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ファイターズ新球場レポ パナソニックの照明が地味に凄い

ASCII.jp / 2023年3月8日 9時0分

 行っちゃいましたよ話題の新球場。なんでアスキーが野球の話してんねんという話ですけど、北海道は北広島市にまもなく開業する新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」にはパナソニックエレクトリックワークス社の照明やサイネージが使われているのです。メディア向け内覧会ではパナソニックコネクト社が手がける照明演出のド派手なデモも披露すると言うではないですか。それは見ねばならんということで、雪どけの進む北広島まで足を伸ばしてきました。

 エスコンフィールドは敷地面積約5ヘクタール、収容人数約3万5000人の、日本初開閉式屋根付き天然芝球場。北海道日本ハムファイターズの本拠地として、3月30日に開業します。エスコンフィールドを含むエリア全体は北海道ボールパークFビレッジと言い、約32ヘクタールの土地にグランピング施設や、ボーネルンドプロデュースによる子どもの遊び場などが集まっています。

 エスコンフィールドは野球場だけでなく、レストラン、ホテル、温泉、サウナなどが入り混じった複合施設。それを取り囲むFビレッジは、公園や空き地のように「野球をきっかけに集まれるコミュニティ」を作ることが目的となっています。地域活性化のための拠点というわけですね。

まずはスタジアムツアーへ参りましょう

 まずは球場のことを知るためにスタジアムツアーへ参りましょう。プレミアムガイドツアーのルートに沿い、主なエリアをファイターズガールの鈴木穂乃花さんに案内してもらいました。ツアー料金は平日3500円、休日4500円です。

 エスコンフィールドは各階がサービスレベル(地下)、フィールドレベル(1F)、メインレベル(2F)、スターレベル(3F)と呼ばれ、プレミアムガイドツアーはフィールドレベルから始まります。1F席からの眺めはこんな感じ。グラウンドに近く感じますね。

 グラウンドを眺めながら、約100万円の超高級席、ダイヤモンドクラブシートのお客さんが入れるラウンジに入っていきます。

 お客さんが使えるラウンジの内装はどこもかしこもキンキラキンで、いかにもVIPの雰囲気。夜のお店って感じがしますね。

 そのままラウンジを抜けて通用路へ行きましょう。ちなみにこの照明はパナソニック製だそうです。

 見えてきたのはレンガの壁。ファイターズ選手が使うチームエリアです。ツアーではチームエリアを監督室も含めて見学できます。監督室を見られるのは珍しく、ファンの皆様に見学いただきたいという新庄監督からの要望から実現したということ。内部は撮影不可だったため、テキストのみですが一部ご紹介します。

 入り口には北海道野球の発展に寄与した久慈次郎さん、ヴィクトル・スタルヒンさんの肖像写真。少し進むと2016年にファイターズを日本一に導いた栗山英樹監督の名前が付けられた広い講堂。大きなスクリーンを使い、分析官が相手打者の分析などを説明する場所になっています。

 さらに進むと監督室。ふかふかの椅子の近くに複数のテレビが並んでいました。ここで監督は選手の試合、相手球団の試合、選手のビデオを同時に見るそうです。

 続いて見えるのがチームロッカー。円形の部屋を40個のロッカーが囲むという珍しい作りです。中央に円形のソファがあり、選手同士がコミュニケーションをとりやすいようドーナツ状になっていました。

 チームロッカーからダグアウトに向かう道はコンクリート舗装。スパイクがコツコツと鳴り、選手の士気を高めるためということ。私たちも士気を高めながらダグアウトに向けて歩いていきましょう。

 さあやってきました、こちらがグラウンドです。赤い部分はウォーニングトラック(ウォーニングゾーン)と言い、選手が夢中でボールを追いかけていても、近くにフェンスがあることがわかるようにザクッとした感触にしているもの。

 ウォーニングトラックには富士山の溶岩、内野の土はアメリカから輸入したレンガを砕いたものがそれぞれ使われているそうです。

 グラウンドは人工芝ではなく天然芝。寒冷地でも育つ芝生2種類の混合です。芝刈りは週3回で、1人で芝刈りをしたら6時間もかかるということ。手間ひまかかってますね。

 大きな機械は天然芝育成用ライト。14台のライトで半分の芝を育成しています。芝が根を張りやすいよう30cmの砂をまき、その下に地温コントロールシステムというロードヒーティングのような設備を入れているということでした。

 点灯時は電球色の光が出ていました。これだけ見ると照明演出っぽいですね。

 選手用のベンチも座らせてもらいました。木製でがっちりした作りです。

 新庄監督が座るシートは道産タモ材製。点で支えるタイプのやわらかいマットレスが敷かれていました(西川エアーでしょうか)。

温泉&サウナから野球観戦

 スタジアムツアーが終わりましたので、球場内をぶらぶら歩いていきましょう。

 最初に向かうのはエスコンフィールド名物の温泉&サウナ「tower eleven onsen & sauna」。イレブンは背番号11のことで、最近ならダルビッシュ有選手、大谷翔平選手が背番号11を背負っていたので野球好きには言わずもがな。

 サウナ室はあちこちにバットの造作をあしらい、ヤチダモやアオダモなどバットの材料になる木材が使われています。

 サウナは熱したサウナ石に水をかけて蒸気をあげるロウリュ方式で、室温は80〜85度。点数が入ったらロウリュをするみたいな遊びもありそうです。

 基本的にはサウナに入った後、外側にあるテラス席「ととのえテラスシート」で観戦しますが、サウナ室の前面に大きな窓があり、中でも観戦ができてしまいます。アツい。

 サウナとして珍しいのは「立ち席」があること。サウナプロデューサーのととのえ親方さん(写真)によれば「立って観戦できる」ようにするのが狙いということでした。アツいですね。

 サウナだけでなくお風呂に入りながら観戦することもできます。普通の露天風呂をはるかにしのぐ開放感ですね。

至高のビールとホットドッグ

 お次はグルメ。球場の楽しみと言えばビールとホットドッグですが、エスコンフィールドはどちらも気合いが入っています。

 まずビールですが、「よなよなエール」のヤッホーブルーイングがなんと球場に醸造所を構え、球場オリジナルビール「そらとしば」を作っています。

 そらとしばビールのラインナップは、球場の開放的な雰囲気をイメージしたさわやかな味の「プレイボールエール」、酵母のやわらかな甘みがある「ビッグフライセゾン」、季節限定で香りや味わいを変える「シーズナルビール」の3種類。

 なぜ長野のヤッホーが北海道に来たのかといえば、Fビレッジのビジョンに共感したところが大きいそうです。

 「クラフトビールを中心としたコミュニティを作りたいと言われたんです。単においしいビールを作るだけでなく、人のつながりを作りたいという私たちのビジョンと重なりました」(ヤッホーブルーイング 岡 秀憲さん)

 ヤッホーブルーイングで自社以外に醸造所を設けるのは初めて。ヤッホーのブランドを使う以上、お客さんからそれだけのクオリティを求められるためプレッシャーも大きいということでした。

 今は麦芽もホップも輸入ですが、そのうち北海道産を使い「とれたてのホップで作るできたてのビール」なども作りたいと話していました。いつか地産地消のできたて生ビールを飲んでみたい。

 さてお次はホットドッグです。

 ホットドッグを出しているのは、1Fフィールドレベルにある、日本ハムのレストラン「タワー・イレブン・フードホール・バイ・ニッポンハム」(長い)。

 看板メニューが、通常の約3倍の長さがある特製シャウエッセンを使ったホットドッグ。北海道小麦ゆめちからのみを使用した専用パンにはさんでいます。

 店内のモニターには新庄監督が実食する映像も流れていました。「何かこれシャウエッセンっぽいんだけど?」というすっとぼけたコメントを出しています。

 実際試食したところ、確かに「シャウエッセンっぽいんだけど?」という味でした。たっぷり食べられるのでシャウエッセン好きにとっては最高です。パンもパリふわで美味でした。

 ビールなどは球場内で売り子さんから買うこともできます。売り子さんのユニフォームは新球場に合わせた新デザインです。

 新球場らしく支払いはすべてキャッシュレス。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済とほとんどのキャッシュレス決済が使えるようになっていました。

 なおFビレッジでは、決済手段を紐づけられる専用キャッシュレス決済アプリ「FビレッジPAY」を用意。ファイターズファンのための銀行サービス「F NEOBANK」と合わせて利用してもらうことを狙っています。

 ホットドッグじゃ足りない、うまいものをもっと食べたいぞという食いしん坊は、2Fメインレベルにある飲食エリア「七つ星横丁」に行きましょう。

 お店はバラエティ豊かで、ラーメン、寿司、焼き肉、居酒屋などに加え、たこ焼き、餃子、スイーツショップなども入っています。

 割烹料理の銀座三州屋では、プロレス界のレジェンド藤波辰爾がオリジナルメニュー「藤波辰爾のドラゴンカレー」を提供。内覧会ではドラゴン本人が店にいて「おい、これ食ってけよ」と記者を煽っていました(写真なし)。

オリジナルユニフォームがその場で作れる

 次はショップに行きましょう。1Fメインレベルのショップはとても大きく、お洋服を中心とした品ぞろえになっていました。

 目玉はポートランド出身のブランドBaseballism(ベースボールイズム)のオリジナルウェア。アメリカでは大リーガーが普段着にしていることでも有名だそうです。全体的に使いやすそうなデザインで、Tシャツと帽子が欲しくなりました。

 もうひとつの目玉としてオリジナルのサウナウェアが売られていて笑いました。こちらもシンプルでかっこいいデザインなのでサウナ好きならぜひどうぞ。

 店内ではオリジナルユニフォームをその場で作ることもできます。好きなユニフォームと背番号などのワッペンを選んで、その場で自分の名前を付けてもらうというもの。野球好きな子どもと一緒にユニフォームを作ったりすると楽しそうですね。

 ファン向けグッズとしては新庄監督と同じタイプのサングラスなどが売られていました(5万円也)。これであなたもBIG BOSS!

 個人的に残念だったのはFビレッジ公式キャラ「くまの子 えふたん」のグッズがなかったこと。ウェルカムモニュメントになっている親クマ「えふさん」のグッズもありません。ぜひクマの置物を売りましょう。

パナソニックづくしのクラブラウンジ

 ……というか目的を忘れかけていましたがこれはパナソニックの取材なんですよね。パナソニックがネーミング権を買った3塁側ダグアウトクラブ「パナソニッククラブラウンジ」に行きましょう。

 パナソニッククラブシートは89席で、年間シートとして販売中。単価は試合日によって異なりますが1万3000円から2万7000円です。1塁側はNTTドコモクラブラウンジで、マウンドをはさんでパナソニックと向かい合っていました。

 お客さん用のラウンジには、マッサージチェアに美顔器にフットマッサージャー、空気清浄機代わりにジアイーノなどパナソニック製品がこれでもかと並んでいます。トイレもパナソニック製のアラウーノ。入り口にはレイアウトフリーテレビがありました。

 パナソニックエレクトリックワークス社の製品も並びます。

 空間演出にはダウンライト型プロジェクターのバイオシャドーが使われていて、木漏れ日のような影が床に投映されていました。

 天井にはダクトレール付けのスピーカーやナノイー発生器、サイネージのように使える照明ランターナもぶらさがっていました。

 便利だったのは窓側席で、スマホを充電しながら観戦できます。なんならすべてのシートに付けてくれてもいいのに。

パナソニックの総力をあげたド派手な演出

 そして照明の話です。エスコンフィールドにはパナソニック エレクトリックワークス社が照明やサイネージなどを納入しています。グラウンドを照らす照明は2kW相当のLED投光器が226台、1kW相当が128台の合計354台。

 普通、球場はぐるっと囲むように照明を配置しますが、エスコンフィールドは開閉式ということもあり、内野側・外野側にそれぞれ直線状に照明を配置しています。これだけで十分明るさを持たせながら、選手がまぶしくないよう配置するのはとても苦労させられたそうです。

 354台の照明はひとつひとつが指向性を持った点光源のようにグラウンドを照らし、光だまりを作っているイメージです。近くで見てみると角度が複雑につけられ、調整されていることがわかりました。

 システムとしての面白さは、音・映像・照明・サイネージがすべてリアルタイムに連動していること。球場に流れるすべてのコンテンツを、パナソニック コネクト社の新スタジアムコンテンツマネジメントシステム(S-CMS)で統合管理できるのがエスコンフィールドの強みです。たとえば球場内に600台あるサイネージを1つ1つオンオフして回る必要がなく、よけいな人手がかかりません。

 サイネージはケーブルテレビの放送技術を応用することで0.5秒以下の遅延で映像が転送可能。コンコースでも試合の熱気が伝わるようになっています。映像制作にはやはりパナソニック コネクト社の映像制作ソリューション「KAIROS」が採用されました。

 球場を盛り上げる照明演出の面白みは、直線状に並んだ照明が様々なパターンでビカビカッと光りつつ、グラウンドと客席を含む球場全体に絵を描くようにめまぐるしく光が動きまわるところです。

 説明してもわかりにくいので、私のツイッターですが動画をどうぞ。

 動画で伝えきれないのは迫力です。光の演出がキレイというのもありますが、巨大ビジョンや大音響と相まってものすごい迫力がありました。炎を上げたりしなくても、コンテンツだけでこんな迫力を出せるものなのかと感心しました。

 内覧会向けで披露しているのは簡単なデモで、本番はより大規模な照明演出があるということ。サイネージを含めてすべてを連動させたド派手な演出になるそうで、どんな内容になるのかが気になります。ぜひ本番も見てみたいですね。

エスコンフィールドは照明にも注目

 開業間近のエスコンフィールド。サウナにビールなど色々魅力がある中でも感心したのがパナソニックの照明でした。演出がすごいというのもありますが、開閉式球場という制約を課されながら実際に照明がどのように当たるのかを考え、実用性と演出性をひねりだすという職人芸的な凄みがありました。パナソニック コネクト社ではスポーツVRという照明をシミュレーションするシステムを使っていて、YouTubeに紹介動画も上がっています。

 野球でもなんでもそうだと思いますが、人に驚きを与えるモノというのは最新の技術と地道な努力から作られているものなのですね。エスコンフィールドを訪れたときはぜひ照明にも目を向けてみてください。

 

書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ。6歳児と2歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。

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