5Gでもレースでも最速を! auがTOM'SとSUPER GTに参戦し続けるワケ
ASCII.jp / 2023年5月13日 12時0分
SUPER GTで活躍するauの歴史
5月3~4日に富士スピードウェイで開催された、SUPER GT第2戦「FUJIMAKI GROUP FUJI GT 450km RACE」にて、auがメインスポンサーとして支援する36号車「au TOM'S GR Supra」が、2位以下に圧倒的な差をつけて優勝した。ASCII.jpはこれまでも10年以上にわたってSUPER GTのレポートをお届けしているのでSUPER GTの詳細については割愛するが、知らない人は国内最高峰の動員を誇るモータースポーツだと覚えておいてほしい。
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自動車とモバイルが密接な関係になってきているのもあって、ドコモはスーパーフォーミュラ、auはSUPER GTでそれぞれ社名を冠したクルマを走らせている。ソフトバンクはクルマではなく、アメリカズカップという世界最高峰のヨットレースを支援している。もちろん、ありがちな「社長の道楽」でのスポンサーではない。モータースポーツで得られた知見をキャリアの事業に落とし込むための活動なのだ。
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中でもauはレースとの関係は古く、1999~2000年にはSUPER GTの前身である全日本GT選手権で「cdmaOneセルモスープラ」を走らせていた。しかも、ドライバーは木下隆之/近藤真彦選手だ。2001年からは社名を冠した「auセルモスープラ」になり2004年までスポンサード。その後、しばらく時間が空いたが、2016年に名門チームのTOM'Sと組んでSUPER GTに復帰した。チーム名は「TGR TEAM au TOM'S」。2021年にはシリーズチャンピオンにも輝き、先日の富士では前述のように優勝と、かなりの強豪チームである。なお、全日本GT選手権時代も2001年にチャンピオンになっている。
なぜTOM'Sはauと組んだのか? その相乗効果とは?
4日の決勝レース開始前に、auは記者を招いてSUPER GTへの取り組みを説明。まずはTOM'Sのトレーラーの中で、TOM'S代表取締役社長の谷本 勲氏に話を聞いた。
まずは今年の抱負から。「2021年にチャンピオンを獲ったので、昨年はディフェンディングチャンピオンを目指していたのですが、残念ながら叶いませんでした。なので、今年は早々に2年ぶりに王座を獲れる体制を築いて取り組んでいます。ドライバーの坪井 翔選手も宮田莉朋選手も、ともにF4などのレースを走っていたので、コミュニケーションも問題ありません」と必勝体制に自信を見せた。実際、開幕戦の岡山では大雨でサバイバルレースになった中で、終盤までトップを快走していた(ピット作業でタイヤがはまらないまま送り出してしまい、レースは途中で戦線離脱の15位となったが)。今回の優勝はまさに前戦のリベンジとなったが、そうできる実力がドライバーの2人にはあるのだ。
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2016年から数えて7年にもなるauとのジョイントは、どのような効果があったのだろうか? 「auというブランドの認知度の高さのおかげで、ファンの方が見たときに親しみやすさが格段に変わったと思います。あとファン作りやファンとのコミュニケーションを近年はauさんと一緒にやらせていただいています。昨年の年末にGINZA456でファン向けのイベントを開催しましたし(au、銀座でSUPER GTのイベントを開催! 監督、ドライバー、RQ勢揃いで大盛り上がり)、今回のauファンシートもそうです。良きスポンサーさんであり、良きパートナーですね」。リアルなイベントが解禁されつつあるので、今後も積極的にファンとのコミュニケーションは取っていきたいと谷本氏。
auといえば、eモータースポーツにも積極的だ。「そうですね。うちの宮田選手もグランツーリスモのトップドライバーですし。脳トレもそうですけど、通信を通じて、うちもいろいろお手伝いできるとこはあると思います。eスポーツからリアルにというストーリーもありますし。レースたくさんのデータが取れるから、もっと活用できるところがあるのでは、とチームはチームで考えております」と谷本氏は語った。いまやレーシングカーはデータの塊だ。バーチャルのデータをリアルに活かすこともあれば、その逆もあり、リアルとバーチャルの垣根がなくなってきているのは、モータースポーツが最前線かもしれない。
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今後やってみたいことは「たとえば今日のGTのレースに、リアルタイムでバーチャルからも参加する、なんてことも近い将来できるかもしれません。通信の進化は日進月歩ですから」とのことだが、たしかにトップドライバーたちが高次元のバトルをしている中に、バーチャルとはいえ一緒に走れるのはモータースポーツファンにとってはたまらないサービスだ。
auに聞く、サーキットの通信環境はどうなる?
