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春のヘッドフォン祭 2023開催、会場の注目製品を紹介

ASCII.jp / 2023年5月1日 14時40分

 フジヤエービックは4月29日、恒例の「春のヘッドフォン祭 2023」を開催した。会場の興味深い展示をいくつか紹介したい。

中野サンプラザでの開催は今回で最後になる見込み。

 finalはイベントの開始に先立って発表会を実施。新サービスの「自分ダミーヘッド」を発表した。これは完全ワイヤレスイヤホン「ZE8000」の発表時に予告していたカスタムイヤーピースの提供サービスが具体的な形になったものだ。耳型を取ってぴったりと合うイヤーピースを制作するだけでなく、さまざまな計測を通じて、自分自身を模した“仮想的なダミーヘッド”を作り、仮想空間でシミュレートして最適な特性を得るという内容になっている。 このサービスを利用するためには、final本社に個人測定のため、3回ほど赴く必要がある。今までのカスタムイヤホンに比べて、かなり本格的かつ科学的なアプローチだと言えるだろう。7月頃の開始に向けて準備中とのことだ。

スキャンの様子

 また、finalが扱っているDITA Audioブランドのドングル型DAC「Navigator」を日本で先行発売することも発表した。クロックはFPGA制御で大出力。“小さな巨人”ということだ。DITAにとっては低価格製品への挑戦ともなる。社長のデニー氏は残念ながら来日が叶わず、ビデオメッセージで「通勤通学が楽しくなるような製品をめざした」と語っていた。

Dita Audioのデニー社長はビデオメッセージを寄せた

 finalは、新ブランド“REB”も発表した。finalはイヤホンの組み立て講座を各地で開催しており、ユーザーがドライバー構成やフィルターなどを選んで自分だけの音を作れる「MAKE series」という製品も投入してきた。REBはこの取り組みをさらに進めるため、finalが運営してきたMAKE seriesのユーザー向けのコミュニティサイト「MAKER'S」、本社と同じビルで展開してきた直営店「final STORE」、そして「オリジナルプロダクトの開発」などを融合する。オリジナルプロダクツは製品化を目指している段階のようだ。

コミュニティサイト、ストア、オリジナルプロダクツの3つの軸でREBブランドを展開する。
REBブランドで展開するオリジナルイヤフォンのコンセプト
展示していたプロトタイプ(ユニバーサル版の全体)
こちらはそのコアユニット

 FitEarは話題となっている、iFi audio「GO pod」とのコラボ製品を展示した。iFi audioはGO podの販売に際して64 Audioなどとのコラボをしている。その国内版と言えるだろう。GO podは通常のIEMをワイヤレス化する耳掛け式のBluetoothアダプターだが、驚くのはその音質の高さだ。

 いままでの低価格路線のBluetoothアダプターとは一線を画した音で、ハイエンドDAPと比べても遜色がない。価格が10万円を超えていてもおかしくないと思えるほどの圧倒的なワイドレンジ感と透明感があった。正式な展開に期待したい。

MMCX端子付きのイヤホンと組み合わせられる。

 また、「MH335DW」の新しいバージョンである「MH335ht」も展示されていた。これはノズル先端をホーン形状に成形することで高域のピークをDWより上にして高音域の拡張を図ったモデルということだ。また内部部品も一部変えているとのことで開発者の堀田氏のチューニングによる新世代IEMとも言えるだろう。

 アスキーの連載記事でたびたび取り上げてきたMEMSスピーカー技術がいよいよ日本でも一般に公開された。MEMSスピーカーの開発メーカーであるxMEMSの国内部門が、ヘッドフォン祭でブースを持って展示したのだ。会場にはプロトタイプだが、iFi audioのiDSDモデルをMEMS用に昇圧できるように改造されたプロトタイプが持ち込まれた。これは製品となる「Diablo X」とは異なるものだ。ドライバーはシングルの「Montara Plus」やツィーターとしても使用できる「Cowell」などが持ち込まれていて、Cowellではダイナミック型とのハイブリッドも披露されていた。

xMEMSが展示したMEMSスピーカー
iFi audioの機器とMontara Plusを組み合わせたところ

 アユートのブース。Jerry Harvery Audio(JH Audio)の新機軸「Pearl」システムを展示していたのが面白い。これは単体イヤホンではなく、いくつかのモジュールを組み合わせてプロエンジニア並みの音のチューニングを施せるモバイルリスニングシステムだ。

Pearlシステム

 写真のシステムについて説明すると、左側のAstell & Kern製のポータブルプレーヤーで音楽を再生し、その音をアナログケーブルで黒いボックス(これがPearlらしい)に入力させる。このボックスはPCとUSB接続されていて、PC上でエンジニアリングコンソールのような詳細な音のチューニングができる(PCでは音の信号処理はせずにUIのみとなるようだ)。 このボックスからは新たな10ピン端子(低域2本、中域2本、高域2本、グランド1本、バランス2本、予備1本)でJH Audioのイヤホンと接続する。このボックスはPCと切り離してモバイルでも運用が可能だ。イヤホンには高域に4基のESTドライバーを持った開発中の機種が接続されていたが、従来の機種でも端子を変えれば使えるとのことだ。

