Radeon Pro W7900/W7800が異様に安い価格で投入される理由 AMD GPUロードマップ
ASCII.jp / 2023年4月24日 12時0分
4月14日、AMDはRadeon Pro W7900とRadeon Pro W7800の2製品を発表した。内容は発表記事にあるとおりで、基本Navi 31ベース、つまりRadeon RX 7900 XT/XTXをベースにしながら、多少動作プロファイルを変更し、かつRadeon Pro Driverでの検証を行なった「だけ」で、あまり新しい話はない。
もっとも発表資料を仔細に見るといろいろ突っ込みどころはあり、中の人も苦労したんだなぁというのが良くわかるが、それは後で説明するとして、まず触れたいのはRadeon Pro W7800の方である。
Radeon Pro W7800の性能は GeForce RTX 4070 Tiと同程度か少し上
上表がRadeon Pro W7900とW7800のスペック一覧である。W7900の方はほぼNavi 31のフルスペックと考えて良い。ほぼRadeon RX 7900XTXをそのまま、といったところだ。Boost周波数は、Peak FP32の性能が同じ61.3TFlopsになっていることから、こちらは2.5GHzのままと考えられる。
ただRadeon RX 7900XTXのTBP(Typical Board Power)は355Wなのに対し、Radeon Pro W7900のTGP(Typical Graphics Power)が295Wなのは、Power Profileを操作してTypicalで295Wに収まるように調整しているものと考えられる。
実際Radeon RX 7900XTXの場合、標準でPower Limitは-10%~+15%で、つまりTBPは319.5~408.3Wほどの範囲になっている。ただここでPower Limitを-17%程度まで拡大すれば295Wに収まる計算だ。ワークステーション用途が主とは言え、場合によっては3U程度のシャーシに収めてラックに格納、ということも考えられるから、300Wの枠は守りたかったものと思われる。
次にW7800の動作周波数だが、ピークのFP32の演算性能が45.2TFlopsと説明されており、W7900とのCU数の比からこちらもほぼ2.5GHzのままと想像される。それでもCU数が大幅に減っている分、消費電力はCU数に比例して下がることが期待される。
CU数の比で計算すると、Radeon Pro W7800のTGPは215Wまで下がる計算であり、実際は260Wと比較的余裕があることを考えると、Power ProfileそのものはRadeon Pro W7800の方がやや高めに設定されているものと考えられる。
ところで構成であるが、非常におもしろい。もともとNavi 31は6つのShader Engineを搭載しており、各々のShader Engineに16個づつのCUが搭載されるという構図だった。
ではRadeon Pro W7800は? というと70CUになるので、必要となるShader Engineの数は70÷16=4.375で、4つでは足りず5つ必要とになる。
6つのままという可能性もあるが、70で割り切るのは面倒(72CUなどだったらあり得たかもしれない)だし、Shader Engineをまるまる1個無効化できるから、歩留まり向上の意味でも効果的ではあるとは思う。かつ、5つのShader Engineの16CUのうち2CUを無効化し、14CU×5=70CUという構成にしている。図にすると下のようになる。
この構成がおもしろいと思うのは、MCDは4つしかないことだ。メモリーバスはMCDあたり64bitなので、256bitメモリーということはMCDは4つという計算になる。またインフィニティ・キャッシュの容量も64MBとされており、ここからもMCDは4つとはっきりわかる。
なにがおもしろいかというと、このバランスで性能が出ていることだ。最初筆者はMCDは5つで、ただしそのうちGDDR6を接続しない形で、単にインフィニティ・キャッシュだけを使っているのかと思った。実際Shader Engineが6つにMCDが6つでバランスしてるなら、Shader Engineが5つならばMCDも5つ必要だと考えるのは普通だろう。ところが実際には4つでバランスする、というのは意外にインフィニティ・キャッシュの効率が良いということになる。
Radeon RX 7800 XTと7700 XTを COMPUTEX TAIPEIあたりで発表する可能性がある?
