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VAIO、新シリーズ「VAIO F14」「VAIO F16」を発表~上質とちょうどいいの両立

ASCII.jp / 2023年3月29日 13時10分

VAIOとしては最大の画面サイズとなる16インチディスプレーの「VAIO F16」

 VAIOは3月29日、VAIOノートの新製品「VAIO F14」「VAIO F16」を発表した。法人向けのモデルとして「VAIO Pro BK」「VAIO Pro BM」も投入する。価格はいずれもオープンプライス。

携帯性と作業性のバランスが取れた14インチディスプレーの「VAIO F14」

【合わせて読む】2023年版の「VAIO SX14」レビュー

VAIOの顔となるVAIO SX14。第13世代Core搭載で高性能化。使いやすさはそのままに「Teams」や「Zoom」といったウェブ会議時にバッテリーを節約する機能や美肌カメラなどを搭載。

手の届く価格と心地よい使い勝手のバランス

 現在はプレミアムモバイルノートのカテゴリーを中心に製品投入をしているVAIO。VAIO Fシリーズは“新しいスタンダード”が新製品のコンセプトだという。スペック偏重のパソコン開発に敢えて挑戦し、変化するパソコンのニーズを再定義して、必要な要素には最優先に取り組み、逆に削るべきところは整理して、手の届く価格と心地よい使い勝手のバランスを追究している。

 そのためにデザインに加え、4つの特徴を設定したという。具体的には「見やすい大画面」「長持ちする品質・安心」「必要十分な性能」「映りのいいカメラ、聞き取りやすいマイク」だ。

 デザインについては、見た目の質感の高さに加えて、チルトアップヒンジなどVAIOならではのデザインテーマを盛り込んでいる。カラーもこだわりのひとつ。最初に目に入る天板の色を調整した上、周囲に使用する部品をそれに合わせることで調和のとれたデザインを作っている。素材については全10種類に及ぶというが、色の違和感を出さないように注意し、製品としてのまとまり、雰囲気の良さにつなげようとしている。

 本体カラーはサテンゴールド、ネイビーブルー、ウォームホワイトの3色展開。法人向けモデルは、高い質感を持ちつつも個性を示しすぎず、主張しすぎないダークメタルグレーも用意している。VAIOの徹底ぶりはデスクトップ壁紙にまで及ぶ。本体色に合わせて異なる色を用意しており、デザインも筐体の新しいアウトラインをモチーフにしたものにした。

法人向けモデルのカラーも魅力的

 ディスプレーは左右と上部の三辺が狭額縁。サイズを抑えつつ快適に使える広さを確保できた。VAIO F14は14.0型のFHD(16:9)、VAIO F16は16.0型ワイドのWUXGA(16:10)ディスプレーとなり、このうちVAIO F16は7年前にVAIOがソニーから離れて創業し、再スタートを切って以来、最大サイズのディスプレーを採用した。フットプリントは15.6型の「VAIO S15」とほぼ同じ。Excelなどの一覧性が向上している。そのうえで、VAIO F14が約1.34kg、VAIO F16が約1.65kgと重量を抑えている点も特徴だ。

従来型のカメラと比べると細さが分かる。

 狭額縁化は、パネルの左右と上部の三辺が対象。上部のベゼルにはカメラやマイク、アンテナなどを収納する必要があるが、このためにカメラ自体の小型化にも取り組んでいる。また、カメラモジュールは下側に5度傾けて設置しており、液晶パネルを開いた状態で自然にユーザーが中央に写るよう工夫している。また、物理的なカメラカバーやLEDランプで撮影中かどうかが一目でわかる仕組みも取り入れている。

SSDや通信関係のチップ、CPUなどが確認できる。

信頼性の高い国内メーカー部品や打ちやすいキーボードもこだわり

 品質面では従来のVAIOと同様、構成する部品からこだわっている。具体的には冷却性能/静音性に関わるファンはNidec製、安全性が求められるファンはTDKグループのATL製としている。キーボードもフラッグシップとして投入された「VAIO Z」と同じレーザー刻印やUV塗装を併用したものとなっており、快適な打ち心地と長期間美しい耐久性を持つものとなっている。スペック的にもピッチ19mm/ストローク1.5mmのゆとりあるサイズ。指の収まりが良くなるよう、キートップには0.3mmのくぼみを付けている。チルトアップヒンジによるタイピングのしやすさも特徴だ。

