1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

13700K&RTX 4070 Tiで静音・性能・冷却の走攻守が優秀なゲーミングPC、あります

ASCII.jp / 2023年4月9日 10時0分

 サイコムの「Silent-Master NEO Z790/D5」は、CPUクーラーにPCケース、ファン、電源ユニット、組み立てにまでこだわり抜いた静音PC。電源を入れてもファンの音がほぼ聞こえず、本当に動作しているのか疑いたくなるほど静かだ。さすがにゲームや動画編集といった負荷の高い用途で使うと多少音はするものの、従来のゲーミングPCとは一線を画す。

 一般的に、静音PCは冷却性能が犠牲になる。そのため、発熱の大きい高性能なCPUやビデオカードは採用されないことが多い。しかし、本機はCPUなら「Core i9-13900K」、ビデオカードなら「GeForce RTX 4070 Ti」搭載モデルまで選べるので、性能面でも満足のいく構成にできるのだ。

 前回も紹介したが、本稿では標準構成からCPUを「Core i7-13700K」、ビデオカードをGeForce RTX 4070 Ti搭載モデル、電源ユニットを750Wモデルに変更した試用機を用意。こんなハイスペックな構成でもうるさくならないのか、性能はどのくらいなのかをチェックしてみたい。

サイコムの静音ゲーミングPC「Silent-Master NEO Z790/D5」。標準構成の直販価格は26万3990円~(配送料込み)

CPUもGPUも高性能なので発熱が懸念

 Core i7-13700KはPコアを8基、Eコアを8基搭載した16コア/24スレッドCPU。ゆえに、高負荷時のCPUパッケージ温度はかなり高くなりそうだ。

モニタリングツール「CPU-Z」によるCPU情報。Core i7-13700Kは16コア/24スレッドの高性能CPUだ

 ビデオカードはGeForce RTX 4070 Tiを搭載するMSIの「GeForce RTX 4070 Ti VENTUS 3X 12G OC」。ブーストクロックは標準の2.61GHzから2.64GHzに引き上げられている、いわゆるファクトリーオーバークロックモデルだ。さらに、専用ソフトを使うことで2.655GHzまで高速化できる。

モニタリングツール「GPU-Z」によるビデオカードの情報。ブーストクロックは2640MHzになっていた

まずは高負荷時の性能と温度と動作音を確認

 検証のポイントは、ずばり性能と温度と動作音の3点。CPUもGPUも前段の通り、高性能なモデルを採用しているだけに、このバランスは絶妙なさじ加減が必要になるだろう。性能を引き出すためには冷却力が重要になるし、冷却力に重きを置けばうるさくもなるからだ。

 まずはCPUから見ていこう。CGレンダリング時間からCPU性能をスコアー化(単位:pts)する、定番ベンチマークソフト「CINEBENCH R23」を実行。フルスレッド稼働の「Multi Core」テストは負荷が非常に高いので、CPUのパッケージ温度も上がりやすい。

 つまり、スコアーからCPU性能が引き出せているのか、CPUのパッケージ温度から冷却が十分に行われているのかが判断できる。そして、ベンチマーク中の動作音も確認することで、静音PCとしての実力もわかるわけだ。

CINEBENCH R23の結果

 Multi Coreテストのスコアーは25905pts。この値だけを見せられても高いか低いかわからないため、加藤勝明氏の記事「CINEBENCH番長は秒で奪還!Core i9-13900K/Core i7-13700K/Core i5-13600K速攻レビュー【前編】」から参考となるCore i7-13700Kのスコアーを引用させてもらおう。

 この記事によれば、Core i7-13700KのスコアーはMulti Coreテストが30552pts、Single Coreテストが2082pts。つまり、Silent-Master NEO Z790/D5はSingle Coreテストでは勝っているものの、Multi Coreテストではかなり負けている。しかし、CPUの性能が十分に発揮できていないと論じるには尚早だ。

 第13世代インテルCoreプロセッサーには2つの電力制限がある。1つは高クロックで動作し、短時間で処理を終わらせるための「最大ターボパワー」(以下、PL2)というもので、持続時間に制限がある。多くのPCでは1~2分程度に設定されているため、スタートダッシュみたいなものだと考えればいいだろう。

 一般用途ではこのくらいの持続時間で十分間に合い、キビキビとした動作を実現してくれる。ただし、当然発熱量が多く、持続時間を過ぎた場合はもう1つの電力制限である「プロセッサーのベースパワー」(以下、PL1)に切り替わる。

2種類の電力制限はインテルが公開しているCPUの仕様からもわかる

 これらの電力制限はCPUの型番によって変わり、Core i7-13700Kはインテルの推奨設定であれば、PL2が253W、PL1が125Wになる。しかし、先の記事ではCPUの最大性能を確認するために、あえて電力制限はどちらも無制限設定にしている。つまり、常時最大火力で動かしていることになるので、本機よりも上のスコアーになっているのだ。

