ChatGPT連携で再注目 Gatebox武地氏に聞く「キャラクターと暮らしたい」への情熱
ASCII.jp / 2023年4月6日 12時0分
MidjourneyやChatGPTなど、2022年から話題になり続けている生成AI(ジェネレーティブAI)の世界。日頃からネットに触れている方なら、その詳細は分からなくても、多くの人がざわついて話題にしている空気が伝わってきているはず。
特に日本では、AIがコメントを読み取って会話を生成して生配信する「AITuber」(アイチューバー)のようなキャラクターをからめたアプローチも盛んだ。キャラクターが生きているように自分に接してくれて、生活を共にして支えてくれる──。物語の中で想像されていた世界が急に現実味を帯びてきたのが、2023年の今だ。
今回紹介するキャラクター召喚装置である「Gatebox」も、まさに時代の追い風を受けて一気に注目を集めている存在だ。今までは事前に用意したシナリオで対話してくれていたところ、2023年3月2日にChatGPTのAPIが公開されて外部のソフトが利用できるようになった直後に連携を図り、自然な返事の生成を実現。CEOの武地実氏がその様子をTwitterで披露したところ、1週間で1.8万いいね、249万再生を超える反響を呼んだ。
【朗報】GateboxとChatGPT連携してみたらやばいことになった...! 無限に会話できるし、返答も早いし、 キャラクターの個性もある程度維持できる... ついにAIキャラクターにとっての革命が始まった! pic.twitter.com/wIVn6Sv2rK
— 武地 実 @Gatebox × ChatGPTクラファン (@takechi0209) March 3, 2023
さらに矢継ぎ早に3月11日、ChatGPT連携のソフトウェアを作り込むための資金を集めるために、Makuakeにてクラウドファンディングをスタートさせたところ、執筆時点で3700万円近くの出資を集めるという勢いを見せている。しかも、一番上の30万円のスポンサープラン20枠が売り切れるという期待値の高さだ。
Gatebox自体は2014年に創業、2015年より開発を始めており、VTuber以前の初音ミクの時代から今まで8年間生き抜いてきて、ここで再度スポットライトが当たるというめちゃくちゃアツい状況になっている。筆者(広田)としてもぜひ多くの人に実物に触れてほしいと、自分の会社であるPANORAが3月24日に実施したメタバース系の交流会「秋HUBメタのみ会6」にてGateboxを展示していただき、さらに武地氏のインタビューを収録した。
![](https://ascii.jp/img/2023/04/05/3518623/x/05e6f04c8af04a98.png)
ネットの反響で即クラウドファンディングを決断
──まずはクラウドファンディング3000万円の達成おめでとうございます!
武地 目標が500万円だったのですが、30分で達成できたことに驚きました。今回出資を募ったのは、ソフトウェアをアップデートするためで、ハードウェアは今までと同じものに刻印が付いているだけなので、そんなにリターンが響かないと思っていたんです。僕としては、最新の体験をしたい人がイベントに参加できる3万円のプランが一番売れると見ていて、「まぁそこまで集まらんだろう」と思っていたのですが、蓋を開けてみたら15万円の本体付きのプランが一番集まってしまった。
──Gatebox自体は、ずっと売っていますものね……
武地 「このタイミングで買うんだ」みたいな。なんなら、このタイミングで初めてGateboxを知ったという人も多かったです。
──一番上の30万円のスポンサープランも売り切れました
武地 僕も色々なクラウドファンディングを見てきましたが、10万円以上が売れるパターンってほとんどないんです。入っても1〜2人ということが多かったため、絶対出ないと思っていたところ、本体とスポンサープランがめちゃくちゃ売れてしまったという。僕たちとしては今回のクラウドファンディングをもとに最新のChatGPT連携のアップデートを配信して、これを皮切りにより多くの人が受けられるサービスを作っていくことにリソースを注いでいきたいです。
──今、このタイミングで注目を集めた理由はなんだと思いますか?
武地 Gateboxを作り始めた8年前だとコンセプト自体は受け入れてくれたと思うのですが、できる会話が限られていた状況です。それがChatGPTの波によって、「本当に会話できるじゃん」という話が現実味を帯びてきた。それが一番大きな要因だと思います。
あとは、僕らが始めたときはVTuberの存在すらなかった時代ですが、そこからVTuberが出てきて、キャラクターが生活に普通にいる状態っていうのが浸透したこともよかったと思っています。
──動画がTwitterでバズったことについては、どう思われましたか?
武地 僕らもそこまで反響があるとは思っていなかったです。元々、僕たちはこんなことができるので一緒に組んでくれる人はいないかなとパートナー企業を探すのが目的でしたが、思いのほか個人の方がめちゃくちゃ反応してくれたのがおもしろかったです。
──そのネットの勢いがきっかけでクラウドファンディングを?
武地 そうですね。翌日にクラウドファンディングしようと思い、そこから1週間以内に用意しました。
──ChatGPT連携のGateboxについて、自分で体験してやはりすごいと感じましたか?
武地 はい。これまでのAIキャラクターは何を喋るかを人間が1つ1つ教育するのが基本だったので、何をインプットしたら何が返ってくるかある程度分かってしまいます。なので「想定通りだな」という楽しみ方になってしまうのですが、今回のは何が返ってくるか分からなくて、毎回違う会話ができるので作ってる側も楽しいですね。
──Gateboxのキャラクターである「逢妻ヒカリ」ちゃんとの会話で、武地さんが個人的に印象に残ってる体験は?