フィンに角度を付けている。

 パームレストは、引き続き一枚板のアルミ合金の使用にこだわった「フラットアルミパームレスト」となっている。使用時には常時目に入る部分であることもあり、細かいヘアラインによる上質さや傷に強い表面処理など上質さを感じるものとした。

 一方で、環境への配慮もしており、環境負荷が大きい塗装を削減(製品体裁面の約50%を無塗装化)。ボトムケースにも再生材を使用し、プラスチック総質量の10%が再生材となっているそうだ。梱包材についても印刷物を紙の封筒に収めるなど、プラスチック使用率を下げている。加えて説明書について、なるべく電子化するようにして、同梱する「ご案内カード」にあるQRコードやオーナーサイトのリンクから電子マニュアルを参照できるようにしている。

もちろん安曇野FINISH、使い始めの分かりにくさを減らす試みも

 新たに用意した「VAIO User Guide Utility」は、VAIOオリジナル機能の紹介と設定など、詳しくない人には分かりにくいが、活用することで確実に快適性の上がるものを初期設定段階で紹介/設定するソフトとなっている。使用を始めた後も「VAIOの設定」への導線として、“いたわり充電”などが簡単に呼び出せるようにしている。

 品質試験については、落下試験の基準が多少異なるが、それ以外はVAIO SX12、VAIO SX14、VAIO S15などプレミアムクラスの製品と変わらない、厳しいものとしている。部品や組み立てには海外工場を利用しているが、カスタマイズなど一部の組み立てと出荷前の最終的な検品は長野県の安曇野にある自社工場で実施している。この“安曇野FINISH”は国内ブランドであるVAIOの品質を担保するために必要なもので、VAIOシリーズのアピールポイントになっている。

低電力な第13世代Core Uプロセッサーを搭載、Teamsも省電力に

 性能面では必要にして十分な性能を提供するというコンセプトのもと、いまパソコンを普通に使うとはどういうことかを検討し直し、本当に必要なものに絞ったものとしている。CPUはインテルの第13世代CoreのUプロセッサー。SXシリーズは性能が高いPプロセッサーを搭載しているが、性能が低くなく、発熱が少ない点を考慮して省電力版のCPUとした。なお、個人向けに限りCore i3の選択も可能となっている。

 省電力版とはいっても、第13世代CoreのUプロセッサーは第10世代との比較で164%の性能向上を果たしており、十分と言えるだろう。

VAIO F14とVAIO F16の内部は基本的に同じだが、VAIO F16はフットプリントに余裕があるぶん、フラットケーブルが見える。

 利用頻度が増えているウェブ会議の利用時にバッテリー使用量を最適化し、長時間駆動時間を実現する「バッテリー節約設定」を設けているのも面白い。ウェブ会議では通信を途切れさせず、映像と音声を長時間持続して処理し続けることになるが、接続の快適さを損なわず、バッテリー持続時間が伸びるCPUの使用方法を調整したものだという。このモードは、VAIO設定の中でオン/オフの切り替えが可能。マイクロソフトの「Teams」を使い、3台のパソコンが参加したウェブ会議でVAIOが検証したところ、約10%の消費電力削減効果が得られたという。

 なお、VAIO F14/F16は、Windows Hello(顔認証/指紋認証)による快適なログオンも可能となっているが、法人モデルには搭載/非搭載があるので注意したい。

オリジナルのワイヤレスマウスにも注目

 VAIO F14/F16はモバイルも可能だが、VAIO SXシリーズなどと比較すれば自宅やオフィスでの利用が中心になる。そのため、ワイヤレスマウスも同梱している。これはオリジナルで開発したもの。マウスの上部(天曲面)は薄いほうが持ち運びにはいいが、薄くしすぎると操作しにくくなるので、最適な形状を検討した。

