春のヘッドフォン祭 2023で聴いた気になる新製品&参考展示まとめ(前編)
ASCII.jp / 2023年5月24日 8時0分
4月29日に開催された「春のヘッドフォン祭 2023」。中野サンプラザでの開催は最後となる予定だ。内外の新製品が一堂に会したポータブルオーディオの展示会。整理券が取れなかった、長蛇の列で試聴を断念したモデルもあったが、試聴できたモデルから印象深かったものを紹介しよう。
初のヘッドホンなど新製品多数のFiiO
ハイレゾプレーヤーやイヤホンでお馴染みのFiiOは、ブランド初のヘッドホン「FT3」を参考展示した。開放型で直径60mmのダイナミック型ドライバーを搭載。音質重視でインピーダンスは350Ω。プラグは交換式でバランスは4.4mmと変換プラグでXLR(4ピン)に対応、アンバランスは3.5mmと6.3mmが使える。アルミ合金製のハウジングは軽い装着感で、厚みのある低域と解像度が高く粒立ちのいい高域を聴かせてくれた。
FiiO「FA19」(参考展示)はマルチBA型IEMの最高峰。一聴するとBA型とは思えない豊かな低域、そして繊細で解像度の高い高域。BA型ドライバーで統一しているため、スピード感があり、音色にも一体感がある。10ドライバーが必要かどうか疑問を感じていたが、聴けば納得のクセのないハイエンドモデルだ。
最近のトレンドであるハイブリッド構成にFiiOが初挑戦したのが「FX15」(参考展示)である。中低域用にダイナミックドライバー1基、高域用にBAドライバー1基、超高域用に静電型ドライバー4基を搭載する。ボーカルの音色はウォームで、低域は量感がある。高域はクッキリとして粒立ちがいい。これはBA型以上の繊細な音だ。静電ドライバーは磁気を使わず、振動膜を静電気で駆動するため、外部からの電源供給が必要となる。これがヘッドホンではなくイヤホンの場合は、振動膜の小型化や昇圧トランスによって低電圧駆動を実現。本機の静電型ドライバーはハイエンドモデルに多く搭載されるデンマークのSonion製を採用している。
最近では1万円以下の中華イヤホンに中華製の静電型ドライバー搭載されるようになり、ダイナミック型ドライバーとのハイブリッド構成がトレンドになっている。さすがに「FX15」のような凝った構成の3ウェイは見たことがないが、フルレンジならダイナミック型の平面振動板、ハイブリッド構成のツイーターには静電型ドライバーという流れが今後、来るかもしれない。
Noble Audio、そして注目ブランドのCleer
Wizardことジョン・モールトン博士が著名なNoble Audioの「STAGE3」(参考展示)はSonion製BAドライバー、Knowles製BAドライバー、10mmのカスタムダイナミック型ドライバーを各1基ずつ搭載した3Wayモデル。まず、驚くのはダブルマグネット構造のダイナミック型ドライバーが再生する量感ある低域。そして広大なサウンドステージに、解像度の高い高域だ。ハイブリッドにありがちな音色やスピード感の違いもなく、フルレンジドライバーの音を聴いているかのような錯覚を覚える。このあたりの音造りうまさはさすがNoble Audioと言える。
16.2mmの大口径ドライバーと独自の低音増強技術DBEにより、環境音を遮らずに音楽が楽しめる完全ワイヤレスイヤホンの最新モデルが参考展示された。音楽用の「ARC2 Music Edition」、充電ケースに紫外線照射機能を搭載したワークアウト対応の「ARC2 Sports Edition」、低遅延でゲーム用の「ARC2 Game Edition」の3タイプである。
従来モデルとデザインも機能も同じに見えるが、3モデル共通で最新SoC「QCC3071」を採用。SBC/AAC/aptX/aptX Adaptive/aptX Losslessに対応。Sports以外も防水仕様がIPX5になった。Bluetooth5.3によりマルチポイント接続にも対応する。ダイナミック型ドライバーとしては低音が出ておりバランスはいい。高域は広がり感があり抜けもいい。Sportsには動きを検知して音質を調整する機能があり、さらに低域の効いたバランスのいい音が再生された。GameにはUSB Type-Cドングルが付属しており、アダプターを介してiPhoneに差せばaptX Adaptiveでの音楽再生に対応、目が覚めるような高解像度の音が楽しめた。また、専用のゲーミングモードも搭載している。
多彩なドライバーを組み合わせたAstell & Kernの新イヤホン
Astell&Kern「AK ZERO2」は中低域にデュアルカスタムBA型ドライバー、中域にデュアルカスタムBA型ドライバー、高域は平面駆動型ドライバー、低域と超高域にピエゾ型(圧電振動子)を組み合わせたダイナミック型ドライバーを搭載している。2021年に発売された「AK ZERO1」が3種類のドライバーを使ったのに対して、AK ZERO2は4種類になり、よりワイドレンジ化され、ハウジングの構造も複雑に見える。ドライバーはクロスオーバーネットワークに接続され、3Dプリントのアコーステックチャンバーで最適の配置が得られるという。ハウジングはCNC切削のアルミ合金製で共振を抑える。その音は4種類のドライバーを使っているとは思えない、統一感のある音色でクセがなく、解像度の高いものだった。低域はタイトでスピード感があり、全体的にモニターライクな印象を受けた。
FitEarとiFi audioのコラボも魅力的
FitEar「MH335ht」は「MH335DW」を新たなアプローチで見直し、堀田息吹氏がマスタリングエンジニアの原田光晴氏のフィロソフィーを受け継いて設計した新世代のダブルウーハーモデルとなる。具体的には3Dプリンターを使い、高域側の音導孔をホーン形にして高域のレンジを拡大、さらにホーン部に中域と低域の音導管を合流させる構造を採用。またネットワークのコンデンサーなどの部品の再検討により低域のリニアリティを向上させたという。ユニット構成はBA型ドライバーの3ウェイ、3ユニット、5ドライバーとなる。その音は低音過多だった「MH335DW」に比べてバランスがフラットになり、低域はハイスピードで、高域側のヌケも良くなっている。まあ、真の実力はカスタムでないと発揮されないので、あまり当てにならないかもしれないが。
会場ではiFi audioの完全ワイヤレスBTアダプター「GO pod」と「MHシリーズ」のバンドルセットも展示されていた。
後編に続く
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