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グーグル、マイクロソフト猛追 ChatGPT対抗の鍵は「マルチモーダル」「全方位」

ASCII.jp / 2023年5月16日 12時0分

グーグル兼アルファベットCEO スンダー・ピチャイ氏

グーグルがAIへの本気度を示したGoogle I/O 2023

 5月10日にアメリカ・マウンテンビューにあるグーグル本社横にある屋外ステージで開催された同社の開発者イベント「Google I/O」。現地で参加したメディアには基調講演だけでなく、グーグルの社屋においてAIに関するラウンドテーブルやパネルディスカッションなども取材する機会が与えられた。

 今年のGoogle I/Oは、間違いなく「グーグルはAIに本気」というところを世間に示したかったようだ。ただ、グーグルとしては「ChatGPTに比べて遅れている」というイメージを払拭したいようだ。

 幹部からは「何年も前からAIの開発に取り組み、すでに多くの製品に搭載され、世界の人々の生活を支えてきた」というアピールが何度も披露された。

 筆者は10年以上、Google I/Oを現地で取材しているが、ここ5年近くは少なくともAIに関しての発表が結構、多かったほどだ。グーグルとしては「ぽっと出のOpenAIにAIのリードしているイメージを奪われたくない」という忸怩(じくじ)たる思いに駆られているのかもしれない。

 世間やメディアからすると、「OpenAIのChatGPTとマイクロソフト陣営vs.グーグル」という対立構造を期待したくなってくる。

 OpenAIがChatGPTによる生成AIを出しつつ、同社に出資しているマイクロソフトがChatGPTをベースとしてリニューアルした検索サービス「Bing AI Chat」を投入。さらにMicrosoft365では、Co-Pilotとして、AIがユーザーの仕事を助けてくれるような機能を盛り込んだ。

Bardの強み「マルチモーダル性」

 今回のGoogle I/Oでは、Bardのアップデートが発表された。BardはまさにChatGTPやBing AI Chatに対抗するサービスと言われている。2023年3月からアメリカ・イギリスの英語でサービスが始まり、Google I/Oで日本語と韓国語の対応が発表された(今後、40以上の言語に対応)。

 Bardの強みとなってくるのが「マルチモーダル性」だ。

 マルチモーダルとは文字だけでなく、画像や音声などのコンテンツを扱えるようになる。質問に画像を組み合わせてもいいし、逆に回答に画像が出てくることもある。

 グーグルがChatGPTやBing AI Chatよりも便利になる可能性があるのが、グーグルは様々なサービスを持っているという点だろう。

 Bardに質問した際、住所が出てくればGoogle Mapから地図を表示できるし、テキストで伝わりにくいならYouTubeから動画を引っ張ってくることも今後、不可能ではない。グーグルが提供しているサービスを横断的にBardが検索し、簡潔にまとめて見せてくれるようになると、結構、便利になりそうだ。

AIとワークスペースの統合

 マイクロソフトはMicrosoft365にCo-Pilotとして、AIして、仕事のサポートをしてくれるようにするが、グーグルも負けてはいない。

 Google Workspaceにおいて、GoogleドキュメントやGmailで文書を作成する際、Bardで文書をつくる支援や要約をしてくれるようになる。また、Google Slideでは文書からのプレゼン資料作成、スライドで話す内容の原稿作成、さらにはスライドに挿入するイラストの作成まで手伝ってくれる。

 基調講演では動画の説明だけであり、リアルに動かしたデモではなかったため、絶賛開発中だと思われる。マイクロソフトの発表に追いつくために慌てて作った可能性も考えられるが、いずれにしても、仕事を支援してくれるBardの登場が待ち遠しい限りだ。

AIと検索の新たな試み - GSE

 当然のことながら、グーグルの本業である「検索」にもAIが強化されていく。いまのところ、「Search Labs」というベータ版的な位置づけで「GSE(Generative Search Experience)」が提供される。

 こちらはデモとしてネットショッピングでの検索が紹介され、性能のいい自転車の説明を簡潔にまとめて表示させつつ、欲しい色だけの自転車をすぐに買えるようにもしてくれた。

 個人的に検索で気になっていたのが広告の扱いだ。Bing AI Chatの画面では検索しても広告は一切表示されず、スッキリとした画面で結果が簡潔にわかってとても便利であった。

 今回、発表されたGSEでは、従来のGoogle検索同様にスポンサーによる広告がしっりと表示されていた。グーグルにとって広告収入が売上げの本丸であるだけに、AIが載り、見せ方が変わったとしても広告表示は継続していくようだ(もちろん開発中のため、今後、変更されることはあるだろう)。

 今年のGoogle I/Oでは、Googleクラウドの担当者も登壇するなど、クラウド事業もAIに本気で取り組んでいる点がアピールされた。ライバルであるマイクロソフトは、同社のクラウド事業であるAzureでChatGPTを使えるようにして、企業に「プライベートで安全に使えるChatGPT」を積極的に売り込んでいる。

 グーグルとしても、検索やWorkspace、クラウド、さらにはPixelなどあらゆるところでAIを強化し、全方位でマイクロソフトと戦っていくつもりのようだ。

 

筆者紹介――石川 温

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)、『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

 

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