Wi-Fi 6E&10GbE LAN対応ルーターのバッファロー「WXR-11000XE12」見参
ASCII.jp / 2023年5月5日 10時0分
Wi-Fi 6Eルーターの本命が登場
Wi-Fiの周波数帯は、これまで2.4/5GHz帯を利用してきたが、それに加えて6GHz帯が昨秋に開放され、名称もWi-Fi 6からWi-Fi 6Eと改められ、対応機器が続々と登場している。
そうしたなか、パッファローがフラッグシップモデルとしてWi-Fi 6Eに対応した「WXR-11000XE12」を5月上旬に出荷すると発表。すでにバッファローではWi-Fi 6Eに対応したモデル「WNR-5400XE6」が発売されているが、満を持してフラッグシップモデルを投入することになる。実売価格は5万円前後で、すでに出荷が開始している。
外観デザインはWi-Fi 6対応の「WXR-6000AX12P」と同じだが、アンテナは6GHz帯が加わり、2.4GHz、5GHzとともに4本ずつ搭載されている。理論値として最大通信速度は6GHz帯と5GHz帯が4803Mbps、2.4GHz帯は1147Mbpsとなっていて、ストリーム数は各周波数帯で4つずつ、計12ストリームとなっている。
そそり立つ4本のトリプルバンドダイポールアンテナは、指向性があるので向きによって電波の強さや届く距離が変わってくる。同梱のマニュアルにもアンテナの設置のしかたも用意されているので、それを参考にアンテナの角度を調整するといい。
サイズはアンテナを除いた場合、300(W)×70(D)×195(H)mmで、重量は約1515g。電源はACアダプターで、同梱されるLANケーブルはカテゴリー6Aのフラットタイプで長さは2mある。
WANポートとLANポートの1つが10Gbps対応のため、NTT東日本・NTT西日本「フレッツ 光クロス」などの最近増えてきた高速通信回線をフル活用できるようになっている。
LANポートはあと3つあり、そちらは1Gbpsとなっているので、接続機器によって割当を変えるといい。インターフェースは、ほかにもUSB 3.2 (Gen 1)ポートも備えており、ストレージを接続すれば簡易NASとして利用できる。
CPUは2.6GHzクアッドコアを採用。また、ケーブル側のアナログ信号とMAC側のデジタル信号とを変換するPHYデバイス間は、専用のPCIeレーンを用意することで、無線の理論値に対して十分に高速なバスを持たせている。
また、簡単にメッシュネットワーク環境を構築する「Wi-Fi EasyMesh」にも対応。本製品を含め、対応するWi-Fi中継機を利用することで、より部屋の隅々まで高速通信を可能にする。
さらに、セキュリティまわりでは「ネット脅威ブロッカー2プレミアム」のベーシック+プレミアム機能1年間無料ライセンスが付与されており、本サービスを利用すれば外部からの不正な遠隔操作やマルウェアによるデータの流出などを防げる。
そもそもWi-Fi 6Eって何がいいのか
Wi-Fi 6Eは、6GHz帯が加わったことで通信できる帯域が大幅に広がったが、何がいいのかざっくり説明しよう。まず2.4GHz帯は、電子レンジやBluetoothなどでも使用されているため、この帯域を使ってルーターと通信すると帯域が被る。そのため、電子レンジやBluetooth機器を使用していると、Wi-Fi通信が停滞することがある。
一方、最近主流の5GHz帯は、通信速度もギガビットを超えるまでになっているが、航空レーダーや気象レーダーの帯域と被り、それらの電波をキャッチすると、自動的にチャンネルを変更する仕組みになっている。
筆者宅もおそらくそういった地域で、通信が滞ることもあり、あまり安定しない。2.4GHz帯に比べれば全然速いが、最近は利用者も増えてきているので、近所でも同じ帯域を利用していると思ったほどの速度が出ないこともある。
しかしながら6GHz帯は、ほかの通信と被る帯域がなく干渉が起きないため、5GHz帯のようなチャンネルを切り替えることなく利用できる。
また、チャンネル数も増えたため、近所でも6GHz帯を使ったルーターがあっても、干渉せずに利用できることが期待できる。ただし、5GHz帯に比べて電波が遠くへ届きにくくなるため、家全体で6GHz帯の方が速くなるというわけではない。
もちろん、端末側も6GHz帯に対応している必要がある。昨年発売のパソコンならすでにWi-Fi 6E機能を内蔵し、バージョンアップによって開放されるケースも多い。まだ利用者数が少ないので、いまなら安定して高速利用できるチャンスでもある。
フラッグシップモデルの実力は?
