1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

Ryzen 9 7950X3D&GeForce RTX 4080搭載PC、クセはあるがゲーミング性能は本物

ASCII.jp / 2023年4月4日 11時0分

 前回に引き続き、サイコムのゲーミングPC「G-Master Spear X670A」をレビューする。本機はAMDのRyzen 7000シリーズをベースにしたBTOパソコンで、ゲーミングで無類の強さを誇るCPU、「Ryen 9 7950X3D」まで選べる点が特徴となる。

 前回は外観や内観を中心に紹介したが、本稿ではベンチマークを中心にその性能に迫る。特に試用機材のCPU、Ryen 9 7950X3Dはクセが強くて結構わかりづらいモデルなので、ついでにおさらいしておこう。

サイコムのゲーミングPC「G-Master Spear X670A」。標準構成の直販価格は27万4460円~(配送料込み)

チップレット構造の弱点を補う3D V-Cache

 G-Master Spear X670AのCPUはRyzen 7000シリーズから選べる。近年のRyzenシリーズはモノリシックなダイではなく、複数のダイを組み合わせたチップレット構造を採用している。CPUの機能だけを搭載したダイ「CCD」(Core Complex Die)と、メモリーやPCI Expressのコントローラーを格納する「IOD」(IO Die)が基板に実装されている。

 このチップレット構造はモノリシックダイよりも歩留まりが良いため、生産コストを抑えやすい。また、ダイの組み合わせを変えることで複数のモデルを簡単に製造できる、といったメリットがある。

 Zen 4世代のCCDは最大8コアのため、16コア/32スレッドCPUのRyzen 9 7950X3DはCCDを2つ(CCD0とCCD1)、IODを1つ搭載したCPUになるわけだ。また、8コア/16スレッドCPUのRyzen 7 7800X3Dであれば、CCDもIODも1つずつということになる。

タスクマネージャーで見るとコアはすべてまとめられてしまっているが、実は上部の16個(8コア/16スレッド)がCCD0、下部の16個がCCD1となる

 ただし、チップレット構造にはデメリットがある。その1つがCCD間のキャッシュを共有できないこと。もともとL1キャッシュとL2キャッシュは各コアごとにあるので共有できないが、L3キャッシュは同じCCD内のコアで共有している。つまり、同じCCD内であれば相互にデータを参照でき、レイテンシーを抑えられる。

 ところが、CCDをまたぐ場合はコア間でデータを参照できなくなるため、それだけレイテンシーが大きくなる。つまり、コア数が多くてもこれが足かせとなり、仕様上期待できる性能が発揮できないといったことが起こるわけだ。

 とはいえ、分散処理に向いている用途ではL3キャッシュの影響は小さい。むしろ、コア数が多いほうが総合性能は高くなりやすい。つまり、メニーコアCPUというアプローチにおいては、そこまで気にしなくていいということになる。

 では、性能が向上しづらい用途はなにか? その代表が「ゲーム」だ。近年のゲームはマルチスレッドに対応しているものの、そこまで分散処理されず、多くのタイトルは4~8スレッドで動く。また、L3キャッシュの影響が大きいことが多く、異なるCCDで分散処理されてしまうと性能が上がりにくい。

 また、使われないコアもあるのに2つのCCDを動かすと電力が増える。となると、当然温度も上昇する。その影響で動作クロックが上がらず、さらに性能が下がってしまうといった悪循環も考えられる。

 こうした状況を踏まえて、Ryzen 9 7950X3Dでは2つのCCDに異なる特性を持たせてチップレット構造の弱点を補っている。片方のCCDは3D V-Cacheを搭載することでL3キャッシュを増量。通常32MBのL3キャッシュを96MBにまで拡張している。もう片方のCCDは従来通りだが、3D V-Cacheを搭載したCCDより高クロックで動作するという特徴を備える。

スライドの左端にあるCPUイメージの下部に2つ並んでいるダイがCCD。その右のCCDに3D V-Cacheが載っている(AMDの公式Twitterから引用)

 そして、優先して使用するCCDをソフトごとに切り替える技術も導入している。一般的な用途では高クロックのCCD1を優先し、ゲームでは3D V-Cacheを搭載したCCD0を優先することで、どんな用途でも高いパフォーマンスが出せるという。

 なお、Ryzen 9 7950Xでは170WだったTDPは、Ryzen 9 7950X3Dでは120Wに引き下げられており、全コアをフルに動かすようなソフトでは前者のほうが優秀だ。その代わり、片方のCCDを集中的に使えるシーンが多いソフトでは、後者に分があることが多い。

モニタリングツール「CPU-Z」で見たCPUの詳細。TDPが120W、L3キャッシュが96MB+32MBとなっている

Ryzen 9 7950X3Dの真価を発揮させるには準備が必要

 そして、Ryzen 9 7950X3Dを正しく扱うためには「お作法」も学ばなければならない。詳しくは加藤勝明氏のレビュー記事「3D V-Cache搭載「Ryzen 9 7950X3D」はゲーミングCPUの最高峰に輝くのか?【前編】」をご覧いただきたいが、このお作法を守らなければ、「ゲーム」と「その他のソフト」を区別できず、優先CCDが正しく選択されないのだ。

