NTT、メタバースは「コミュニケーション特化型」で勝負
ASCII.jp / 2023年3月28日 9時0分
KDDIがメタバースサービス「αU」を立ち上げたが、一方でNTTドコモはメタバースをメインに事業展開する「NTT QONOQ(コノキュー)」という新会社を2022年10月に設立している。
ソフトバンクもメタバースに注力する中、NTTグループはどのようにメタバースをビジネスにしていくのか。NTTコノキューの丸山誠治社長に話を聞いた。
まずは特化型サービスから
NTTドコモは2021年にNTTの完全子会社となった。その後、NTTグループに分散するメタバースやXR関連の事業や人材が「NTTコノキュー」に集められた。
丸山社長は「我々が売っている商材のなかにはDOORという、NTTの持ち株会社が作っていたブラウザベースのVRチャットサービスがある。さらにNTTコミュニケーションズが手がけていた企業向けのソリューションもある。人とアセットを全部吸収したカタチでやっていくのが元々の趣旨。そういう意味では違う会社の人間がいっぺんに入ってきたので、いい刺激もあり、毎日楽しく仕事をさせてもらっている」と語る。
コノキューは新しく設立された会社とはいえ、すでにビジネスとして回っている事業も多い。一方でコノキューとしての新サービスが出てくるのは、もう少し時間がかかるようだ。
丸山社長は「コノキューがいろいろと手がけて出てくるものは今年度から来年にかけて、多く出していこうと思っている。とはいえ、汎用的なメタバースは結構、難しいところがあるので、まずは特化型サービスをいくつか揃えて積極的に展開したい」という。
「特化型」というのは、社内のコミュニケーションツールであったり、スマートグラスをかけて、遠隔支援をするようなソリューションとなる。
「10年単位で見てもらいたい」
一方で、コンシューマー向けメタバースは、Facebook改めメタも苦戦するなど、かなり悩ましい状況にある。
丸山社長は「コンシューマ向けはみなさん苦戦している。ただ、市場としては縮小しているわけではなく、大きくなっていることは事実。少しずつ広がって、どこかでブレイクするだろうと思って、一生懸命にやっている。我々も幸い、XR WorldやXR Cityなど、ある程度以上のユーザーにに使ってもらっている。ユーザーの反応を見ながら、いろんな機能を追加して、進化させていきたい」と意気込む。
一般メディアでは昨年ぐらいから「メタバース元年」とはやし立てているが、一方でメタのマーク・ザッカーバーグCEOは「10年単位でメタバースが普及する」と明言している。コノキューではどれくらいのスパンでメタバースが浸透するとみているのか。
「本当にメタバースの中に没入して生活するようになるのは、10年単位で見てもらいたい。ただし、我々が今持っている技術でも、できること、やれることはたくさんある。それらを実現するために特化型のようなものをできる範囲でユーザーに提供していくのが我々の戦略の柱となっている」(丸山社長)
夏ごろにデバイスのプロトタイプを
メタバースを体感するには、当面は普及台数が圧倒的に多いスマートフォンが中心になるだろう。しかし、没入感を得るにはヘッドマウントディスプレイやスマートグラスが欠かせない。とはいえ、なかなか、爆発的に売れるようなデバイスが出ていないというのが現状にある。丸山社長はNTTドコモ在籍時、デバイスの開発担当をしていた経歴もある。そのため、コノキューでは、クアルコムとパートナーになるなど、自社でのデバイス開発にも注力していく。
「デバイスは今、開発中で、プロトタイプを夏頃には出したいと思っている。技術的な要素としてはかなり揃ってきている。他社でもグラス型やヘッドセット型を出しているが、それらを使いやすいかたちでサービスを組み合わせて提供するというのは我々でないとできないことが結構あるのではないか」(丸山社長)
メタバースは単にデバイスやサービスを提供するだけでなく、コンテンツを持つ様々なパートナーを呼び込み、ユーザーに課金できるプラットフォームにすることで、ようやく人とコンテンツが集まる土壌ができる。そうした仕組みをつくるのに、通信キャリアは最も近い立場にいる。
「我々は多くのサービスをスマートフォン向けに提供している実績がある。また、回線にしても、その上に載せるMECサーバーにしても、我々がいろいろと企画をして能動的に仕掛けることができるポジションにいる。そういうところもフル動員して、最もなめらかに動くメタバースとか、快適なメタバースを作っていければと思う」(丸山社長)。
コミュニケーションに光を当てたい
筆者はこれまで展示会などで様々なメタバースのデバイスやサービスを体験していた。いずれも、驚きがあるものの「毎日、継続して使いたい」という気持ちにはなかなかならなかった。スマートフォンは「毎日使うデバイス」だからこそ、ここまで普及した。コノキューが提供するサービスも「毎日、継続して使いたい」と思えるものになるのだろうか。
丸山社長は「これから出すものをいろいろと見ていただきたい。こういう工夫をしているのかと感じてもらえる仕掛けをたくさん用意している。
もともと、通信会社はコミュニケーションを提供するための会社であり、人と人とのコミュニケーションをいかにスムーズに活性化できるようなカタチで提供するかが一番重要だと思っている。もっともっとコミュニケーションに光を当てたかたちでのサービスをチューンナップさせて出していきたい」と意気込む。
コノキューが考えるデバイスとサービスを融合した「コミュニケーションに特化したメタバース」とはどんな空間なのか。いまから登場が楽しみだ。
![](https://ascii.jp/img/2018/08/10/1510370/x/9edac237d487442f.jpg)
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。
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