 当然、電力無制限設定にすればCPUパッケージ温度は爆上がりし、CPUクーラーのファンもフル回転。騒音もかなり大きい。ゆえに、常用するPCでは当然インテル推奨設定が基本になる。特に静音重視のPCであればなおさらだ。

 Silent-Master NEO Z790/D5ではこの点を考慮し、PL2は253W、PL1は125Wのインテル推奨設定だ。この設定においては、Multi Coreテストで25905ptsは妥当なラインと言える。

 では、CPUパッケージ温度はどうだったのか。モニタリングツール「HWiNFO64 Pro」で、ベンチマーク開始から終了までの変化をチェックした。

HWiNFO64 Proで観測したCPUパッケージ温度の変化

 最初はPL2(=253W)の電力設定で動作するため、CPU温度が上昇。この時の平均動作クロックは4.7GHz以上で、CPUパッケージ温度もぐんぐん上昇しており、最大96度にまで達していた。しかし、PL1(=125W)動作に切り替わると、CPUパッケージ温度は65度付近まで大きく下落し、時折スパイクしている様子はあるものの、安定していると言ってもいい推移だろう。なお、平均動作クロックは3.9GHz前後だった。

 つまり、スタートダッシュのPL2では制限時間を耐え切り、その後のPL1では余裕をもって冷やせていると読み取れるわけだ。静音性と性能の両方を追求するバランスとしては、かなり理想に近いだろう。

 もちろん、PL1ではCPUパッケージ温度に余裕があるので、140Wや165Wあたりまで盛っても安定してくれそうだ。ちなみに、CPUクーラーのファン回転速度は、アイドル時に約300rpmだったものが、高負荷時には約1000rpmまで上昇する。かなり大きな変化だが、不思議と騒音が大きくなった感じはなかった。

 耳を近づけてよく聞いてみれば、なんとなく変化しているのはわかるものの、1mも離れてしまえばその差はまったくわからないほど。その名にたがわない、優れた静音PCだと実感した瞬間だった。

 なお、性能・温度・動作音のほかに、消費電力も気になるという人は、CPU型番の末尾に「T」が付く省電力モデルがオススメだ。Silent-Master NEO Z790/D5のBTOメニューでは、「Core i5-13600T」、「Core i7-13700T」、「Core i9-13900Tの3モデルから選べる。このメニューの充実ぶりもサイコムのいいところ。

省電力なT付きモデルも選択できる。ちなみに、同じ論理コア数(16コア/24スレッド)のCore i7-13700TはPL1が35W、PL2が106Wだ

定番ベンチマークで性能をチェック

 総合性能を計測する「PCMark 10」でも試してみよう。このベンチマークソフトはオフィス系ソフトやブラウザー、ビデオ会議、動画編集など、実際のソフトを使って性能を測ってくれる。そのため、CPUだけではなくメモリーやストレージの性能も影響する。

 結果はスコアーで表示され、その値が高ければ高いほど高性能ということになる。また、ブラウザーやビデオ会議といった一般用途の「Essentials」、主にオフィス系ソフトの性能となる「Productivity」、動画や画像編集、CGレンダリングといったクリエイティブ用途の「Digital Content Creation」という3つのサブスコアーで、どういった用途に向いたPCなのかも判断できる。

PCMark 10の結果

 総合スコアーは8847と高め。PMark 10では全コアに高負荷を長時間かけるというテストはほとんどない。そのため、CINEBENCH R23で十分な結果を残したCore i7-13700Kの真価がくもることはなく、全体的に好成績だったのだろう。

 サブスコアーは飛び抜けて得意な分野はないものの、極端に低いジャンルもなく、どんな用途でもそつなくこなせているようだ。ただし、PCの構成で気づいた人もいるかと思うが、ストレージはSATA接続のSSDが標準となっている点だけは注意したい。普通に使っているぶんには体感で遅いとまでは感じないものの、大容量ファイルのコピーでは昨今普及が進んでいるPCIe接続のSSDと比べて、待たされることが多い。

 特に最近のゲームや動画ファイルは大きく、シーケンシャルアクセスの速度が遅いと、ドライブ間のコピーでも時間がかかる。そこで、こちらも定番ベンチマークソフト「CrystalDiskMark」を使って調べてみよう。

モニタリングツール「CrystalDiskInfo」で標準構成のストレージを読み取り。SATA接続の500GB SSDであることがわかる
CrystalDiskMarkの結果

 シーケンシャルアクセスの速度を見ると、リードは約560MB/sでライトは約508MB/s。標準的なPCIe 4.0×4接続のSSDと比べると、10分の1程度の速度だ。ゲームデータや動画といった巨大ファイルのコピー、あるいは読み出しに時間がかかるのも当然だ。

 しかし、ランダムアクセスの速度はというと、PCIe 4.0×4接続のSSD比で2分の1程度。シーケンシャルアクセスほど差がないため、一般的な用途であればそこまで体感速度は変わらない。

 若干とはいえ、SATA接続のほうが価格は安いので、価格重視で標準構成のままでもアリだろう。ただし、4月28日までは「春の新生活応援キャンペーン」として、PCIe 4.0×4接続のSSD「Crucial P5 Plus」の1TBモデルと2TBモデルが4000円引きと安くなっている。増量を考えているなら、こちらを選ぶほうがお買い得だ。

ビデオカード重視の作業ではどうか?

