ゲーミングディスプレーなのに広色域と高速応答を両立した欲張り新製品
ASCII.jp / 2023年6月14日 11時30分
ゲーミングディスプレーというと、リフレッシュレートや応答速度重視で色味は二の次というイメージが強い。そういった風潮を払拭するべくエムエスアイコンピュータージャパン(MSI)が投入したのは、31.5インチの湾曲ゲーミングディスプレー「MAG 325CQRF-QD」だ。
ゲーミングディスプレーに求められるのは、やはり残像感のない高速駆動・高速応答のパネル。VAパネルはIPSパネルに比べて高速駆動・高速応答を実現しやすく、ゲーミングディスプレーに活用されることが多いが、今回MAG 325CQRF-QDで採用したのはRAPID VAパネルという、より応答速度を高めたものだ。
eスポーツ大会で使用される応答速度を実現したRAPID VAパネル
応答速度をスペック上で表わすときは、1ms(GTG)や1ms(MPRT)などと記載される。どちらも同じ1msだが、GTG(Gray to Gray)とMPRT(Moving Picture Response Time)で計測方法が違っており、これだとどちらのほうが性能いいのか分かりづらい。
GTGは中間色から中間色への変化にかかる時間で、白から黒や黒から白への変化より時間がかかるとされている。映像で白から黒といった極端な変化はほとんどなく、GTGでの計測は実際に利用しているときの応答速度を表わしていることになる。
一方MPRTは、輪郭部分がどれだけぼやけるのかを測定したもので、一般的にフレーム間に黒を挿入して(アンチモーションブラー機能)、残像感を低減し計測する。そのため、人間の目には残像感は低減されるものの、GTGの値と同等ということはなく、より速い値が示される。つまりGTGで表記された応答速度が高いほうが、ディスプレーの実力としては高いことを意味する。
MAG 325CQRF-QDは、この応答速度が1ms(GTG)で、これはeスポーツ大会で使用されるレベル。リフレッシュレートは170Hz(オーバークロック時。1秒間に170回だと5.6msに1回描画される)なので、映像が切り替わるタイミングよりも応答速度のほうが圧倒的に速く、残像感もなくヌルヌル動くことになる。
より広色域実現すべく量子ドット技術を採用
本製品ではこうしたRAPID VAパネルを採用しつつ、さらに広色域を実現すべく、量子ドット技術を採用している。通常液晶ディスプレーは、バックライトから出た光を偏光フィルターで光をコントロールし、液晶の分子のねじれによって光の強さが調整され、カラーフィルターを通して色を表現している。
これに対してRAPID VAパネルでは、光をコントロールする部分に結晶のサイズによって特定の波長だけを通す量子ドットフィルムを挟む。そうすることで、バックライトからの光が、よりカラーティルターに近い色に強調され、青・緑・赤のバランスがよくなり、より広色域を実現している。
さらに、より色彩を引き立たせる「Premium Color Mode」も搭載しており、sRGBカバー率が99.5%、AdobeRGBカバー率93.7%、DCI-P3カバー率96.8%とクリエイティブな作業でもそん色ないレベルまで達している。
バックLEDイルミネーションやKVMスイッチを搭載
MAG 325CQRF-QDは、湾曲率が1000Rと眼球の動きと同等で、目を左右に移しても焦点距離があまり変わらない。解像度は2560×1440(WQHD)で、Windowsのスケールを100%表示にしても十分文字を認識できるレベルなので、広い作業領域で効率よく作業できるはずだ。
輝度は300nitでHDRに対応し、対応するグラボと組み合わせることでカクつきやティアリング現象を抑える「FreeSync Premium」を搭載。残像感を抑えるアンチモーションブラー機能や暗くて見づらい場所でもAIで最適な明るさに補正してくれる「ナイトビジョン」モードもあり、十分なゲーミング性能を備えている。
各種ディスプレー設定を行なうOSD操作は、スティックタイプのナビキーを採用。手元を見ることなく直感的に操作できるので、非常に設定しやすい。また、USBハブにUSBケーブルを接続し「Gaming Intelligence」アプリを導入すれば、パソコン上からキーボードやマウスを使って設定を切り替えられるので、より簡単に扱える。
背面にはLEDイルミネーションを搭載。これまで紹介してきたMSIのゲーミングディスプレーは、このあたりが省かれていることが多かったが、本製品ではゲーミングディスプレーらしい外観になっている。イルミネーションは「Mystic Light」に対応しており、Gaming Intelligenceアプリから発光パターンや色味を変更できる。
また、KVMスイッチに対応しており、ディスプレーのUSBハブへ接続したキーボードやマウスなどを2台のマシンで共有できる。一方をHDMIかDisplayPortへつなぎ、USB Type-Bへ接続。他方をUSB Type-Cポートへ接続することで、入力を切り替えるだけで自動的に切り替わる。
残像感が少なく発色もいい
実際に設置して使ってみたが、調整機能は高さ100mmとチルトが-5°~20°のみで、スイベル機能は備えていない。サイズは701.4(W)×270.1(D)×479.2(H)mmと、80cm幅のデスクでも余裕で、高さ調整ができるため見やすい位置に設置できるはずだ。VESA100対応のスペーサーネジが付属するので、ディスプレーアームを活用するのも1つの手だ。
インターフェースはHDMI 2.0b×2、DisplayPort 1.2a×1、USB Type-C(DP Alt mode)× 1、USB 2.0 Type-A(USBハブ)× 2、USB 2.0 Type-B(PC接続用)×1、ヘッドホン出力×1が備わっている。USB Type-Cは、映像出力と電源供給が可能だが、出力は15Wなので一部のマシンでは充電できないかもしれない。
湾曲した31.5インチのディスプレーは、眼の前に広がるように設置すると、没入感が得られてゲームプレイ時はのめり込めるだろう。残像感や滑らかさをチェックする「Blur Busters」のサイトを表示してみたが、残像感もほとんど感じられずヌルヌルと動くので、これなら敵の動きも見やすいはずだ。
若干気になったのは、左右から見ると湾曲していることも関係して、若干輝度にムラが出る。ただ正面から見ればまったく問題なく色味も非常に発色がいいので、これならクリエイティブな作業に使ってもいいと感じた。作業領域も広いので、写真や動画編集でも作業しやすいはずだ。また、ブルーライト低減も設定できるので、ビジネスライクな使い方でも活用できる。
より高いレベルでプレイするためのディスプレー
MAG 325CQRF-QDの実売価格は6万円前後。これだけの画面サイズで、高い性能と機能、LEDイルミネーションを備え、スイベルはないものの高さとチルト調整可能なことを考えると、十分リーズナブルな価格設定ではないだろうか。
eスポーツで使用するレベルのゲーミングディスプレーとして、より高みを目指す人はもちろん、クリエイティブな作業にも活用したいと考えている人には、オススメしたい製品。ディスプレーはマシンより買い替えるサイクルが長い傾向にあると思うので、ちょっと奮発していい製品を購入するのはいかがだろうか。
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