PlayStationブランド初の完全ワイヤレスイヤホンを勝手に予想する
ASCII.jp / 2023年5月30日 13時40分
5月25日にソニー(SIE)がPlayStationブランド初の完全ワイヤレスイヤホンを年内に発売すると驚きの発表をした。発表ではあまり詳細は述べられていないが、新しいワイヤレス技術を用いた「低遅延」で「ロスレスオーディオ」を再生できるものということのようだ。情報は少ないのだが、このイヤホンを推測してみる。
【PlayStation®Showcase】 本日の「PlayStation Showcase」にて、PS5®のゲームが遠隔でプレイ可能となる新作デバイス「Project Q」や、PlayStation®ブランドとして初の公式ワイヤレスイヤホンの情報を初公開しました。 詳細は後日発表いたします。 pic.twitter.com/iAug8JG2Gs
— プレイステーション公式 (@PlayStation_jp) May 24, 2023
PlayStaionブランドの完全ワイヤレスイヤホン(Earbuds)の説明は動画の25秒付近から。
本命は2.4GHz帯の独自無線技術採用か
この連載でもゲーミングの世界と高級イヤホンの関係について書いてきた。簡単にまとめるとゲーミングの世界では敵が来る方向を察知するといった目的で、優れた音響性能(空間再現性や遅延の少なさ)を持つ高級イヤホンが必要な場合がある。例えば、ハイエンドのヘッドホンで知られるAudezeも、ゲーミング用途をうたうヘッドセットを販売している。しかし、多くのワイヤレスイヤホンはBluetoothを使った接続になるため、(圧縮などによる)音質低下が避けられず、遅延も大きくなるという問題がある。eスポーツの大会においては一流スポーツ選手並みの反射能力が求められるということもあり、Bluetooth接続がかかえる音質と遅延の問題は致命的だ。
ひとつの解決策は2.4GHz帯の独自通信を用いるもので、Audezeのゲーミングヘッドセット「Penrose」(ペンローズ)も同様のアプローチをとっている。製品にはUSBドングルが付属していて低遅延とロスレス接続を可能としている。もちろんPenroseのドングルはPS5でも使用ができる。
PlayStationブランドの完全ワイヤレスイヤホンが出ると聞いて、最初に思いついたのはこうした2.4GHz帯の独自方式を使った通信を採用するのではないかということだ。
以下はあまり根拠のない推測だが、例えば充電ケースとPS5をUSBでつなぐことでケースが送信機になることもありえる。実際に最近の完全ワイヤレスイヤホンでは、Bowers & Wilkinsの「Pi7 S2」のように充電ケースにUSBやアナログケーブルを接続できる端子があって、有線で入力した信号を無線に変換して送信できるものがある。(Pi7 S2の場合はBluetooth/aptX Adaptiveコーデックによる伝送だが)USBデジタル接続であれば容易に低遅延かつロスレスの伝送を実現できるだろう。
海外ではリーク情報も
また、少し前に「Insider Gaming」のオンラインマガジンで、PlayStation 5用のワイヤレスイヤホンが2023年4月から2024年までの間に出るという情報が書かれていた。出現時期は正しいので、もしかするとこの情報にもヒントがあるかもしれない。この記事によると、このイヤホンは"Project Nomad"と呼ばれ、USB Type-Cケーブルを介してPS5と接続できる充電ケースを備えているという。この接続でファームウェアのアップデートができるとあるが、上述の充電ケースとイヤホン本体を独自方式のワイヤレス接続する用途でも利用できるのではないだろうか。ちなみに、このサイトによると、"Voyager"というワイヤレスヘッドホンも開発中だという。
LE Audio採用の可能性も否定できない
紹介動画では、次世代の低遅延/ロスレス伝送技術でPCやPS5とつなげることに加えて、Bluetoothでスマホともシームレスに接続できるという説明がある。もしBluetoothの規格を用いて、低遅延を実現するのであればLE Audioの採用も考えられる。
LE Audioはオーディオ転送のコア仕様自体が変更されており、データの完全性よりも一定の時間間隔で送ることに焦点を置いたアイソクロナス転送が導入されている。ファイル転送とは異なり、オーディオ伝送では多少のデータが欠落したとしても遅延が起こらず、一定間隔で情報を送ることの方が重要だからだ。アイソクロナス転送では常に一定の時間間隔で伝送するのでバッファが少なくて済む。結果的に、Bluetooth Classicよりもオーディオの遅延が少なくなるはずだ。さらに、LE Audioの拡張機能であるLC3 Plusを使用すれば、最大96kHz/24bitのハイレゾデータを送ることもできる。ソニーはLE Audioの分野で中心的存在を占めているので、この方式をそのまま利用するだけでなく、なんらかの拡張をして利用することもあり得るかもしれない。ただ、この点については、オーディオ分野でも実現した機種がなく、実現性はわからない。
いずれにしても、2.4GHz帯の独自無線通信の話もLE Audioの話も、今のところは筆者によるただの推測にすぎない。しかしながら、ソニーもまた「高級ゲーミングイヤホン」という市場の流れに乗っているように思えるのは興味深いことではないだろうか。
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