 では、正しい動作のためにはなにが必要かというと、AGESA 1.0.0.5c以降で3D V-Cacheに対応したBIOSと、同じく3D V-Cacheに対応したチップセットドライバーになる。今回は試用機ということもあってどちらも非対応のバージョンとなっていたが、実際に出荷されるG-Master Spear X670Aでは、当然どちらも対応バージョンを導入済みだろう。

ASRock「X670E Steel Legend」であれば、バージョン1.18以降が対応BIOSとなる
BIOSのバージョンを上げた後でチップセットドライバーのセットアップを始めると、「AMD 3D V-Cache パフォーマンス・オプティマイザードライバー」という項目が増えた

 さて、準備が整ったところでベンチマークに移ろう。まずはCPUベンチマークソフトの定番となる「CINEBENCH R23」を使い、無制限(32スレッド)/16スレッド/8スレッドの3パターンでテスト。この時使用するコアをタスクマネージャーでチェックしてみた。

 なお、CINEBENCH R23はCGレンダリング時間からCPUの性能を測るベンチマークソフトだ。複数のスレッドが動く分散処理になるため、CCDをまたいでもあまり性能が落ちず、コア数が多ければ多いほど高性能になりやすい。まずは無制限(32スレッド)の結果と、その時のタスクマネージャーをご覧いただきたい。

CINEBENCH R23の結果
すべての論理コアが動いている

 Multi Coreテストが35642ptsで、Single Coreテストが2024pts。Multi CoreテストのスコアーはTDPが引き下げられていることもあってか、Ryzen 9 7950Xよりも低いもののその差は5~6%程度と小さい。そして、Single Coreテストはほぼ同じ。

 続いて16スレッドに限定した場合を見てみよう。なお、スレッドを絞れば当然スコアーは下がるがその数字に意味はないため、ここからはタスクマネージャーの結果だけを見ていこう。

16スレッドにすると物理コアが優先に

 16スレッドの場合はCCD1に偏るのかと思いきや、CCD0とCCD1の物理コア(タスクマネージャー上では左側のコア)が優先で動いていた。フルスレッド動作よりも電力や熱に余裕があるためか、動作クロックが若干上昇している点も興味深い。

 では、8スレッドにした場合はどうなるだろう。

8スレッドにするとCCD1に処理が集中

 結果はご覧の通り、CCD1(タスクマネージャー下部の8コア/16スレッド)の物理コアに偏った。CINEBENCH R23はゲームではなく、「その他のソフト」に分類されるため、高クロックで動作するCCD1に集中したのだろう。CCD0をほとんど使っていないためか、動作クロックの表示も5GHz超えと高い。

ウィンドウフォーカスCCD0を優先?

 前述のように、ゲーム以外のソフトではCCD1に処理が集中することがわかったが、ゲームでは本当にCCD0が優先で動くのか気になるところ。そこで、ゲームベンチマークソフト「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FF15ベンチ)で試してみた。

 設定はウィンドウモード(1920×1080ドット、高品質)で実行し、ベンチマークソフトにフォーカスがある場合(ウィンドウがアクティブな状態)とない場合の2パターンを、タスクマネージャーでチェックしてみた。

FF15ベンチの結果(フォーカスがある場合)
期待通り、負荷はCCD0に集中していた

 スコアーは22522でフォーカスがある場合はCCD0に処理が集中していた。CINEBENCH R23の16スレッド動作時のように、物理コアが優先されるということもなく、3D V-Cacheがしっかり活用されるような挙動になっていた。

 では、フォーカスを外した場合(エクスプローラーにフォーカスを移し、ベンチマークソフトはバックグラウンドで実行)の結果を見てみよう。

FF15ベンチの結果(フォーカスがない場合)
CCD0とCCD1の両方に処理が分散していた

 フォーカスがない場合は20944スコアーと大きく低下。どうもウィンドウが非アクティブ状態になったゲームは「その他のソフト」扱いになるようで、CCD0とCCD1両方の物理コアが優先で動いていた。また、偶然かもしれないが負荷はCCD1のほうが高めになった。

 つまり、CCD0を優先するかどうかはフォーカス次第ということ。ベンチマーク実行中でもフォーカスがある場合はCCD0優先で、外すとCCD1優先と動的に変わっていた点もおもしろい。

 なお、フルスクリーンであれば当然CCD0が優先となり、ユーザーが特に意識せず最適なパフォーマンスをソフトごとに得られる。しかし、ブラウザーや別のチャットソフトなどと並べてゲームを楽しむ時は、フォーカスに注意が必要だ。

 また、3D V-cache Ryzenがなにをもって「ゲーム」と「その他のソフト」を見定めているかだが、それは前述の加藤勝明氏の記事によれば、「Windowsのゲームモードか、Mixed Realityモードが発動すればゲームと判断している」とのこと。つまり、Windowsのゲームモードを有効にする必要がある。