さっそく、筆者宅に設置してその実力を検証してみた。まず設置に関しては、使用しているプロバイダーがIPoE接続なので、ケーブルをつないで電源を入れるだけで自動的に回線を認識してネット接続できた。
同メーカー製ルーターからの引っ越し機能などはあるが、スマホアプリを使って設定というわけではないので、PPPoE接続などではルーターの設定へ接続して、マニュアルを読んで行なうことになる。
SSIDは、それぞれの周波数帯に分かれて設定され、さらにセキュリティによっても分けられている。今回の計測では、暗号化方式をWPA3 Personal AESに設定したものを利用した。
SSIDとパスワードは、カードに記載されたものが用意されており、本体背面に収納できるようになっている。AOSSに対応していれば、ボタンひとつで設定完了するが、そうでない場合はパスワードの入力が必要なので、カード式だと見やすくどこにあるかもわかりやすくて便利だ。
本製品は、2階に設置し4箇所の部屋で速度を計測した。計測には「Speedtest」アプリとスループットを測る「iPerf3」を使用。Speedtestの場合、ノートPCで何度か計測して好結果の値を記録として記載しているが、回線やサーバーの混み具合によって速度が異なるため、その点を留意してほしい。
また自宅は軽量鉄骨造りの2階建で、壁内にも金属が入っているため木造住宅よりは電波が届きにくくなっている。また、回線はフレッツ光NEXTで速度は最大1Gbpsのため、残念ながらWAN側10Gbpsの実力は発揮できない。
一方iPerf3では、2.5Gbpsの有線LANアダプターを接続したVAIO Zを使用しノートPC間で計測。30秒間の平均値を取り、やはり好結果の値を記録として記載している。なお、ノートPCはWi-Fi 6Eに対応したVAIO SX14 ALL BLACK EDITIONを使用している。
計測した結果は以下の通りだ。アンテナは、極力4箇所で最適な速度が得られるような角度にしている。
Speedtestの結果を見ると、2階リビングと2階奥の部屋、1階和室は6GHz帯と5GHz帯がかなり拮抗しているが、1階奥の部屋は6GHz帯が急激に落ち、5GHz帯と差が開いている。ルーターからいちばん離れているのと、アンテナの指向性の強弱が逆に少々影響しているのかもしれない。
というのも、一番奥の部屋の扉付近では、6GHz帯でも上下とも500Mbpsを超えているのだが、部屋に入ると一気に落ちてしまうのだ。電波強度的にも最弱付近をうろつくため、筆者宅の場合はメッシュ環境にしたほうがいいようだ。
ただ、ほかの3部屋の結果を見ると、ルーター設置場所から水平方向と垂直方向には結構強いようで、参考として有線接続時の速度も計測すると、ルーターにいちばん近い2階リビングではかなり好結果を記録していることがわかる。
一方スループットでは、ルーターにいちばん近い2階リビングでは1200Mbps前後を記録。1階和室でも6GHz帯で下りが781Mbpsを記録しており、かなり高速という印象だ。
ちなみに、リンク速度的には最大2402Mbpsのため、約半分程度までは出ていることになる。ただやはり、1階奥の部屋は6GHz帯で下り318Mbps出たものの、安定しているかというとそうでもないので、1階に中継機を置くことで、最適な通信環境になりそうだ。
今回の結果を見てみると、ルーターの設置場所が家のセンターにあると、上下階があってもまんべんなく本製品のみでまかなえるのではと思う。筆者宅のようにルーター設置場所が端の場合は、一部電波が弱いところが出てくる可能性があるので、その場合はメッシュ化を検討したほうが良さそうだ。
家庭内LANも高速化の時代に
WXR-11000XE12は、5万円前後とフラッグシップモデルだけに少々値段は張るが、指向性のあるダイポールアンテナにより電波強度の調整ができ、しっかり電波が届けば速度の低下も少なく広い範囲で高速通信が可能なため、部屋の構成や設置場所によっては、これ一台でカバーできるだろう。
また、帯域ごとに4ストレームぶん確保されているので、家族で同時にネット接続しても、速度の低下を抑えられ、10Gbpsの回線を利用していれば、その通信能力をフルに発揮できる。LAN側にも10Gbpsが備わっていて、メッシュWi-Fi時に中継機と接続したり、10Gbps対応のHubやNASを接続することで、高速LAN環境の構築にもつながる。
家庭内LAN環境は長い間1Gbpsの時代が続いてきたが、10Gbpsのネット回線が増えてきたことで、ようやく高速の時代に突入している。いち早く10GbpsのLAN環境にしたいなら、LAN側にも10Gpbsのポートがあるものを選ぶべき。高速Wi-Fiが組み合わさった本製品なら、将来を踏まえて投資する価値があると言えよう。
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