マランツ史上最高グレードのセパレートAVアンプ「AV 10」「AMP 10」
ASCII.jp / 2023年2月14日 11時0分
マランツは2月14日、AVアンプのフラッグシップモデル「AV 10」と「AMP 10」を発表した。プリアンプとパワーアンプを別筐体で提供。“Marantz Duo”として展開する。価格はともに110万円で3月の発売を予定している。
AV 10
AV 10は15.4ch対応のAVプリアンプ。Dolby AtmosやDTS:X Pro、Auro-3Dなど主要なサラウンドフォーマットに対応。さらに、IMAX Enhancedや360 Reality Audio(MPEG-H 3D Audio)などもサポートするリファレンスグレードの製品となっている。
HDMI端子は入力7系統/出力3系統で、すべての入力が8K対応。プリアウト端子の同時出力は最大15.4ch(9.4.6ch)だが、背面にあるXLR/RCA端子はそれぞれ17.4chぶんでドルビーアトモスとAuro-3Dの共存がしやすくなっている。ドルビーアトモスでは天井設置のトップスピーカーが基本、Auro-3Dではサラウンドスピーカーの上方にあるハイトスピーカーが基本になるため、同じx.x.6chでも配置が異なる。
マランツが提供するセパレート型のAVプリアンプとしては従来「AV8805A」があった。AV 10では筐体の変更(高剛性の新プレミアム・キャビネット)を始めとして内容を一新。2000MIPSの最新型DPS搭載で処理性能が向上したほか、新開発のDAC+マスタークロック回路の採用、独自のHDAM-SA3を用いたフルディスクリートプリアンプ回路など、全般的かつ大きな進化を遂げている。
このうちDSPは「Griffin Lite XP」(2コア、1GHz)を採用。多彩かつ最新のオーディオフォーマットに対応しているのはこのDSPに負うところが大きい。音場補正については標準の「Audyssey MultiEQ XT32」に加え、後日の有料アップグレードで「Dirac Live」も利用できる予定だ。
新開発のDAC+マスタークロック回路は、ハイグレードの2ch DACを10石投入。アクティブ方式のI/V変換回路や超低ノイズのディスクリート電源/ハイグレードコンデンサーなどを組み合わせて高音質化を目指している。マスタークロックはHi-Fi向けでハイエンドのSACDプレーヤー「SA-10」と同等。クロックファンアウト・バッファーの搭載により、既発売の“CINEMAシリーズ”と比較して、ジッターの発生による信号の乱れを1/1000に抑えている。回路のレイアウト上、マスタークロックから各DACへの距離には差が出るが、ここについてもインピーダンスマッチングで均一化するといった徹底ぶりだ。
DACは、AV8805がESSの「9010K2M」だったのに対して、AV10はESSの「9018K2A」と2ランクアップ。サブウーファーも同じものを使用している。
プリアンプ部にHDAM-SA3を使うのはマランツのAVアンプとしては初だという。結果AV8805Aと比べて回路規模は倍以上になり、1chあたりのトランジスタ数は20から40個に、全チャンネル合計で300から760個になった。マランツによると、HDAM-SA2とHDAM-SA3にはそれぞれ良さがあり適材適所に使っているそうだが、AV 10については出力段の増幅制度が高められ、ソースプレーヤーとしてのクオリティーの向上ができたという。
内部のレイアウトは、デジタル回路、D/A混在部、ピュアアナログ部を奥から順にエリア分け。ノイズが出るものはまとめ、デジタルノイズの干渉を抑える試みだ。
新デザインのキャビネットは3ピース構造で、高音質を実現。アルミ削り出しの板をトップとサイドに置き、それに天板を載せる構造で、トラップドアはなんと8mm厚という贅沢な構成になっている。背面を従来機と比較した際にまず目につくのはRCA端子の位置だ。AV 10ではアンバランス(RCA)とバランス(XLR)接続の両方で同品位の構成を目指しており、横に並ぶ形になった。結果、内部で受けるノイズを同じとなる。RCA端子は削り出し。こうした信号の出力部分への配慮で、他社製品との連携でもハイパフォーマンスな再生を提供できるという。
また、映像信号やDSPなどオーディオ以外にも新しい技術を詰め込んでおり、生産技術、製造も含めて多くの人が関わってできた製品だとする。マランツによると「泥臭い作業の結晶のような製品」であり、音にも自信があるとした。
AMP 10