なぜCUとShader Engineの数が重要か? と言えば、Radeon RX 7800グレードの構成を占うのに重要なファクターになるからだ。実際今回Radeon Pro W7800という型番を付けてきたことの意味は大きい。
おそらくターゲットになるのは先日発表されたGeForce RTX 4070ではなく、今年1月に発表されたGeForce RTX 4070 Tiだと思うのだが、このRadeon Pro W7800の構成のままでは絶対性能そのものはややGeForce RTX 4070 Tiの方が上で、ただし価格や消費電力で十分勝負できる範囲、という感じがする。
AMDはNavi 32/Navi 33を現在開発中であるのは公然の秘密であるが、最近流れて来た情報ではNavi 32は60CU、Navi 33は32CUであるとされている。正直言えば、Navi 32の60CUというのはやや「?」で、64CU/4 Shader Engineではないかと疑っている。RDNA 2以降は2CU=1WGPなので、15CU/Shader Engineという構成はあまり現実的ではないと考えるからだ。
もっとも構成としては64CU/4 Shader Engineで、ここから4CUを無効化して全体で60CU構成で製品化する、という可能性は高そうだが(この場合、14CU/Shader Engineと16CU/Shader Engineが混在する形になる)。
ただ60CUだとすると、性能的にはGeForce RTX 4070と同程度か少し上程度で、GeForce RTX 4070 Tiとのギャップは大きい。ではどうするか? といえば動作周波数を引き上げれば良い。
仮にNavi 32のコアを3GHzで動かせば、70コア/2.5GHz駆動のNavi 31と同程度の性能となる。Navi 32は4 MCDであってもそれなりに性能が確保されるというのはRadeon Pro W7800から想像ができる。
そしてこのNavi 32はダイサイズも小さい(GCDのサイズはNavi 31の2/3≒200mm2ほどに収まる)し、MCDも4つで済むから製造原価そのものはRadeon RX 7900シリーズの3分の2で収まる計算になる。これはかなり競争力が高い製品価格を提示できそうだ。
GeForce RTX 4070 Tiが799ドル、GeForce RTX 4070が599ドルとなっているが、Radeon RX 7800 XT(仮称)を649ドルあたりで投入できればかなりいいところに行けそうな気がするし、構成的にも十分可能な範囲に思える。時期的に言えば、5月末から始まるCOMPUTEX TAIPEIあたりで発表があって、製品出荷が7~8月あたりと予想する。
このNavi 32を3 Shader Engine(48CU)に減らすとRadeon RX 7700 XT(仮称)といった構成になる。メモリーバスは192bit、インフィニティ・キャッシュは48MBになる。性能的にはGeForce RTX 4070より少し下というあたりまで落ちるだろうが、その分さらにお買い得な価格を付けられることになる。こちらもRadeon RX 7800 XT(仮称)と同時期に発表、製品投入はRadeon RX 7800 XT(仮称)の1~2か月後と予想する。
Radeon RX 7800 XTとRadeon RX 7700 XTの2つは筆者の予想であるが、さてどうだろう?
Radeon Pro W7900/W7800を ライバルメーカーと性能で比較
ここで話は冒頭に戻る。今回AMDはずいぶん性能の優位性を示すのに苦労した感がある。競合となるのはもちろんNVIDIAのRTX A6000/A5500とRTX 6000 Adaとなるわけだが、さてここからがAMDがかなり苦労したところだ。
まずSPECviewperf 2020での性能比較。ここは珍しく絶対性能そのままである。
基準はRTX A600で、これに比べるとRadeon Pro W7900/W7800はそれぞれ39%/14%の優位性があるが、RTX 6000 Adaに比べるとRadeon Pro W7900の性能は7.9%ほど低いことになる。そこで性能を直接比較せずに、「半額未満のカードなのに性能差はわずかに7%」としているわけだ。
ちなみにSPECviewperf 2020は何種類かのProfessional Graphicsアプリケーションの描画部分「だけ」を抜き出して比較しているもので、アプリケーションによる最適化の影響などは受けにくい。
こちらは基本的にOpenGLを利用した描画性能のみを比較するベンチマークなので、描画性能+OpenGL Driverの品質で性能が決まることになり、ここではまだRadeon Pro W7900はRTX 6000 Adaにはおよばない、というわけだ。
もっともNavi 31がもともとGeForce RTX 4090ではなくGeForce RTX 4080をターゲットとしていることを考えれば、この程度の性能差で済んでいることが驚異的という気もするので、そこをもう少しアピールしても良い気もするのだが、AMD的にはそうもいかないのだろう。
Radeon Pro W7900/W7800が異様に安い価格なのは GeForce RTX 6000 Adaに絶対性能がおよばないから
これ以降は、全部性能価格比での比較になっている。下の画像はSPECviewperfの結果を改めて価格性能比で示したものだ。
そのSPECViewperf 2000で3dx-max-07とmaya-06の成績のみを抜き出したのが下の画像だ。
ここから性能そのものの比(RTX A6000=100)を算出すると下表になる。
もう少し実際のアプリケーションということで、Autodesk Mayaの製品をそのまま利用したSPECapc 2023の結果が下の画像だ。同じように絶対性能の比はその下の表となる。
同じようにPremire Proでは下のようになる。
After EffectsとDaVinch Resolveでは下のようになる。
再びSPECViewperf 2020に戻ってCatia-06/Creo-93/Snx-04/Solidworks-07の結果が下の画像と表だ。
またLumionのアプリケーションを使い、Glass House/Downtown Developmentのシーンを処理させた場合の結果が以下となる。
要するにRadeon Pro W7900はRTX A6000に比べると性能面で若干の上乗せもあり、消費電力は同等で価格は安いわけだが、RTX 6000 Adaと比べると、純粋にOpenGLで描画してるだけなら差はほとんどないが、いくつかのアプリケーションでは明確に性能差があるのがわかる。
こうしたワークステーション向けの場合、GPUカードの初期コストよりもエンジニアやデザイナーの作業コストの方が高くつくだけに、絶対性能が高い方が貴ばれるのは言うまでもないことで、ただここでは残念ながらRTX 6000 Adaには敵わないからこそ、性能/コスト比を全面に打ち出したわけであるが、正直これはやや悪手な気がしてならない。
せめて性能/消費電力比で圧倒できればまだ良かったのだろうが、消費電力は同等なだけに、ここでの差は見せようがない(というか、RTX 6000 Adaの方が良い)のだから仕方ないだろう。
なるほど、Radeon Pro W7900/W7800が異様に安い価格で投入されるのには、それなりの理由があることが、図らずしもAMDのプレゼンテーションから明らかになってしまった格好だ。
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