。1つの電話番号で使えるようにすることも「技術的には不可能ではない」と話す

　すでに格安SIMやデュアルSIMを積極的に活用しているユーザーであれば、「今更」という感じを受けるかもしれないが、デュアルSIMについて知識を持たない、使ってみようと考えたこともないユーザーにも範囲を広げて、緊急時対策の一環としてのサービス提供を想定しているのだろう。

対応端末や実際の利用方法、電話番号の違いなど 詳しくないユーザーにどうサービス内容を伝えるのか

　サービスの詳細は今後の発表とされているが、気になる点はいくつかある。

　まずは「対応端末」。iPhoneであれば、XS／XR以降、第2世代iPhone SEなどもデュアルSIMに対応している（ただし、詳しくないユーザーがeSIMを扱える？）のに対し、つい最近までのキャリア版Androidスマホの大半はシングルSIMで、さらに他キャリアのプラチナバンドをサポートしていないものも少なくない。そうした端末のユーザーが利用を希望した場合にどう説明するのか。

iPhoneはすでに数年前のモデルから、デュアルSIMや国内4社のネットワークに対応しているが、ではキャリア版のAndroidスマホのユーザーにはどうする？

　続いては、どのタイミングで回線で切り替えればいいのか、いざ必要になったときに切り替え方法は簡単にわかるのか。方法をスマホで調べようにも、そのときはすでにメイン回線で通信ができない状態のはず。「保険」としての役割をしっかり果たせるのかどうか。

　そして「電話番号」。最近は知らない番号からの電話は「出ない」という人が少なくなく、シニア世代には特殊詐欺対策としてそれが推奨される状況もある。せっかく非常時に予備回線で連絡を取ろうとしても出てもらえないと意味がないし、逆方向だと予備回線の番号まで知っていないと、そもそも電話をかけることができない（自動転送の機能が用意されたりする？）。

　電話番号の問題については、ソフトバンク宮川社長が思いつきとしながらも、1つの番号で使えるようにするのは「技術的には不可能ではない」と発言しており、将来的には対応を期待したいところだ。

MVNOの格安SIMに与える影響はかなり大きい？

　また、MVNOに与える影響はかなり大きなものになると考えられる。サブ回線、保険的な存在としてMVNOの格安SIMを利用しているユーザーは相当な割合でいるはず。デュアルSIM、サブ回線の便利さが一般に広まる効果があっても、マイナスは大きいのではないだろうか。

　ましてやワンナンバー化が可能になったり、単なる「保険」の枠を超えるような機能が追加された場合は、状況が大きく変わる可能性もある。そうした意味でも正式発表と今後の展開が気になるサービスと言える。

人気の音声通話付きSIMの料金表（税込）

^{※1：au網を用いたMVNOのサービスは基本的にいずれも直近3日の通信量が6GBを超えた場合の通信速度の制限がある ※2：加入から7ヵ月無料のキャンペーンで通信量が増量される（以降、月550円） ※3：加入から1年無料のキャンペーンで通信量が増量される（2年目以降、月550円）}