AMP 10は16chのClass Dアンプを搭載したマルチチャンネルパワーアンプ。各アンプは2chモジュールの組み合わせで実現しており、出力は8Ω負荷で200W、4Ω負荷で400Wとなっている。さらに2つのアンプを組み合わせるBTL接続にすると最大400W/8Ω×8chのアンプとして活用でき、バイアンプモードも持っている。
これらの入力/出力設定は背面の切り替えスイッチで変更する。そのためにRCA/XLR切替スイッチ、バイアンプ/ノーマル/BTL切替スイッチを用意している。設定の反映には安全確保のため再起動が必要。電源投入時にスイッチの位置を見てアサインを反映する仕組みだ。
目玉は足掛け5年の開発成果を反映したいるとするClass Dアンプモジュールだろう。Hi-Fiアンプの「PM-10」や「MODEL 30」の実績が反映された、新規開発のオリジナルアンプモジュールだ。チップとしてはICEPowerが用いられているが、これは設計の初期段階に調達可能な製品を比較試聴したところ、同社の汎用モジュールの音質が非常に高く、基板設計の自由度が高かった点が理由だという。マランツはHi-FiアンプでHypexのClass Dアンプモジュールを使用しているが、Hypexの場合モジュール単位での提供となるためカスタマイズの制限がある。ICEPowerでは基板から自分たちで作れるという利点を評価したという。
アンプモジュールは、ICEPowerから供給を受けた中心となる一部の部品(コントロールモジュレータICとFETを駆動するモジュール×2の合計3つ)を除いて多くの部分をマランツが独自に作ったものとなっている。HDAM-SA2モジュールを搭載した電流帰還型のフィードバック回路となっており、Class Dと相性がいいそうだ。消費電力、高品位なサウンド、16chのパワーアンプなのでヒートシンク含めてできるだけコンパクトにしたいという意図があり、ICEPowerが提供する汎用モジュールの高いスペックを生かしつつ、自社で基板を起こすメリットになる高品位なパーツ選定なども可能となる。高品位コンデンサー、インダクター、MELF抵抗、薄型被膜抵抗などを搭載し、低ノイズ/低歪みを意識した回路の乗数の変更、基板レイアウトの変更などを、供給元と議論しながら作り上げたという。
また、狭いスペースに部品を実装できるよう通常規格よりも細かくしており、実装が困難だったが、基板設計・生産技術などとの協議で最適なパターンが組めた。設計と近い場所に自社工場がある強みであり、外部委託ではなかなかできないことだという。全数を事前確認して出荷する。
信号の流れも最短かつストレートでロスがないものにした。また、基板と基板の接続にワイヤーではなく太いバスバーを多用。電源ライン、GND、アンプの出力ラインに非磁性体のバスバーを使用している。ワイヤーの場合、接続点が小さく抵抗になってしまい、ロスやノイズの発生源になる。面と面で接合して、ネジ止めするとインピーダンスが下がる。効果としては、ワイヤーへのノイズ飛込、ノイズ発生、品質ばらつきなどが防げる。筐体の一部なので、製品の構造もシンプルにできるわけだ。
スイッチング電源(SMTP)は、アナログのリニア電源も候補だったが、小ささに加えて大電流を流しても電源の変動が非常に少なく安定的な動作が可能という理由で選んだ。オーディオ専用で、高い周波数でスイッチするので、出力するノイズも抑えられるという。一方、入力回路、アナログ回路など小信号用にはアナログ電源(HDAM仕様)を使用しており、後段にモジュールごとに安定化した電源を作るためのディスクリート電源回路も。
筐体については、3ピーストップカバーで最小限の共振に。トランスの下には1.2mmのベースを置いている。デザイン的には、プリアンプのようなOLEDはないが。代わりにMADE IN JAPANのレベルメータを置いている。このデザインはマランツオリジナルで、ライティングにもこだわっている。シアターなので暗い部屋での見え方も時間をかけて検討したという。
5年の歳月をかけた開発は、オーディオメーカーのマランツとしても例を見ないほど長い期間だったという。設計担当者によると、試作して検討。ノイズ対策、オーディオ性能の向上、音質などの泥臭い改善をサウンドマスターと一緒に続けてきたという。中級機以下では使えない高級パーツも存分に使え、マランツのフラッグシップにふさわしいものにできたとする。
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