 しかし、Windowsのゲームモードが有効になっていても、ゲームモードが発動しない場合もある。そういう時は「Xbox Game Bar」を起動し、「これをゲームとして記憶する」にチェックを入れれば、CCD0を優先してくれる。このように、3D V-cache Ryzenはややクセの強いCPUだが、ある程度のPC知識があれば有効に使えるだろう。

定番ベンチマークでもしっかり強い

 さて、Ryzen 9 7950X3Dのユニークな挙動を把握したところで、本格的にG-Master Spear X670Aのベンチマークに移ろう。いつも通り、今使っているPCとの性能差を確かめやすいよう、定番のベンチマークソフトでテストした。

 まずは総合性能を計測できる「PCMark 10」。実際のソフトを使い、多くの用途でPCの性能を測り、スコアー化してくれるベンチマークソフトだ。ブラウザーやビデオ会議といった一般用途の「Essentials」、主にオフィス系ソフトの性能を見る「Productivity」、動画や写真編集などの性能となる「Digital Content Creation」という、3つのサブスコアーも注目してほしい。

PCMark 10の結果

 CPUが16コア/32スレッドということに加え、ビデオカードにGeForce RTX 4080搭載モデルを採用しているということもあり、総合スコアーは9835と非常に高い。Digital Content Creationのスコアーも高く、CPUとGPUの実力は本物と言える。

 続いては「3DMark」を見てみよう。まずはDirectX 12 Ultimateに対応し、最も重たい「Speed Way」から。グローバルイルミネーションやレイトレーシングなどの効果が使われるため、最新世代のビデオカードでなければ、かなり厳しいテストだ。

3DMark Speed Wayの結果

 スコアーは7153とこちらもかなり良好。Core i9-13900KとGeForce RTX 4080採用ビデオカードを搭載した別のPCのスコアーが7078だったので、わずかとはいえ上回っていることになる。もちろん、インテルCPUは電力制限次第(つまり、冷却環境次第)で性能が大きく変わるため、この結果をもってどちらが強いとは言い切れないが、いい勝負ができそうだとは言える。

 ほかのテスト結果は下記にまとめたので、性能比較の参考にしてほしい。

3DMarkの結果(まとめ)

4Kゲーミングもなんのその

 もう少しゲームに近いベンチマークとして、MMORPGの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下、FF14ベンチ)と、先ほどCPUの挙動テストにも使ったアクションRPGのFF15ベンチの結果も改めて紹介しよう。

 前者は軽量級、後者は重量級という違いはあるものの、Ryzen 9 7950X3DとGeForce RTX 4080の組み合わせではかなり余裕がある。そこで、画質はプリセットの最大、解像度は3840×2160ドット(4K)にして試してみた。

FF14ベンチの結果

 軽量級ということもあり、スコアーは21950と高い。評価も「非常に快適」となっており、4Kでも余裕で快適に遊べることがわかる。ちなみに、レポート出力機能でフレームレートも見てみたが、平均で約145fps、最低で100fpsと文句なしの成績だった。

FF15ベンチの結果

 重量級タイトルでも11568スコアーと優秀だ。評価は「とても快適」と、4Kでもサクサク遊べるだろう。ほかのゲームでも画質設定をいじれば、4K解像度で遊べないゲームはないと言ってもいいほどの実力と言える。

 ちなみに、標準のストレージとなるCrucialのM.2 SSD「P5 Plus CT500P5PSSD8」は、容量500GBでPCIe 4.0×4に対応した高速モデル。こちらの実力も見てみよう。定番ベンチマークソフト「CrystalDiskMark」で試した。

モニタリングツール「CrystalDiskInfo」でPCIe 4.0×4接続をチェック
CrystalDiskMarkの結果

 速度はシーケンシャルリードで約6696MB/s、シーケンシャルライトは約4484MB/sと、PCIe 4.0接続SSDだけあって高速だ。ハイエンド製品と比べてしまうと見劣りするものの、体感速度ではほぼ変わらないレベル。

 とはいえ、500GBでは多くのゲームをインストールするとすぐに埋まってしまう可能性が高い。ガッツリゲームを楽しみたい人なら、より大容量なモデルにBTOで変更しておくことをオススメする。

まとめ:最強クラスのゲーミングPCを目指す人にオススメ

 G-Master Spear X670Aの標準構成は、ゲーミングPCとしてはミドルクラスだ。しかし、今回の機材のように、カスタマイズ次第では長く使える現行最強クラスの構成になる。

 とはいえ、最強クラスを目指す場合、Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7950X3Dのどちらを選ぶかは悩みどころ。どちらも得手不得手があるので優劣はつけがたいが、ゲーム性能を重視するならRyzen 9 7950X3Dで決まり。正しくその実力を発揮するためのお作法など、クセは強いがその実力は本物だ。

 もちろん、コストパフォーマンス重視でRyzen 5 7600にダウングレード(-1万9510円)してもいい。ゲーミングPCは決して安くはない買い物だ。それだけに、細かな部分まで納得して購入できる本機ならきっと満足できるだろう。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください