Apple Watchで「女性が輝く方法」を人気産婦人科医 高尾先生が伝授
ASCII.jp / 2023年3月14日 12時0分
国際女性デーに産婦人科医の高尾美穂先生が登場 「女性の健康とApple Watch」がテーマのセッションを開催
全世界のアップルストアで、毎日のように開催されている無料セッション「Today at Apple」。3月8日の国際女性デーには、Apple 丸の内に産婦人科医の高尾美穂先生をゲストにお招きし、「女性の健康とApple Watch」をテーマにしたセッションが開催されました。テレビや雑誌などのメディアを通じて、女性の健康について発信し続ける高尾先生だけに、配信されたセッションにはオンラインでも多くの人が参加し、その人気の高さが伺えました。
セッションでは進行役のスタッフがアップルのスマートウォッチ「Apple Watch」の機能を紹介しながら、そもそもの月経周期のメカニズムや年齢によってどのような変化があるのか、ホルモンと周期の関係などを高尾先生がわかりやすく解説。また先生自身のライフスタイルを交えながら、男女を問わず参考にしたいと思えるようなアドバイスもたくさんしてくれました。
さて、セッションの内容を紹介する前に、まずは女性の健康に関わるApple Watchの機能について紹介します。Apple WatchにはiPhoneのヘルスケアアプリと連動し、月経周期を記録できる「周期記録」機能が搭載されています。iPhoneのヘルスケアアプリでは、妊娠など月経周期のタイミングと長さに影響を与える要因を追加したり、月経の予測やその通知、妊娠可能期間の推定やその通知について、設定することも可能。
最新モデルの「Apple Watch Series 8」と「Apple Watch Ultra」は、皮膚温の計測が可能。この機能を利用することで、睡眠中に手首で測定した皮膚温のデータを用いて過去の排卵日を推定し、月経予測の精度を高めています。
リラックスするときは 「心も身体も解放」するリズムやサイクルが必要
さっそく、セッションの内容をご紹介していきましょう。冒頭、国際女性デーにあわせて「女性が活躍するために大事だと思うこと」を質問された高尾先生、その答えはずばり「頑張りすぎないこと」でした。ときには自分を休ませること、リラックスすることも大切で「持続可能な状態にするには、やりたいことにしっかり注力する一方で、リラックスするときには心も身体も解放するというリズムやサイクルが必要」だと話していました。
また「世の中で本当の意味で平等なのは時間だけ」とも。高尾先生は自宅にテレビを置かず、インターネットとの向き合い方も検索と発信にとどめるなど、「しないことをはっきり決める」ことを意識しているそうです。そうして空いた時間を、読書や睡眠など「チャージする時間に充てている」といいます。
ここでスタッフから、Apple Watchの「睡眠ステージ」機能についての紹介もありました。Apple Watchを利用するためのオペレーションシステム「watchOS 9」から、あらかじめ睡眠時間を設定し、集中モードをオンにすることで、睡眠ステージが記録できるようになっています。
「1日好きなように過ごした残りが眠る時間になっている人が多いけれど、そうではなく、眠るところから24時間をスタートする。すると、睡眠がどういう状態だと1日を快適に過ごせるのか、自分の中で蓄積されていきます。明日を良い1日にするために、今日は少し早く帰ろうって思えるようになります。睡眠って意識しないとおろそかにしがちだけど、1日はずっとつながっているんです」と高尾先生。
また「人が睡眠に興味があるのは、それが自分が意識できない無意識の時間だから」ともいい、睡眠が可視化され、よく眠れた、眠れなかったという自身の感覚との答え合わせができることで、「自分の時間をコントロールしている実感というか、納得していくことが大事」だと話していました。
女性の人生はホルモンに揺さぶられる人生 体調の変化や生理周期を記録に残すことが大切
続いてモニターに映しだされたのは、女性のライフステージとホルモンの分泌量を示したグラフ。卵巣からエストロゲンというホルモンが分泌されて初潮を迎えてから、徐々に分泌量が減って閉経、さらにその先まで「女性の人生は、ホルモンに揺さぶられる人生」だといい、「生理が順調に来ている時期でも、ホルモンの分泌量には波があって、ずっと揺らぎ続けている」と、高尾先生。
「だから多くの女性が、昨日は調子が良かったけど、今日はむくんでいるという体調の変化を感じています」と説明します。