 ゲームで重要となる3Dグラフィック性能は、「3DMark」でチェックしよう。このベンチマークソフトでは多くのテストを試せるが、まずはDirectX 12 Ultimateに対応し、グローバルイルミネーションやレイトレーシングといった重い処理を実行する最新テスト「Speed Way」の結果から。

3DMark Speed Wayの結果

 スコアーは5332と高め。このテストはビデオカードの性能が大きく影響するため、静音PCながらもゲーミングPCとしても優秀な結果と言える。ただし、ビデオカードの騒音は抑制しづらい。

 そのためか、CINEBENCH R23の時よりもだいぶ動作音が大きくなっていた印象だ。とはいえ、掃除機のような轟音ではなく、冷蔵庫よりも静かなレベル。おそらくスピーカーで音楽を聴いていれば、まず気にならないのではないだろうか。

 続いては「Time Spy」の結果を見てみよう。こちらはDirectX 12に対応したテストで、解像度は2560×1440ドット(WQHD)。イマドキのゲームプレイ環境と比べると、若干重ためなテストと言えるだろう。

3DMark Time Spyの結果

 スコアーは21585とこちらもスペックから期待する通りの結果と言える。これだけの性能があれば、ほとんどのゲームがWQHDで楽しめる。軽めのゲームであれば、3820×2160ドット(4K)でも快適に遊べるだろう。ほかのテスト結果もグラフにまとめておいたので、性能比較の参考にしてほしい。

3DMarkの結果(まとめ)

 もう少し実際のゲームに近いベンチマークテストでも試してみよう。定番どころで、MMORPGの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下、FF14ベンチ)と、アクションRPGの「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FF15ベンチ)をチョイス。前者は軽量な部類だが、後者は重量級となる。

 なお、試用機のスペックが十分高いため、解像度はどちらも4K、画質設定は最も高画質になるプリセットにしている。

FF14ベンチの結果

 スコアーは16194で、評価は「非常に快適」。軽量級のゲームでも4K最高画質設定では重くなるものだが、今回のスペックでは余裕だった。4Kでも滑らかな動きで快適に遊べるだろう。

FF15ベンチの結果

 スコアーは8746で評価は「快適」。さすがに重量級となると最高評価にならず、シーンによってはカクつくこともある可能性は捨てきれない。重ためのゲームを安心してプレイしたいなら、WQHD設定がオススメだ。

まとめ:静かなゲーミングPCが欲しい人、深夜にPCを使う人に

 Silent-Master NEO Z790/D5は、PCの静音動作に至上の価値を見出し、静音性もPC性能のうちだと考える人にとっては、非常に魅力的な1台だ。なにより、ゲーミングが快適な高性能構成を選べるにもかかわらず、ここまで静音性の高いモデルに仕上がっている点は、現在のBTOパソコン市場ではかなり稀有な存在と言える。

 アイドル時の静音性は特筆に値する。低騒音の空冷CPUクーラーと低回転で風量の多いPCケースファンを搭載し、ビデオカードと電源ユニットは低負荷時にファンが止まるセミファンレス仕様だ。そのおかげで、電源が入っているかどうかわからないレベルの静音性を実現している。

 また、高負荷時も騒音レベルはかなり抑えられており、PCの動作音がもとで隣室がうるさくて寝られない……なんてことはないだろう。とはいえ、さすがに季節や室内温度などの環境次第ではPCケース内の温度が高くなることもあるだろう。そんな時は天板カバーを外すことで熱を逃せるので、うまく活用するといいだろう。

天板のカバーを外すとPCケース内の熱気を逃がせる。若干動作音も外に出ることになるが、そこはバランスを見て試してみてほしい

 性能という意味合いでは、ゲームだけではなく動画編集でも期待が持てる。もちろん、高負荷が長時間続く作業なので、動作音は多少大きくなるものの、一般的なデスクトップPCと比べればかなり静かだ。タワー型デスクトップPC、特にゲーミングPCはうるさいものだと導入をあきらめていた人もいるかもしれないが、その認識が大きく変わる1台と言える。

 野球で例えるなら、静かな動作で盗塁し、性能という打撃能力も高く、高い冷却性能で守りも良しと3点揃っている。強化ガラスパネルではないため、ゲーミングPCとしては派手さには欠けるものの、実直で有能なプレーヤーだ。性能に妥協せず、それでいて静音性にも優れたPCが欲しいと考えているなら、本機を強くオススメしたい。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください