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KDDI髙橋社長、楽天スペースモバイル計画に疑問符

ASCII.jp / 2023年3月13日 9時0分

 KDDIは3月7日、メタバースやNFT市場、暗号資産管理などのサービスを提供するプラットフォーム「αU」(アルファユー)を発表した。

 メタバースを中心にWeb3の領域を全方位で取り組んでいくKDDIの意気込みが感じられる発表であった。

 KDDIの髙橋誠社長は「メタバースでワクワクしないといけないと思っている。αUは結構、面白いと思う。(NTTドコモの)コノキューとは違う取り組みではないか」と胸を張る。単にメタバース空間の提供だけでなく、NFTやライブ配信、暗号資産などをまとめて提供するプラットフォームとなっている点が大きく違うようだ。

 髙橋社長は「かつて、ケータイ向けコンテンツ企業が集まるイベントを実施していたが、メタバースもそういった感じにしたい。メタバースは人が集まらないと話にならない。それには我々だけが頑張っても仕方ない。メタバースに参加してもらう人、プレイヤーが集まるように仕掛けていきたい」と抱負を語る。

 髙橋社長といえば、3Gケータイのころ、コンテンツサービスである「EZweb」成功の立役者として知られる存在だ。大量のコンテンツをキャリアだけが作るのは限界がある。メタバースが成功するにはいかにコンテンツが集まりやすいプラットフォームを作るかがカギとなる。

Web3はお金がカギになる

 面白いコンテンツが集まるかは、結局のところ「コンテンツを提供する人がいかに儲けることができるか」が重要となる。

 かつて、EZwebやiモードが成功したのは、コンテンツの利用料を、電話料金と一緒に課金、回収するというスキームがあったからにほかならない。インターネット向けにコンテンツを提供してもクレジットカードによる課金では、当時、ユーザーがカード情報をインターネットに書き込むには抵抗があった。その点、EZwebやiモードは、4桁の暗証番号だけで課金ができたので、有料コンテンツの市場が一気に花開いたのだ。

 αUで、メタバース空間を提供しつつ、NFT売買市場である「αU market」、さらにNFTや暗号資産を管理できる「αU wallet」も同時に用意したというのは、メタバースのなかで優良なコンテンツがお金儲けをできるという環境を整備したかったのだろう。

 αUでは、メタバース空間でライブ配信をする人に対して、単なる投げ銭では無く、NFTによる「差し入れ」を配信者に渡せるような世界観が出てきそうだ。

 髙橋社長は「Web3は今後、自然な流れになっていくと思う。KDDIとしてはWeb3に関連する物はすべて追っかけていく。特にウォレット関連は、実現するかはわからないが、リアルの銀行とモバイルの口座、さらに仮想通貨であるバーチャルな口座が将来的にはつながっていくイメージを持っている」と語る。

 KDDIにはリアルな銀行としては「auじぶん銀行」、モバイルの口座として「au Pay」、さらに今回、αUで「αU wallet」を提供する。将来的には、これらが一気通貫でつながり、ユーザーはリアルからバーチャルの世界にお金を自由にやりとりできるようになりそうだ。

Beyond5G 3つのキーワード

 髙橋社長は今後、来るであろうBeyond5G時代に向けて「デジタルツイン」「光電融合」「サテライト(衛星)」という3つのキーワードを掲げた。

 「デジタルツイン」に関してはαUでメタバースの方向性を示された感がある。

 光電融合とはNTTグループが「IOWN」として開発を急いでいる技術で、電気に加えて光を用いることで、コンピューターの消費電力を抑えるというものだ。

 先日、IOWNのフォーラムにKDDIが加入すると明らかにされた。

 髙橋社長は「光電融合で省電力化が期待されているが、KDDIは伝送の世界で優位性が保てそうだ。一生懸命やっていきたい」と語る。

 KDDIはアメリカと日本を結ぶ光による海底ケーブルなどの技術力がある。IOWNでも、そうした面での技術開発が期待されているようだ。

 サテライトはすでにKDDIはスターリンクと組んで法人や自治体に向けて衛星通信サービスを提供している。

楽天スペースモバイルには疑問

 一方で、楽天モバイルが進めている「スペースモバイル計画」については疑問を呈した。

 髙橋社長は「アップルがグローバルスター、Androidはクアルコムがイリジウムと組むなど、現実的に動き始めている。一方で、AST(楽天モバイルが組むパートナー)には無理がある。どうやって、数多くの衛星を上げていくのか。さらに実はASTのビジネスモデルがGSMA(世界の携帯電話会社が集う業界団体)で議論となっている」というのだ。

 ヨーロッパの場合、携帯電話会社は高額なオークションで周波数を落札して使っている。衛星で、ヨーロッパのキャリアが使っている周波数で通信サービスを提供するとなると、その周波数に対して、金銭的な負担なくてはいけなくなるという。そういった議論が全く進んでおらず、ASTが勝手にサービスを提供するのは難しいのではないか、と言われている。

 アップル・iPhoneのように、衛星だけが使う周波数をiPhoneがつかむというのであれば問題ない。しかしASTの場合、現在iPhoneなどが使っているキャリアが持つ周波数帯でつながるという触れ込みなので、そうした議論の整理が必要となってくるようだ。

 その点、KDDIは長年衛星通信事業を展開しており、豊富なノウハウを持っている。またスターリンクと提携しており、そのスターリンクはアメリカでTモバイルと組んでスマホ向けの通信サービスを準備しつつある。スターリンクという衛星で圧倒的な実績を持つパートナーがいるだけに、KDDIとしてもサテライト分野でも一日の長があるようだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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