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PayPay、他社カード決済停止で独自カード強化

ASCII.jp / 2023年5月10日 7時0分

筆者撮影

 2023年5月1日、PayPayは8月1日よりPayPayカードおよびPayPayカードゴールド以外のクレジットカードからの決済を停止すると発表した。

 すでに登録されているクレジットカードにおいても、PayPayブランド以外のクレジットカードは登録解除されるという。

 連休の谷間の発表と言うことで、さらりと世間に受け流されるかと思いきや、SNSや、逆にネタがなくて暇だったと思われるニュースメディアが反応。結構な勢いで世間から注目されることとなった。

 実際、今回の改訂でどこまでユーザーに影響があるのか不透明だが、該当しないユーザーもSNSで騒いでいた感が強い。

 改訂により、他社カードを使っていたユーザーがPayPayカードならびにPayPayゴールドカードにデビューするという流れが増えることだろう。ソフトバンクとしては当然、自社カードのユーザーを増やしたいというのが根底にあるはずだ。

 もちろん、他社カードを経由してPayPayを使われてしまっては決済手数料を他社に支払う必要が出てくる。この出費を止めたいというのも本音だろう。

PayPayの狙い:自社カード利用促進と決済手数料削減

 ソフトバンクがPayPayカードならびにPayPayカードゴールドに注力していくということは、すでに決算会見で宮川潤一社長が語っていたことだ。

 ソフトバンクでは2022年第3四半期より金融事業を新たに立ち上げた。スマホ決済のPayPay、クレジットカードのPayPayカード、決済代行サービスであるSBペイメントサービス、スマホ証券「PayPay銀行」で構成し、モバイル事業とのシナジー効果を狙っているのだ。

 2022年10月1日にはヤフーからクレジットカード事業が移管され、PayPayカードという会社はPayPayの100%子会社となっている。

 PayPayとPayPayカードの関係強化は、ユーザーの決済金額の底上げに不可欠だ。

 ソフトバンクは、QRコード決済単独では月間2万円台前半しか決済金額が計上されないが、クレジットカード単独ユーザーなら4万円台後半、QRコード決済とクレジットカード併用のユーザーであればさらに決済金額が伸びると見ている。

 ソフトバンクの金融事業としては、QRとクレカ決済の併用により、月間決済金額の最大化が目下の課題となっているのだ。

ソフトバンクの金融事業戦略:モバイルとシナジー効果狙う

 今後は、現在5400万件を超えるPayPayユーザーに、いかに自社クレジットカードであるPayPayカード、もしくはPayPayカードゴールを持たせ、決済させていくかが鍵となっている。

 2023年3月末現在でPayPayカードの有効会員数は1004万件だ(PayPayあと払い含む)。

 特に重要となっているのが、2022年11月24日から始まったゴールドカード会員の獲得だ。年会費1万1000円と高額ではあるが、スマートフォンや光回線の通信料金は1000円(税抜き)ごとに最大10%のポイントが付与される。ソフトバンクでんきでも1000円(同)ごとの3%のポイントとなる。

 家族のソフトバンクへの支払いをまとめるなどすれば、1万1000円の年会費を取り返すことが可能であり、それ以上のポイントでかなりお得になるというわけだ。

 ソフトバンクとしては、ゴールカードを始めることで、クレジットカード払いの流通総額の拡大を狙っていくだけでなく、ソフトバンク回線のお得意様になってもらい、解約抑止につなげたいという狙いもある。

NTTドコモと競合他社のカード事業戦略

 このお得意様効果を上手く発揮しているのがNTTドコモだ。

 NTTドコモにも、年会費が永年無料の「dカード」と、年会費1万1000円の「dカード GOLD」が存在する。驚くべきは、dカードの契約者数が1648万件であり、そのうち951万件が年会費1万1000円のdカード GOLDということだ。

 ちなみに楽天カードは発行枚数が2022年12月現在で2800万枚、au Payカードは830万枚となっているが、いずれもゴールドカードの会員数は開示されていない。dカードとしては、ゴールド会員数は胸を張って自慢したい数字なのかも知れない。

 一方、楽天は、経済圏によるポイント効果により、楽天カードが国内ナンバーワンのポジションを占めている。

 KDDIは、2014年に「au WALLET」として、プラスティックのプリペイドカードを普及させてきた流れを汲んでいる。

ゴールドカードによるキャリア間のお得意様効果競争

 dカード、au Payカード、PayPayカードとも、ゴールドカードでは年会費1万1000円を設定し、通信料金の10%をポイントで還元するという特典を付けている。これによりお得意様となり、契約を継続させ、回線を解約しにくい関係を作り出しているのに成功している。

 ただ、PayPayカードのゴールドは昨年、始まったばかりで、3社のなかでは後発だ。ソフトバンクではこれまでクレジットカード事業にはあまり力が入っておらず、ヤフーによるYahoo!ジャパンカードに任せていた感が強い。

 そんななか、ソフトバンクはPayPayによる大盤振る舞いのキャンペーンなどを通じてQRコード決済で圧倒的なシェアを握り、今度はクレジットカード事業にユーザーをシフトさせようとしているわけだ。

 QRコード決済アプリは、ユーザーにクーポンを付与するなどしてマーケティング活動に使ったり、ポイント投資を通じて証券などの金融サービスへの窓口として機能する。一方、QRコード決済事態は決済手数料も少額であるため、なかなかコストの割に儲からないという構図になっている。

 値下げの影響で、通信料収入が稼げなくなるなか、各キャリアとしては金融事業、特にクレジットカードに注力していくことになりそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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