ではその変化はどのように起こっているのか。高尾先生は、月経周期とホルモンの関係についても、「エストロゲンがたくさん分泌された後に排卵があり、排卵日とその前は妊娠の可能性が高まります。排卵後は妊娠しているかもしれない時期で、その時期にたくさん分泌されるのが、プロゲステロンというもう1つのホルモン。妊娠していない場合は、やがてプロゲステロンが分泌されなくなり、赤ちゃんのベッドにあたる子宮内膜が剥がれて月経になる。これを女性は人生で450回ほど繰り返すとされています」と、詳しく解説してくれました。
高尾先生によれば、月経周期は25日~38日と幅があり、「39日だから必ずしも治療が必要というわけではありませんが、『希発月経』のような病名がつくことがあります」とのこと。あわせてスタッフから、iPhoneのヘルスケアの「周期記録」にはオプションとして、月経不順や希発月経など、周期の偏差を検知して通知してくれる機能が備わっていることも紹介されました。
周期記録の大切さについて、「私たちは過去のことってすぐ忘れてしまいます。調子が悪くてもあと数日で良くなると知っているから乗り越えられるし、生理が終わったら忘れてしまうけど、繰り返し調子が悪いようだったら受診した方がいい。先月はどうだったのか、さらにその前はどうなのか、記録しておくことってすごく大事なんです」と高尾先生。
一方で「人と比べる必要はない」といいます。「生理のときに自分が辛くて、生活に支障があれば『月経困難症』という病名がつきます。『更年期障害』もそうで、生活に支障が出ている状態をいいます。人と比べてではなく、自分が困っているかどうか。そういう変化を追跡できるということが大事です」と話していました。
高尾先生はイベント後の取材時にも、「9割方の女性は、月経周期によって調子の良い時期とイマイチな時期があるので、コンディションを把握することが、パフォーマンスに直結します。今の時代は、アスリートなら試合にビジネスならプレゼンなどに、ベストな状態を持ってくることもできる。そうでなくても、たとえばイライラしたり言葉がきつくなる時期には、それを気をつけることでトラブルを防ぐこともできます」と、妊娠、出産以外にも、女性が月経周期を記録するメリットは大きいと話してくれました。
セッションでは周期記録とあわせて、基礎体温とプロゲステロンとの関係性についても紹介され、「排卵後の妊娠しているかもしれない期間に体温が上がるのは、卵が孵化できることを願って温めてくれているようなイメージ。その体温の変化を知ることで、実はこの日が排卵日だったということがわかります。それが基礎体温の意味です」と、高尾先生ならではのわかりやすい言葉で説明してくれました。
なるべく手軽に無理なく 自分の健康を把握してしておこう
前述のようにApple Watch Series 8とApple Watch Ultraでは、睡眠中の手首皮膚温を記録し、その変化がわかるようになっています。スタッフの説明によれば、就寝時につけて眠るようにすると5日ほどでベースラインが設定され、そのベースラインに対しての手首皮膚温の変化が記録できるようになるとのこと。日々の変化はiPhoneのヘルスケアの「身体測定値」→「手首皮膚温」で確認できます。
iPhoneのヘルスケアの「周期記録」では、過去の周期をPDFに書き出すこともできます。高尾先生によればPDFに限らず、診察に自分なりのメモやデータをプリントして持ってくる人はすごく多いそう。「診察では検査などで“作りの問題”については調べられますが、一方で“働きの問題”はその場でわかることは少ないんです。だから以前の記録がとても大事」だと話していました。
これからもApple Watchのような「デジタルデバイスを活かした健康管理はどんどん発展すると思う」と、高尾先生。「人口の減少によって医療機関が併合されたり、合併されたりして、医療機関にすぐにアクセスできないというケースも増えてくるはず。自分の健康をある程度自分で把握してしておくことは、これからの社会で絶対に必要なこと。それが生きたい人生を謳歌するためのベースになるんじゃないかと思います」と、改めて健康管理の大切さを語りました。
最後に「せっかく今の時代に生きているんだから、なるべく手軽に無理なく、こういう(Apple Watchのような)ものを、私自身は生かしたいなと思うタイプなんです。健康状態を維持するためにいろんなものを上手に使って、賢く自分の状態を把握していただければと思っています」と、参加者にやさしく語りかけていました。
筆者紹介――太田百合子 テックライター。身近なデジタル製品とそれら通じて利用できるサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。
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