ワイヤレスマウスも用意

 持ち方に寄らず使いやすいボタンカバーや、ホールド感を重視したサイド形状など、ひとつひとつ意味のある形状の組み合わせで実現したデザインだという。ボタンをクリックする際の静音性や、感度よくマウスの動きを検知できる青色LEDの利用、2つのチャンネルに対応したBluetooth接続と独自方式のUSBワイヤレス接続という3系統の接続経路が選べる。バッテリー寿命は、Bluetooth利用時で9ヵ月間。重量は約60g。76cmの高さから6面を落下させる試験も実施している。カラーバリエーションはVAIO Fシリーズとも調和する3色だ。

 また、VAIO F14(VAIO Pro BKを含む)には、専用の“のぞき見防止フィルター”も用意している。ツメをひっかけるだけで簡単に着脱可能になっており、純正品ならではの使いやすさがありそうだ。

 VAIO SXシリーズでは2021年のモデルから採用している“AIノイズキャンセリング”。画面正面から45度の範囲だけを収音し、背景のノイズを効果的に除去できるといった効果を持つ機能だが、VAIO F14/F16もこれを搭載している。Fn+Tabキーのコンビネーションで、マイクをミュートできる機能など、VAIOならではの使いやすさは継承している。

 加えて、大口径のステレオスピーカーはDolby Atmosに対応。Dolby Atmosは映画などに向けたフォーマットと思われがちだが、ウェブ会議の音声を聞きやすくするなどビジネス用途でも有効だ。そのためのプロファイルをVAIOとドルビーラボラトリーズで共同開発したという。

フルサイズのUSBのほか、USB Type-C、HDMI、LAN端子なども装備している。
左側のUSB端子はフルサイズとなる。電源アダプター接続用の端子も見える。

「普通」と言ってくれることが、むしろ嬉しい

 VAIOで製品開発を担当している黒崎氏は「昨年はPC業界に厳しい1年だったが、VAIOとしては成長の1年となり、法人領域を中心に出荷量を増やせた」と話す。背景として、コロナ禍における働き方の変化で、高付加価値なモバイルPCを求めるニーズが上がっており、それとうまくマッチできた点が挙げられるという。

 しかし、「こうした付加価値を求めている人はまだ一部であり、その価値をより多くの顧客に届けていきたいと思っている」とも語った。

 その一方で、「個人市場におけるパソコンは以前のような嗜好品ではなく、必需品になっているが、製品を選ぶ際の評価基準が変化している」とも指摘。消費者は「心地よさ、デザイン、ちょうど良さ、タイパ、コスパなどを重視している」が、パソコン市場では依然として一般的には分かりにくいスペックの訴求に偏っている傾向があり、ギャップのひとつになっている。こうしたギャップは法人市場でもあり、「テレワークが浸透し、パソコンが働く環境のすべてと言ってもいい状況だが、従来の法人向けPCの選定基準は価格重視という面があり、時代とのずれがある」とした。

 新しいVAIO Fシリーズの開発においては、こうしたギャップを埋める“新しいスタンダード”を作ることが、開発陣のモチベーションとなったという。「Windows搭載PCの定番と言われても、中々思いつかない面があり、買いやすく便利なだけでなく、愛や愛着を持てるもの、スペックだけではない価値を求めてきたVAIOならではの取り組みを反映しようとしている」と黒崎氏は語った。その思いについては、開発主旨の説明書類の中でも詳しく触れたという。

 VAIO Fシリーズの開発に当たっては、パソコンの当たり前を見直すこと、変化する生活への対応、VAIOならではの価値の継承などがキーとなった。変化する生活については、大画面とコミュニケーションを重視。大画面はリモートワークの環境で特に重要なものとなった。また、ウェブ会議はこれまでのPCにも搭載されていたが、今まで以上にプライオリティが高まっている。

 当たり前を見直すという面では、従来の常識を棚卸ししたという。伸ばすべきところ削るべきところを整理し直し、最適な商品として落とし込んだ。合わせて上位モデル機能の継承をしている。

 こうした試みを説明した最後に黒崎氏は「市場では普通のパソコンと受け止められるかもしれないが、それは誉め言葉。意志をこめて普通のPCを作り上げたと胸を張る」と語った。

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