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AI搭載Microsoft 365 Copilotは「働き方が変わった時代」を予見(西田宗千佳)

ASCII.jp / 2023年3月18日 12時0分

「Microsoft 365 Copilot」を解説するマイクロソフト Modern Work担当コーポレートバイスプレジデントのジャレッド・スパタロウ氏

 マイクロソフトは本格的に、OpenAIを「Copilot(副操縦士)」として、同社の全ての製品に組み込む戦略を拡大している。

 チャット検索を含む「新しいBing」や、そのWindows 11/モバイルアプリへの統合が話題となっているが、同社のビジネス領域を考えると、これでもまだ一部でしかない。

 3月17日(日本時間)に発表された「Microsoft 365」を中心とした製品へのジェネレーティブAI「Microsoft 365 Copilot」の投入は、マイクロソフトが手掛けるビジネスの中核領域にいよいよ踏み込むと同時に、他社との競合が激しくなっていく予兆でもある。

めんどくさい仕事をAIが助ける時代が目の前にきた

 仕事はめんどくさい、やりたくないことの連続だ。

 ジェネレーティブAIが注目されるのは、「文章を書く」という、誰でもできそうなことを使い、多数の手間をかけなければやりづらいことを実現する、という部分が注目されている。

 今回マイクロソフトは、WordやExcel、PowerPointといったプロダクティビティツールにジェネレーティブAIを取り込み、プロンプトで様々な作業を可能にする。1つ1つは今も、他のツールでできることだと思っている。だが、普段多くの人が使っているMicrosoft 365に含まれるツール群にそのまま機能が組み込まれるのは大きい。

 逆に言えば、これを機会に「AIを梃子(てこ)に、プロダクティビティツールの世界へ割り込んでいきたい」と考えていた企業にとっては悪夢だろう。「動きが遅い」と言われていたはずの最大手が、誰よりも機敏に動いているのだから。

 アプローチとしては十分に想像できたことで、誰もが待ち望んでいたものでもある。

 実際、マイクロソフトが発表する3日前、グーグルも「Google Workspace」のツール群(GmailやGoogleドキュメントなど)に、大規模言語モデル「PaLM」を導入すると発表した。こちらも、草稿を書いたりスライドを自動生成したりと、基本的な機能はマイクロソフトのものに似ている。

 現状、どちらもまだテストフェーズであり、一般ユーザーに公開されている状態ではない。デモ動画や静止画を見ると、どちらも実に魅力的だ。だが、実際に使った時にどう感じるかは別の話。実際に試す時が楽しみだ。

Copilotの核は「企業内データ連携の改革」にあり

 一方、マイクロソフトの発表において重要なのは、「パワポ書類が一発でできる」ことではない。前出のように、それは十分予測できたことであって「ああ、便利そうだな」という範疇(はんちゅう)を超えるものでない。

 ポイントは、以下の図に示されたビジョンにある。この図は、マイクロソフトが同社のサービスとMicrosoft 365 Copilotの関係を示したものである。重要なのは左下の「Microsoft Graph」の存在だ。

 Microsoft Graphは、Microsoft 365やAzureで提供されるサービスにアクセスする仕組みで、蓄積されたデータを活用したアプリの開発に使われる。

 従来からマイクロソフトは、さまざまなデータをMicrosoft Graphで扱える形で蓄積しつつ、分析ツールや顧客とのコミュニケーションツール、業務支援などに活用すべくアピールを繰り返してきた。ただ、結局それぞれシステム開発には当然、手間もユーザビリティの検証も必要になってくる。

 しかし、ここで大規模言語モデルが「Copilot」として介在することになればどうだろう? 蓄積されたデータをよりうまく使い、Microsoft 365のツール内で活用しやすくなる。以前からMicrosoft Graphでやっていたことと現象的には同じだが、間にビジネスチャットが介在することで、ツール間でのデータ連携・可視化がずっと楽になる。

 新しいツールを作るにしても、その開発自体をCopilotとして助けてくれるようになるので、開発工数が減り、試行錯誤がしやすくなる。別の言い方をすれば、「マイクロソフトのシステムを導入していたが、データをイマイチ活用できていなかった」企業こそ、今回の変化で大きな利益を得ることになる。

 逆に言えば、Microsoft 365を「単独の文書作成ツール」と見るか、それとも「データ連携のプラットフォーム」と見るかで、同じものを導入しても、その価値が変わってしまう時代がきた、とも言える。

 また、これまで、マイクロソフトのプラットフォーム上で企業間連携システムの開発を主軸にしていた企業にとっては、マイクロソフト自身から強力なライバルが登場したことにもなるし、一方で、開発の低コスト化や高度化を推し進める武器にもなる。まさに諸刃の剣だ。

 こうした変化の中でどう立ち回るべきか、真剣な検討が必要な時期が目の前に迫っている。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)、新著「メタバース×ビジネス革命」(SBクリエイティブ)などがある。

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