次はau側にサーキットと通信環境の問題を聞いてみた。今でこそ富士スピードウェイなどは普通に5Gが入るようになったが、つい数年前までは「サーキット=通信環境は絶望」という認識だった。パドック周辺で4Gが入ればいいほうで、グランドスタンド以外の観戦スポットは圏外になるのは当たり前。今でもサーキットによってはグリッドウォークでホームストレートに出るとTwitterのテキストすら上がらないという場合もある。最近では電波の悪さに業を煮やし、衛星通信のStarLinkを持ち込むチームもいるほどだ。
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筆者もモバイル業界の編集者という立場を活かして、何度もサーキットでのアンテナ整備を訴えたのだが……。そんな不満をぶつける前に、なぜSUPER GTに参戦し続けるのかをKDDI ブランド・コミュニケーション本部 ブランドマネジメント部 佐伯凌汰氏に聞いた。
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「スポーツを通じてお客様と接点を作るというのが非常に大事だと思ってます。auショップやTVCMなどである程度接点はあるのですが、届かない部分もあります。そこをTOM'Sとそのファンのみなさんのチカラを使って接点を増やすということを軸にやっています」(佐伯氏)。スポーツをスポンサードするメリットはわかるのだが、なぜ日本ではメジャーとは言い難いモータースポーツなのだろうか?
「我々の前身としてIDOという会社がありまして、トヨタさんと自動車電話などのサービスを展開してきたんです。自動車と通信って昔から切っても切れない関係なんですよ。それもあって、モータースポーツに参加していますし、弊社内で唯一“au”がつくスポーツチーム(au TOM'S)だったりします。auをあまり知らない人がチームやドライバーから我々を知ってもらうこともありますね」(佐伯氏)。
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通信キャリアということもあり、「繋ぐ」をテーマにチームとファンを繋ぐイベントも開催した(前述の銀座でのイベント)。そして、今回売り切れたというauファンシートも、応援用の大型フラッグと旗振り係を導入し、より熱を上げて応援できるようになった。だが、今年のクルマに貼ってあるauのロゴが小さくなっている気がするが……。
「実は意図的に小さくしています。我々が前に出て行くよりもTOM'Sさんやドライバーの方たちを立てていきたいということもあり、あくまでも我々は後ろからのサポートということで、小さくしました。昨年まであった“5G”のロゴも、もうだいぶ認知されただろうということで今年はなくなっています。もっと全体のサービスを見ていただきたいなと」(佐伯氏)
5Gの話が出たところで、最近のサーキットの現状を聞いた。SUPER GTだと「Grooview Multi」、スーパーフォーミュラだと「SFGo」といった、モバイル回線を使ったリアルタイムで情報を追えるアプリが出ているが、回線速度のせいでラグがあったりしてなかなかもどかしいのも事実。
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「富士スピードウェイに関しては2019年くらいから5Gの整備を始めていて、一部ですがミリ波も吹いています。開幕戦の岡山国際サーキットも全エリア5G化が終わりました。今秋以降はスポーツランドSUGO以外は全域5Gエリア化する予定です」(佐伯氏)
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5Gは速度ばかりが注目されるが、同時多数接続も大きなメリット。とくにイベント会場のような人が集まる場所でこそ威力を発揮する。そういう意味でサーキットの5G化はユーザーの利便性が大きく向上するだろう。さらにサーキットは遮るものが少ないのでミリ波も飛びやすい。スポーツランドSUGOも、この先永遠に5Gにしないというワケではなく、順次5G化の対象になるようだ。なお、auではSUPER GTのようなビッグレースのときはアンテナ車などを派遣する、といった取り組みをしている。
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5GのSA化やミリ波のエリアも気になるが、来年にはほとんどのサーキットで電波問題は解消されそうだ。5Gやスマホを活用したサービスがもっと出てくれば、モータースポーツ観戦がより快適に、そして盛り上がることが期待できるだろう。auとモータースポーツの取り組みに今後も注目してほしい。
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