ライトアップ、あなた色に染めます。パナソニックの照明技術「YOI-en」が面白い
ASCII.jp / 2023年4月27日 16時0分
アイドルのイベント会場を彩るライトアップ。スマホで「自担」のメンバーを選ぶと、会場のすべてが一瞬で担当のカラーに染まる──。そんな世界観も実現できそうな面白い照明演出技術をパナソニックが作っています。
パナソニック エレクトリックワークスは、街の照明をクラウドでつなぎ、365日活気ある街を創造する街演出クラウド「YOI-en(よいえん)」を提供中。今年7月には大阪・門馬のパナソニック ホールディングス本社構内にYOI-enの演出を体感できるエリア「YOI-en Field」を設けます。正式オープンに先駆け、YOI-enにできることを現地で体験してきました。
YOI-enはクラウドベースの照明演出システム
YOI-enは、照明の制御システムと照明器具をクラウド上でつなぎ、遠隔操作や広域・多拠点での演出を可能にする、新しい照明演出システム。
既存の照明演出システムは拠点ごとに制御する人が必要でしたが、YOI-enはクラウドベースで制御するのでどこからでも操作可能。たとえば東京・福岡・大阪などの複数の都市で同時にタワーの色を変えたり、道路や川などをまたいだ演出をすることも可能になります。
クラウドベースなので、演出を切り替えるのも簡単です。従来は専用の機器とスキルが必要でしたが、YOI-enは手持ちのパソコンからWebアプリで演出の実施・管理が可能。カレンダーを使って演出のスケジュールを設定したり、予定にないクリスマス演出などを「割り込み」させるのも簡単で、導入のハードルが下がります。
照明演出のコンテンツとしては、四季の色合いを表現する「シーズンカラー」、お客さんを光によって誘導する「アフォーダンスライティング」、ピンクリボンなど社会活動にあわせた色の光で演出する「アウェアネスカラー」、そしてお客さん自身がスマホでライトアップを操作できる「Yoi-iro」の4種類を用意しています。
YOI-en開発の背景にあるのは観光需要。外国人観光客の受け入れ再開などにより、国内外から人を集められる魅力的な街づくりに注目が集まっています。最近ではPFI(官民連携)やDMO(観光地域作り法人)などの仕組みを活用したスタジアム、公園、複合商業施設を核にした街づくり計画が全国で進んでいます。
そこに観光資源の1つとして照明演出を入れてはどうかという提案がYOI-enです。パナソニックではYOI-enの新たな体験価値を提供することで観光客の来訪意欲を高めたり、集客力をアップさせたり、回遊性の向上が期待できるとしています。
一方、観光やイベントだけではなく、光の色によって時間を伝えるなど地元住民向けの利便性を持たせることも想定しているそうです。ド派手なイベント演出だけでなく、美しい夜の街並みづくりにもYOI-enが使えるよということですね。
照明に新たな価値をもたらすというYOI-enですが、導入事例はまだ多くありません。パナソニックではパナソニックセンター東京で3拠点をつないだ事例や、サッポロアートキャンプで「YOI-iro」を実施したという事例を紹介しています。
YOI-en Field行ってみた
そんなYOI-enの演出効果を実際に体験できるのが、パナソニックホールディングス本社構内に7月1日からオープンする「YOI-en Field」。オフィス構内をひとつの街に見立てた仮想の街という設定のエリアです。エリアの用途としては、YOI-enのショールーム的役割を持たせるとともに、各種社内イベントで使うことで社員満足度の向上も期待しているということでした。
実際にYOI-en Fieldを歩きながら、照明演出について説明してもらいました。
YOI-en Fieldはエントランス、並木道、芝生広場の3つから構成。照明演出は、床面のライトアップ、床面のライトダウン、樹木のライトアップ、壁面のライトアップなど様々な照明製品の組み合わせによって作られています。これらがすべてクラウドで同期して、照度や色合いを同時に変えられるというわけですね。
並木道で最初に見たのがウェルカムライティング。並木道をスポットライトのように照らす光が交互に明暗を繰り返すことで、視線が自然と奥へ奥へと誘導されます。工事現場にある指示灯の高級バージョンという感じでしょうか。
次に見たのがシーズンカラー。担当者がパソコンで操作をすると、並木が桜色に彩られました。並木だけでなく路面や建物も含めて、一面が一瞬で桜色に。3月に初めてYOI-en Fieldの点灯式をしたときには満開の桜が灯火のように明滅するライトアップに照らし出され、とても美しかったという話でした。そのときに来たかったですね。
一方、夏をイメージしたというさわやかな演出効果も見せてもらいました。桜色から緑色に変わり、一転涼しげな印象になります。
もうひとつ見たのが、ギラギラにカラフルな演出効果。イベントなどで使われることを想定しているそうです。ゲーミング桜並木という雰囲気で、eSports系のイベントで使ったら色々盛り上がっていいんじゃないでしょうか。
続いて向かったのがイベント会場などを想定した芝生広場。並木道と道路をはさんだ場所にあるので普通はケーブルがつながらず演出が同期できませんが、YOI-enはクラウドベースなのですべてを連動した演出ができるというわけです。
芝生広場で見たのはド派手なライティングショー。色を変えながら光を走らせることで力強さのあるイベント向けの演出となっていました。当日は無音でしたが、ここに音響演出が加わるとさらにイベント感が高まりそうです。パナソニックのアメフトチーム、パナソニックインパルスのチームカラーに染めるという演出も見せてもらいました。
そして最後に体験したのが、スマホからライトアップの色を変える「YOI-iro」です。
現場の立て看板からQRコードを読み取ると、YOI-iroの専用ページが表示。ページから自分の誕生日を入力すると、自分の「誕生花」が表示され、ライトアップが一斉に自分の誕生花の色に変わります。「おお〜っ」と思わず声が出ました。自分の色が反映されるのは20秒間と短かったため、あわてて写真を撮ることになりましたが。
演出自体は面白いので今後の展開に期待したい
パナソニック「YOI-en」を実際に見てみると、イルミネーションに変わる新たな観光スポットになりそうな技術だなと感じました。特にエリアすべてを参加者が「自分の色に変えられる」というのがいいですね。たとえば冒頭にも書いたんですが、推しのアイドルがいる人がライティングを「自担」の色に変えて写真を撮れたら面白いんじゃないでしょうか(色の奪い合いになりそうですが)。あとゲーミング桜並木でゲーミング花見もいいですね。我ながら期待の方向がおかしい気もしますが。
残念なのはまだ実際にはあまり導入が進んでいないということ。パナソニック エレクトリックワークスが照明を納入している北海道のエスコンフィールドに採用されたり、大阪万博2025に採用されたらわかりやすかったんですが。今後の展開に期待したいところです。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。6歳児と2歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
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