【実機体験】Apple Vision Proはメガネユーザーも裸眼のまま快適
ASCII.jp / 2023年6月7日 18時20分
アップルの世界開発者会議「WWDC23」の会場で“空間コンピュータ”「Apple Vision Pro」の実機を体験しました。装着感や映像・サウンドのクオリティなど、筆者のファーストインプレッションをレポートします。
視力に不安がある筆者も裸眼で快適に楽しめた
今回筆者が体験したApple Vision Proのプロトタイプは、デザインは基調講演後に展示されていた実機と同じながら、パフォーマンスはまだチューニングの途中段階にあるという説明を受けたうえで視聴しました。体験中の様子を写真に撮ることができなかったことをあらかじめご了承ください。
筆者はおよそ左が0.1以下、右が0.1と視力が弱いので、いつもメガネをかけて生活しています。よほどの事がない限り、コンタクトレンズは苦手なので着けません。なので、実はゴーグル型のヘッドセットが苦手です。「Apple Vision Proはメガネユーザーにもやさしいデバイスなのか?」筆者が本機を体験するうえで、一番気にしていたポイントはここでした。
結論を言うと、裸眼で使うことが全然苦にならないほど視力調節の機能がよくできていて、快適に楽しめるデバイスでした。
本体を後頭部から固定するヘッドバンドと、遮光パーツの「ライトシール」はユーザーの頭・顔の形状にフィットする複数のサイズから選べます。それぞれに最適なサイズを見つけて、さらにアップルがカール・ツァイスと共同開発した「光学インサート(視力に合わせて作る補正レンズ)」を装着すると、筆者も裸眼のままくっきりと鮮明な4K映像が楽しめました。
コンタクトレンズが着けられる方には、そもそも光学インサートは不要です。Apple Vision Proの「visionOS」は、本体を装着したユーザーの視線をトラッキングしたり、声と手や頭によるジェスチャー操作に対応しています。本体の内側に搭載するLEDと赤外線カメラによる視線追跡システムはコンタクトレンズと干渉するものではないため、安心して長時間使用できるそうです。
長時間使用も気にならない質量
本体の大きさ・重さも多くの方が気になるポイントだと思います。筆者はApple Vision Proの実物を見て、基調講演の動画で見たイメージよりもずっと小さいと感じました。ビデオに登場する女性は、かなり顔・頭が小さい方なのでしょう。
本体を手に持ってみましたが、感覚はAirPods Maxよりもちょっと重いぐらいではないかと思います。バッテリーを外付けとしたことが奏功しています。フィッティングがしっかりとできれば、重さのバランスも偏ることがありません。今回筆者が体験したデモ機は頭頂部に「トップバンド」というパーツを追加して、フィットをさらに安定させることができました。
一点気になるのは、髪の長い方が後ろに髪を結んだままだと装着が難しそうなことです。ヘアスタイルはApple Vision Proに合わせる必要があります。
のめり込む高精細な映像
Apple Vision Proで、様々なコンテンツを視聴しました。ビジュアルコンテンツはアプリを2Dで表示したり、iPhoneで撮影したパノラマ写真をスクリーン全体に広げて表示することもできます。映画「アバター」の“飛び出す立体表示”も高精細です。映画の再生時にシアターモードに切り換えるとスクリーンの周辺が暗くなり、横幅最大100フィート(約33メートル)の巨大な画面が目の前に浮かび上がるように表示されます。
本体のフロント側に搭載するデュアルメインカメラで撮影した「空間再現ビデオ/写真」の表示は、とても鮮明で立体的です。Apple Vision Proは基本的にインドアで使うことを想定したデバイスですが、空間再現ビデオ/写真は本体のカメラでしか撮れないので、これを記録するため外に持ち出す機会も増えそうです。アップルにはiPhoneやiPadと連携するステレオカメラユニットを商品化してほしいです。
アップルオリジナルの「イマーシブビデオ」というコンテンツも体験しました。Apple Vision Proで視聴する動画が、ユーザーの視界全域に広がる没入感豊かなコンテンツです。崖の上から足もとを見下ろしたら、高所恐怖症の筆者は思わず足もとがすくんでしまいました。
実写と見間違うほどリアルな「Persona」
FaceTime通話も体験しました。今回の体験段階ではまだApple Vision Proのカメラで自分を撮影して「Persona」をつくることはできなかったものの、通話相手のPersonaを見ながら話すことができました。肌の質感や顔の動きがとてもリアルなので、Personaの仕組みを知らなければ実写の映像と勘違いしそうです。
映像コンテンツを視聴中に、近くにいる人の姿を確認しながら会話を交わしたい場面ではEyeSightの機能により、会話相手の方に目を向けていると視界が段々とクリアになっていきます。視界は一気に透明にならず、ゆっくりと相手の顔が鮮明にわかるレベルまでクリアになります。目の前を家族が横切っただけで映像が切り替わることはなさそうです。
この時に、Apple Vision Proのフロント側にはあらかじめ取り込んだユーザーの目の部分のPersonaが描画され、相手とのコミュニケーションが取りやすくなるギミックもあるのですが、今回は試すことができていません。あらためて自分のPersonaが作れる機会を楽しみに待ちたいと思います。
内蔵スピーカーが“いい音”だった
4K映像の美しさもさることながら、本体に内蔵するスピーカーの音質が良かったことにも筆者は注目しました。まるで耳に直接装着するヘッドホン・イヤホンで聴いているみたいに力強く鮮明なサウンドです。
でもやはり“完全開放型”なので、周囲にいる人の声は聞こえてきます。また映画や音楽を再生すると、コンテンツの音声は外にも聞こえます。本体のスピーカーをオフにして、Bluetoothで接続したAirPodsに切り換える機能もあると良さそうですが、今回のデモではその可否を確認できていません。今後取材により調べることができたらまた報告したいと思います。
ヘッドマウントスタイルの“空間コンピュータ”は とても魅力的だった
今回は短時間のデモンストレーションの中で、Apple Vision Proを使って視聴できる様々なタイプのコンテンツを体験することができました。その中で筆者が最も圧倒させられたのは、本体のメインカメラが取り込んでディスプレイに表示する実世界の映像が、自分の目で見る風景とほぼ違和感なく見られることでした。Apple Vision Proを装着したまま自分のiPhoneを手に取ってみても、オブジェクトの大きさは実物とほぼ変わりません。カメラが取り込む映像が、ディスプレイに遅延なく表示されるので、席を立って室内を自由に歩き回ることができます。
筆者がもしApple Vision Proを買うことができたら、アップルが提案するヘッドマウントスタイルの“空間コンピュータ”として、日々のビデオカンファレンスによる取材や原稿の執筆にフル稼働させたいと思いました。現在MacやiPhone/iPadによる利用に最適化されたアプリケーションも、本機が搭載するvisionOSに素速く最適化できるプラットフォームも用意されているそうです。
Apple Vision Proは高価なデバイスですが、ビジネスパーソンの働き方を革新するアイテムとしても、発売時から多くの関心を集めるだろうと思います。
筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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