「危機を脱した」と宣言したファーウェイに対し、米政府が輸出を全面禁止の動き
ASCII.jp / 2023年2月18日 12時0分
ファーウェイにとって厳しい冬が続いている。バイデン政権が同社に対する輸出規制をさらに強化したという報道が出ている。4G対応チップなどこれまで許可が降りていたものも対象となるという。
ファーウェイへの技術供給ライセンスを全面禁止?
米中貿易戦争の象徴の1つであるファーウェイ。2019年、当時大統領を務めていたトランプ氏の下で、ファーウェイはZTEとともにターゲットとされた。国家保安を主な理由に、国内キャリアが5Gでファーウェイの技術を調達することを禁止し、さらには米国の技術の輸出を禁じた(輸出管理規則「エンティティーリスト」入り)。
同年末には、創業者の娘でCFO兼副会長を務めていたMeng Wanzhou(孟晩舟)氏がカナダで逮捕される(2021年9月に釈放され中国に帰国)など、ファーウェイに対して厳しい姿勢を見せていた。
政権が変わり、コロナ禍に入り、ファーウェイに対する直接の大きな動きはなかった(2022年11月に、中国製監視カメラの輸入を禁じた中にファーウェイも入っていたようだ)。そこに1月末、米政府が輸出規制を強化し、全面的に禁止したという報道がFinancial Timesなどから出ている(https://www.ft.com/content/23433f43-8d81-4a24-9373-fc0ac18f948a)。
従来はエンティティーリスト入りしたあとでも、規制の対象となっていないものについてはライセンスを取得すればファーウェイに輸出できるという“抜け道”のようなものがあった。実際、クアルコムやインテルなどは、5Gに関連しない技術についてライセンスを得て輸出している。このやり方を使って総額614億ドルもの製品がファーウェイに供給されていたという。
この抜け道を塞ぐ。つまり、輸出禁止の対象を広げるというのが、1月末の報道だ。
なお、クアルコムは引き続きファーウェイに部品供給を継続するという旨をGizchinaが報じている(https://www.gizchina.com/2023/02/05/qualcomm-confirms-it-can-still-ship-snapdragon-chips-to-huawei-even-after-the-new-us-ban/)。
ファーウェイは「危機的状況を脱した」と宣言も 実際のの状況はどうか?
「2022年、Huaweiは危機モードから抜け出すことができた」――――2022年末に輪番会長のEric Xu氏は、新年に向けたメッセージでこう記した(https://www.huawei.com/us/special-release/new-year-message-2023)。
デバイス事業の落ち込みはひと段落し、「Huawei Cloud」をはじめとしたICTインフラ事業は順調に成長を続けているとXu氏は説明。売上は6369億人民元(約12兆円)で予想どおりとしている。2021年の売上高は6368億人民元であることから、微増~横ばいとなりそうだ(同社は毎年春にアニュアルレポートを出すことになっており、正式な数字はそこで公開されるだろう)。
ポストコロナに向け、2023年は品質にフォーカスするほか、研究開発への投資も約束している。興味深いのは、ファーウェイの自社特許のロイヤリティー収入が、他社に支払うロイヤリティーを上回ったという点だ。2022年には20以上の特許ライセンス契約を結んだ。12月末には、Nokiaと特許ライセンス契約を延長したことを発表している。
2022年に米国特許商標庁(USPTO)に特許を付与された数で、ファーウェイは堂々の4位。付与された件数は2836件、これは前年比2%増でランクも5位から1ランク上がっている。
同じく標的のTikTokはここ数ヵ月で大きな動きがあるか?
米中関係ではファーウェイ以上に紙面を賑わしているのが、TikTokだ。TikTokは中国ByteDance社のソーシャルサービスで、やはり国家保安への懸念が持ち上がり、2020年にも米国企業に買収されるとの噂があった。当時は結局期限切れとなり、中国はアルゴリズムを輸出規制リストに入れた。
バイデン政権となってからも米国事業の切り離しを求めていたが、年末から動きが活発だ。すでに連邦職員が業務端末でTikTokをダウンロードして使用することは禁止されており、州レベルでも職員が業務端末でTikTokを使うことを禁じている州も増えている。TikTokのユーザーは米国に1億人以上と言われている。若者が中心で10代の3分の2とも言われているが、大学でも禁止の動きが出ている。
2022年末に超党派グループがTikTokを禁じる「Anti Social CCP Act」とする法案を提出、2月に下院外交委員会は法案の採択をする予定となっている。
TikTokのCEO、Shouzi Chew(周受資)氏は3月23日、米議会下院エネルギー・商業委員会で証言することに応じている。また、議員へのロビー活動も活発で、OpenSecretsによると、ByteDanceがロビー活動に費やした金額は2022年は538万ドル。2020年は261万ドルというから、2年で倍増となる。
TikTokはロサンジェルス郊外にTransparency and Accountability Centerを設け、訪問者にプライバシーポリシーを説明しているという。
日本では回転寿司店での炎上で話題のTikTokだが、米国では重要な時期を迎えている。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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