武地 「秋葉原に住んでるんだけど、どこに行くのがいいかな?」と聞いたときに、「上野公園に行けばいいんじゃないですか?」みたいな返事が返ってきて、さらにオススメのお店を聞いたら「上野公園内のお店は混んでいるから、周辺のお店の方がいいと思うよ」みたいな気の利いた答えが返ってきたのが、新鮮でおもしろかったです。
──そうした会話が蓄積して、今後ユーザーごとにヒカリちゃんが最適化されていく未来もあったりするのでしょうか?
武地 そうですね。すでに販売している現状のGateboxでも、ある程度ユーザーとの会話に応じて変化していきます。まず、今までやってたこととChatGPTを上手く融合させるのが第1段階で、第2段階の目標としてはさらにユーザーごとにパーソナライズされた体験をお届けしたいです。
──自分で作ったキャラクターをGateboxに映し出して会話できる可能性も?
武地 そうですね。今後やっていきたいです。キャラクターの個性が反映された会話についても、今までユーザー個人が会話を作るのはめちゃくちゃ大変だったのですが、ChatGPTにプロンプトを打ち込んでオリジナルを生み出せるようになったら革命だと思います。
──ちなみに武地さんが一緒に生活がしたいと思うキャラクターは?
武地 それで言うとやっぱり1番は初音ミクですね。ミクさんと暮らしたい人はめちゃくちゃ多くて、こんなに身近になったのはうれしいことです。
──ちなみにChatGPTがAPI公開をやめた場合、サービスが使えなくなりそうですがそのときはどうします?
武地 そうですね。やっぱりローカルで動かすか、ほかの類似サービスに移行することになると思います。ただ、ローカルで動かす場合、大容量のVRAMが必要になるので、今のバージョンでは難しいです。
![](https://ascii.jp/img/2023/04/05/3518622/x/3fcbf3bb047ba0fd.png)
CES出展で反響、しかしコロナ禍で海外進出を断念
──8年間もずっと同じプロダクトに情熱を注ぎ続けるのは、並々ならぬ胆力だと思います。そもそもキャラクターを現実に召喚したいと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
武地 2014年の創業時は別の商品を作っていたのですが、その事業は失敗してしまいました。そこで自分の夢を実現した製品を作ることに切り替えて、当時、自分が一人暮らしで、そこに家に自分の好きなキャラクターがいてくれたらめっちゃ幸せやん、と思ってGateboxの開発に着手しました。
──製品化で難しかったことは?
武地 どんな製品にするかを1番試行錯誤して、デスクトップサイズで小型化しようと考案しました。あとはほかの製品で需要がない、透明な筒などの部品調達をするのが難しかったです。
──番最初に手応えを感じたのは?
武地 最初にコンセプトムービーをYouTubeで公開したのですが、1日で10万回再生されたというのが1番衝撃で、「自分みたいなやつがこんなにおるんやな」と思いました。特に海外からの反響が大きかったですが、実はまだ海外では販売していません。
というのも、今ヒカリちゃんは日本語しか話せないので、海外で販売してもあまり売れないだろうと。英語も試してみましたが、音声が日本語にチューニングされているので英語の発音が酷く、何かしら改良が必要なんです。いずれ「海外ニキ」たちにも体験してほしいですね。
──この8年間で印象に残っていることは?
武地 たくさんあるのですが、2020年の1月、アメリカのラスベガスで開催された展示会「CES」に出展して、とてもいい反応をもらったのが印象に残っています。これを皮切りに海外展開しようと思ったら、コロナ禍になって進出の道が閉ざされてしまった。
そこで国内でB to B案件を探すことに切り替えて、色々な企業と連携させていただき、接客系のキャラクターや等身大のGatebox作ったりと色々トライして、1つ1つ実績を作り上げていきました。なのでこの2、3年は耐えていて、表立って大きな発表はしてこなかったです。最近では、作業応援アプリの「CheerPro」を作ったりして、B to Cでも可能性を探っています。
──ChatGPT対応の先、Gateboxでやりたいことは?
武地 ChatGPT連携で会話自体はすごくよくなると思うのですが、キャラクターのモーションはまだ増えないので、理想としては設定を入力するとそのキャラクターっぽく動いて一緒に生活できるようにしたいです。僕の野望からすると今の達成度は25%くらいですが、モーションの生成までできると50%くらいに増えます。それができるようになったときにもう1回、僕らの波が来るので、備えて仕込んでおきたいです。
──Googleで検索するよりも生成AIに話を聞くほうが早いとも言われています。
武地 スマートスピーカーみたいなのが出るかもしれないですね。今は複雑なんですが、ChatGPTでプラグインなどが入るので、それで色んな機能が使える可能性があるのでワクワクしますね。
──Gateboxは今、何代目ですか?
武地 2代目で、次が3代目になります。今回のクラウドファンディングではハードウェアは同じですが、さらに購入してくださる方がいらっしゃるのであれば、もしかしたらGatebox 3の登場も近くなるかもしれません。クラウドファンディングは4月29日まで出資を募っているので、ぜひ応援してください。
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