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JALがサウナ内の人数をリアルタイムでカウントできるシステムを発表! でもなぜサウナ?

ASCII.jp / 2023年3月8日 12時0分

サウナ室の前に置かれたサムスン製タブレットと、TOKYO SAUNISTによるサウナ室利用状況画面

JALとサウナの結び付きから紐解く 最新技術が詰まったシステム

 日本航空(以下JAL)とアクティアは、センサー技術やクラウドを活用した「サウナ室リアルタイム人数カウントシステム」を開発。スマホやPCでサウナの混雑状況が把握できる新サービス「TOKYO SAUNIST」を開始すると発表しました。と、聞くと「どうしてJALがサウナのサービスをするの? どうやって高温多湿の環境下で人数をリアルタイムで計測できるの?」など様々な疑問が頭をよぎります。謎が謎をよぶ発表会見に行ってきました。

イノベーション推進部の岡本昴之アシスタントマネージャー

 まずJALとサウナの関係について。このサービスを担当するのはイノベーション推進部の岡本昴之アシスタントマネージャー。岡本さんは、2018年に社内でサウナ部を立ち上げたほどのサウナ好き。ちなみにJALサウナ部の部員は現在470名近くいらっしゃるそうで、そのうち女性は42%ほど。JALの中ではサウナが盛り上がっているのだとか。そして異業種企業のサウナ部との交流も活発なのだそう。

JALとサウナの歩み

 そんなサウナ好きの岡本さんは「温泉旅行のために飛行機を利用するように、サウナを目的に飛行機で旅行をするサウナ旅行が当たり前になる時代が来るかも」と、2019年にサウナツーリズムを核とした商品・サービス「JALサ旅」をスタートさせます。ですが、その頃に新型コロナウイルス感染症拡大により、航空需要は激減。JALは大打撃を受けます。当然JALサ旅もいったん中断することに。ちなみに現在は、JALサ旅のサービスを再開しています。

 そして岡本さんは2022年、イノベーション推進室への異動辞令が言い渡されました。イノベーション推進室とは、JALが築き上げた強みと、社員の潜在能力とテクノロジーの力を組み合わせて新しいものを生み出そうという部署。JALとしては、航空産業以外の、たとえばライフスタイル商品で新しい活路を見出そうとしているようです。

サウナにおける問題点

 そこで岡本さんは普段のサウナ利用において「混雑状況がリアルタイムでわかるシステムがあれば便利」と着想。サウナを利用している方なら経験があると思いますが、扉を開けてみないと満室か分からない。中にいる人からすると、扉を開けるとそのたびに温度が下がる。ならば満室かどうかがリアルタイムで計測できれば双方にとって有益というわけです。

イノベーション推進室の斎藤 勝部長

 そこで岡本さんの上司にあたるイノベーション推進部の斎藤部長に打診。話を聞いた斎藤さんは、「岡本はサウナに魅了されているので、サウナーの人にしか分からないニーズを的確にとらえていると思いました。よく趣味を仕事にするな、と言われますが、それが逆に色々なものをダメにしちゃっていると思うんです。私の仕事は、社員がやりたい事をフィニッシュに持ち込むことです」と快諾。そこには「けれど、好きだけでしたら何もできない。今はテクノロジーがあるので、それを組み合わせればモノにできると思いました」というよう考えがあったようです。

岡本さんによるサウナマーケットの分析

 もちろん岡本さんには勝算がありました。それは現在の「第三次サウナブーム」です。ここ数年、サウナの人気はうなぎのぼり。特に若い人の間で人気を集めています。実際、Googleの検索ワードランキングも、年々検索数が増えているのだとか。また月に1度サウナに行く人は1000万人いるという話もあり、「サウナは一時のブームではなく、ライフスタイルの一部になりつつある」と、岡本さんは分析します。これはJALにとっても「近年は若い人が飛行機を利用する機会が減っている。その若年層に対してJALがリーチできる」というメリットもあると岡本さんは語りました。それを言われたら、斎藤さんも納得するというものです。

アクディアの北野幸雄代表取締役

 岡本さんは、パートナーとしてアクティアを選択。アクティアはHPによると「先端テクノロジーを読み解きクライアント企業の新規事業創出・実行をクライアント企業と寄り添って実現すること」というのをスローガンとする企業。代表取締役の北野さんは、岡本さんと一緒にサウナに行き、まさに裸の付き合いでタッグを組んで、岡本さんの願いを叶えようとします。

LiDARで出入りを監視し Galaxy Tab S8でモニタリング

システム図

 では、北野さんと岡本さんが作り上げたシステムをご紹介しましょう。サウナの入退出は、自動車の追従で使われる3D-LiDARを利用して監視。その情報をタブレット端末を介しリアルタイムでクラウドに上げ、サウナ利用者には専用のスマホアプリで、施設管理者はPCやタブレット端末などでリアルタイム表示するウェブアプリで、利用状況を提供するというもの。

 問題になったのは計測方法。高温多湿という環境下と、プライバシーの観点から映像検出という方法は使えず。そこで検討の結果、ドイツ・SICK社の3D-LiDARのセンサーをサウナ室の外のドアに取り付けることで問題を解決したとのこと。

SICK社製3D-LiDARセンサー
センサーで入退室を計測する
システムを説明する岡本さん

 このSICK社製センサーをサムスン製のタブレットと接続。タブレット端末はサウナ室利用状況を表示するとともに、インターネット回線を通じてアリババのクラウドサービスにデータを転送。利用者はリアルタイムでクラウドサーバーにアクセスすればよい、というわけです。

外気浴場にモニターを設置すれば、サウナ室の利用状況がわかるようになる

 利用状況の表示をサウナ室のみならず、サウナ後の外気浴場所(休憩施設)にも設置すれば、さらに利便性は高まります。実際に動いている様子をみたところ、入退室した5秒以内にサウナ室の状況に反映されており、ほぼリアルタイムといえそう。

テルマー湯の垣花氏(右)とのトークセッション
ユーザーアンケートの結果

 新宿にあるテルマー湯で検証実験をしたところ、これが大好評。施設側も「タオルの交換時期、ロウリュウのタイミングなどがわかり、とても有効でした」(テルマー湯:垣花氏)とのこと。またユーザーアンケートを取ったところ好評だったとか。

その名も「TOKYO SAUNIST」 将来は日本中のサウナに導入したい

TOKYO SAUNISTのコンセプト

 岡本さんは、このシステムを「TOKYO SAUNIST」と命名。東京と名付けたのは、サウナは首都圏を中心に人気があるから。実際「JALサ旅」の利用者の大半が首都圏在住なのだそうです。ですが、別に東京の施設だけではなく、全国のサウナ施設に、このシステムを導入したいと夢を語ります。

サウナにかけて37施設にセンサーなどを無料で提供すると表明
施設側のダッシュボード(ウェブアプリ)
カレンダーで1日の様子がわかるようになっている

 初年度はテルマー湯のほか37施設に、このシステムを設置する予定で、センサー代などの費用はJALが負担します。なお、38施設目以降の設置費用(イニシャルコスト)と、施設側のシステム利用料(ランニングコスト)は、近日発表するそうで、この会見では明らかにされませんでした。

 一方、エンドユーザー向けのスマホアプリは9月にローンチ予定。スマホアプリでは、AndroidとiOSの2種類を提供し、施設情報などもあわせて掲載するそうです。利用料は無料ですが、「軌道に乗ったらプレミアム会員向けの情報や投稿機能などを提供するサブスク版も考えています」と岡本さんは展望を語りました。また、施設側からのクーポン配信ができるようにしているとのこと。

 実際にアプリに触れてみると、すぐにでもリリースできるのでは? と思えるほどの完成度。営業時間などの施設情報、MAPといったところは、グルメ系のスポットアプリに似た雰囲気ですが、入退室の時間経過が細かく出ているのが、それらとは大きく異なるところ。「エンドユーザーにここまで情報を出す必要はあるのか? ここまで細かいとスマホよりタブレットで見たくなるのでは?」と思ったりしたのですが、9月のリリースまでには大きく変わるのでしょう。

SICK社製3D-LiDARセンサー
サムスン電子製タブレット

 施設側としては、浴室までにインターネット回線を引き込む工事が必要になるのだそう。「ですが、モバイルルーターなどのWi-Fiがあれば問題ありません」(アクティア:北野さん)とのこと。デモンストレーションではセンサーはタブレットから給電されていた様子。24時間営業の施設では、タブレットに給電するための電源工事が必要になるかもしれません。ともあれ、これは絶対的に便利なシステムであることに変わりありません。

サムスン電子ジャパンの小林謙一CMO

 会見には支援企業も参加。そのうちの1社、サムスン電子ジャパンの小林謙一CMOは「新サービスの構築に関わることができたことをうれしく思います。今後も取り組みにご一緒させていただけることを楽しみにしております」とコメントしました。浴室にスマホを持ち込み、入浴中に動画やSNSを閲覧する人は多いと思います。今回のプロジェクト参画をきっかけに、ひょっとしたら、サウナ内でも使えるようなタブレットやスマホが登場するかもしれません。お話を聞きながら、そのような事を思いました。

プロジェクトに参加した、左からテルマー湯:鈴木隆太代表取締役、ジック:安藤憲一取締役部長、 日本航空:斎藤勝イノベーション推進部部長、日本航空:岡本昴之イノベーション推進部アシスタントマネージャー、アクティア:北野幸雄代表取締役、サムスン電子ジャパン:小林謙一CMO、アリババクラウド・ジャパンサービス:ユニーク・ソン アリババクラウド・ジャパン・カントリーマネージャー

 「みんなエアーラインしかやっていないので、新しいことをやると言ってもできないんですよ」という斎藤さん。ですが岡本さんは自分の好きから新しい仕事を成し遂げようとしています。JALの新しい翼になるか、注目してみたいと思います。

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