Ultrasoneの「Pure」

 また、サプライズでUltrasoneの「Pure」というモデルが展示されていた。これは「Signature DJ」とかつての名機「DJ1」のエッセンスを低価格で実現したもの。さらに新開発の“S-Logic 3”も採用されている。試聴してみると、DJモデルらしい低音の豊かさとS-Logicらしい音の広がりが印象的だった。 エミライブースでは、FiiOが「FW5」と「UTWS5」のLDAC対応を発表していたのが面白い。なぜかというと、これらの機種はクアルコムのSoCを使用しているが、通常のLDAC対応製品はアイロハのSoCで実装される場合が多いからだ。クアルコムの5000番台のSoCのライブラリー拡張機能を使用していると言うことだ。

LDAC対応のFW5とUTWS5

 また、「SP3」というFiiO初のパワードスピーカーも展示されていた。FiiO独自のアンプ設計を施し、デスクトップオーディオデバイスの「R7」とベストマッチするという。もちろんほかの機種と組み合わせた使用も可能だという。FiiOのラインナップの広がりがなかなか興味深い。

SP3

 ミックスウェーブのブースには、Campfire AudioのCEOであるケン・ボール氏と副社長のケイレブ・ロズナウ氏が来日。新製品の「ANDROMEDA Emerald Sea」と「SOLARIS Stellar Horizon」を展示していた。

ケン氏とケイレブ氏

 Astell & Kernと共同開発をした「Pathfinder」で培われたデュアルダイアフラムBAドライバー技術とラジアルベント技術の搭載によって、人気の定番製品を生まれ変わらせたものだ。自社で生産しているという斬新なパッケージにも注目したい。 サイラスは、Luxuary & Prescision(L&P)の最新スティック型DAC「W4」を展示した。これは「W2」のラインの製品だが、驚くことにW4ではL6P独自開発によるフルデジタルアンプICが搭載されている。ワンチップ設計のためか筐体がとても軽量で、試聴してみると透明感が高く低音の制動力の高いデジタルアンプらしい音だった。なかなかに興味深い機種と言い得る。

W4

 毎回マニアックなアンプ製品を持ち込むAnalog Squared Paper。今回の展示はコンパクトなポータブル・ヘッドフォンアンプの「TR17hp」だ。まるで大型アンプのミニチュアのような製品で、小型のトランスを搭載して空中配線を取り入れるという、見た目で既にマニア心をくすぐる製品だ。試聴してみると音も小型な筐体とは思えないほど豊かで本格的だった。

TR17hp

 ヤマハは新開発のヘッドホンアンプ「HA-L7A」を初展示。本体と別にトランスが強調されたデザインが特徴的で、いかにもパワーを感じさせる同社の平面磁界ヘッドフォン向けのアンプに思えるが、実のところは独自の音場再現技術を搭載して映画も楽しめるような設計がなされていると言うことだ。

 HIFIMANは、日本初登場の新製品として、密閉型で平面磁界型のヘッドホン「Audivina」と新設計のヘッドホンアンプ「EF600」を展示した。ヘッドホンスタンドにもなる、EF600のデザインが面白い。Audivinaは「ハウジングが新設計」ということだが、試聴してみると密閉型らしからぬすっきりとしたサウンドを聴かせてくれた。

 Dan Clark Audioの最新ラインナップ「Corina」も登場。これは独自のメタマテリアル技術である AMTSを採用したラインナップの静電型バージョンだ。静電型用のアンプはミョルニルオーディオの製品が使われていたがこれは参考品とのことだ。端子はSTAX Pro規格なのでSTAX用の静電型ドライバーでも使用できるのではないだろうか。

 Woo Audioのブース。一見ただの接続ケーブルのようだが、実はESSのDACを内蔵しているというユニークな製品が「Phantom DAC cable」だ。入力端子はUSB。ここにドングル型のDACが内蔵されている。出力端子はRCAとXLRの二タイプが用意されているが、こうした製品で本格的なXLR端子が採用されているのは珍しい。

 春のヘッドフォン祭 2023では、私自身もCRI・ミドルウェアのブースで「新世代のフルデジタルアンプの可能性」と銘打って講演をさせてもらった。アスキーの連載でも以前紹介したが、CRI・ミドルウェアの「D-amp」ドライバーの試作機を用いた解説と試聴のセッションである。立ち見が出るほどの盛況だったが、来場された方々にお礼を言いたいと思う。また、フルデジタルアンプというものに対しての興味がとても高まっているのを感じた。

講演内容
講演前の様子(中央にデモ機があり、TADのスピーカーを鳴らしている)

 会場では、Infineon社の技術を採用したVolumioの「INTEGRO」やL&Pの「W4」など、様々な形でフルデジタルアンプが登場してきていた。これもひとつにはDAC ICの供給に対する不安が背景にあるのかもしれない。

INTEGRO

 こうしたトレンドを長く発信してきたヘッドフォン祭も、中野サンプラザでの開催はこれが最後となった。次回からは会場を変えて、ステーションコンファレンス東京での開催となる予定だ。新しい場所で、新しい時代のトレンドを感じさせるイベントになってほしいと思う。

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