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ChatGPTブームで急上昇 時価1兆ドルに迫るNVIDIAの今後

ASCII.jp / 2023年6月8日 7時0分

NVIDIA H100

生成AIブーム到来でエヌビディアの株価が上昇

 最近のアメリカ株でエヌビディアのパフォーマンスが際立っている。昨年12月1日終値171.35ドルから直近高値の5月30日終値401.11ドルまで、株価は6ヵ月間で2.3倍になった。

 この株価上昇の原動力となったのが「ChatGPT」の大ブームである。昨年11月30日に公開されたチャットAI「ChatGPT」は、各種の文書、レポート、プログラムコードなどが生成できる。個人が手軽にAIを使える時代が到来したのだ。

 そして、AIになくてはならない半導体メーカーがエヌビディアである。AIを動かすには、まずAIに大量のデータ、文章、画像など、AIが正しい答えを導き出すために必要な素材を学ばせる必要がある。今では人間の脳の働きを真似たディープラーニングという手法を使うが、大量の学習素材を学んだAIは、ユーザーの質問や指示に従って、「推論」、即ち正しいと思われる組み合わせをアプトプットするのである。

 10年以上前までは「ディープラーニング」「推論」ともにCPUで処理していた。ところが、2012年頃に複数の学術論文で、ディープラーニングはCPUよりも画像を高速処理できるGPUのほうが効率的に速く処理できることが明らかになった。これにエヌビディアは飛びついた。既にパソコン用GPUの大手だったエヌビディアはAIの将来性を見通し、それ以降AI専用の高性能GPU開発に注力したのである。

AI用GPUに注力したエヌビディア、株価は10年で約100倍

 AIは、ネット通販、SNS、動画配信サービスのランキングシステム、レコメンデーションシステムや、翻訳、インターネット広告、自動運転などに使われている。

 このような大規模AIシステムは、多くの場合大手クラウドサービス会社(アマゾン・ドット・コムのAWS、マイクロソフトのAzure、アルファベットのGoogle Cloudなど)が運営を請け負っており、データセンターの中にはエヌビディア製GPUを搭載したAIサーバーが大量に設置されている。データセンター用GPUでエヌビディアは90%以上のシェアを持っていると思われる(10%未満がAMD)。

 エヌビディアの業績は、2012年1月期の売上高39.98億ドル、営業利益6.48億ドルから、2022年1月期には売上高269.14億ドル、営業利益100.41億ドルに大きく成長した。データセンター用GPUは2021年1月期から業績を牽引している。株価は2012年1月3日終値の3.22ドル(株式分割、配当調整後)から2021年までの高値である2021年11月29日終値333.35ドル(同)へ約100倍になった。

AIの歴史を変えるか、「H100」登場

 そして登場したのがデータセンター用GPU「H100」(2022年5月発表。2023年1月期3Q出荷開始)である。最新鋭の「H100」は、1世代前の「A100」(2020年5月発表、2021年1月期2Q出荷開始)と比較するとパフォーマンスが6~7倍になる。さらに、従来はCPUが担当してきた「推論」をGPUで十分こなせるくらい推論性能が向上している。

 価格も高く、日本では約471万円(メモリ80GB、税込み)。「A100」は約242万円(メモリ80GB、税込み)だが、円安で実質的に値上げされてきたため(2020年9月の発売時価格が約150万円(メモリ40GB、税込み))、実質的には2倍以上の価格差がある。「H100」と、このGPUを搭載したAIサーバーには大きな注文がきている模様である。

 また、今年後半にはエヌビディア初のCPU「Grace」を発売する予定だが、この「Grace」と「H100」を搭載したチップ「GH200」を256基搭載したAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX GH200」(価格は不明)を今年後半に発売する予定である。

生成AI×H100で業績急拡大へ

 2023年1月期は、パソコン向けGPUが不振で在庫調整に入ったため、業績、株価ともいったん下降した。しかし、パソコン用GPUの在庫調整が進み、2023年1月期3Qに出荷開始した「H100」の寄与で、2024年1月期1Qのデータセンター向け売上高は過去最高となった。この結果、2024年1月期1Qは、売上高71.92億ドル、営業利益21.40億ドルと前年比、前四半期比ともに増収増益となった。

 会社側ガイダンスでは、今2Qは売上高110億ドル、営業利益48.4億ドルと、四半期としては過去最高業績となる見通しである。AMDが「H100」の競合品である「Instinct MI300」を今年後半に発売する予定だが、周辺ソフトウェアの種類などでエヌビディアの優位性は大きく、エヌビディアの市場シェアが大きく落ちることは考えにくい。

 生成AIはユーザーが日常的に使うようになると思われるため、必要なシステム、ネットワークの規模がこれまでのAIシステムよりも数段大きなものになると思われる。このため、データセンター用GPUの需要は今後も大きく増加するだろう。課題は生産能力増強だが、「H100」の生産を請け負っているTSMC(4ナノラインで生産)は生産能力増強に動いていると思われる。

 今後も、波を描きながらになるだろうが、人間社会にAIが必要で、その規模が大きくなる限り、エヌビディアは高成長を続けていくのだろう。

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