ソニー「Xperia 1 V」は新開発のイメージセンサーで写真や映像の撮影がより快適
ASCII.jp / 2023年6月11日 12時0分
新たなソニーのフラッグシップモデル「Xperia 1 V」は、ソニー独自開発の新しいイメージセンサー「Exmor T for mobile」の搭載により、スマートフォンらしさを維持しながら1インチセンサーに匹敵する性能を実現したカメラ機能が大きな特徴。発売前の試作機をお借りできたので、カメラを中心にその実力を探ってみよう。
滑りにくさ重視で撮影しやすくなったボディー
まずは外観から確認すると、Xperia 1 Vの画面は21:9でディスプレーサイズが6.5型、4K画質でリフレッシュレート120Hzと、前機種「Xperia 1 IV」シリーズを踏襲。サイズと重量も約71×165×約8.3mm、重さ約187gと、前機種の「Xperia 1 IV」(約71×165×約8.2mm、SIMフリーモデルを除き約187g)と、あまり変わってはいない。
とはいえ、デザイン面でまったく違いがないかというとそうではなく、最も大きな違いは背面にある。Xperia 1 Vの背面は見た目のデザインこそ前機種と大きく変わっていないのだが、実際に触れてみるとかなりの違いがある。
その理由は、きめ細やかなテクスチャーが施されたフロスト強化ガラスを採用していること。微小のドットで触感はサラサラというよりザラザラとした印象なのだが、かといって不快感はなく、指紋が付きにくいうえに滑りにくいボディーを実現している。
加えて側面にも筋状の溝があることから、撮影時に端末を片手で持っても滑りにくく、落としにくい。カメラでの撮影にこだわるXperiaシリーズだけあって、より撮影しやすさに重点を置いた配慮には好感が持てる。
その側面のインターフェースを確認すると、右側面に音量キーと指紋センサーを備えた電源キー、そしてXperiaシリーズのハイエンドモデルに欠かせない存在となったシャッターキーを搭載。底面にはUSB Type-C端子、上部には3.5mmのイヤホンジャックが備わっている。
暗所の撮影に非常に強い新イメージセンサー
続いてカメラを確認すると、背面のメインカメラは約4800万画素/F値1.9の広角カメラと、約1200万画素/F値2.2の超広角カメラ、そして約1200万画素/F値2.3~2.8で倍率が可変する望遠カメラの3眼構成。ZEISS T*(ティースター)コーティングが施されている点は過去機種と共通している。
中でも大きく変わったのは広角カメラだ。広角カメラに採用されているイメージセンサーはソニーの新しい「Exmor T for mobile」というもので、センサーサイズ自体もXperia IVの1/1.7型から、1.35型にサイズアップしているのだが、それに加えて「2層トランジスタ画素積層型」であることが大きな特徴となっている。
これは従来、イメージセンサーの1つの画素に並んで備わっていたフォトダイオードとトランジスタを分離して積み重ねる構造にしたもの。それによって双方の容積を増やすことができ、画素が受ける光の量を倍増させられることから暗い場所での撮影により強くなっているのだ。
加えて広角カメラはXperia 1シリーズで初めて画素数が4800万画素となっており、複数の画素を組み合わせて1つにし、明るく撮影できるようにする「ピクセルビニング」も活用。加えてカメラアプリ「Photography Pro」の「BASIC」「AUTO」で撮影する時には画像の重ね合わせ処理が入ることから、暗い場所での撮影においても1インチセンサーに劣らない性能を発揮できるようになっている。
実際に暗い場所での撮影を試してみたのだが、特筆すべきはノイズの少なさ。スマートフォンのカメラで暗い場所を撮影するとどうしてもノイズが乗ってしまうが、Xperia 1 Vの広角カメラでは暗い場所でもノイズがほとんど見られず、非常に綺麗な写りとなっている。
一方でナイトモードを使っても、他社スマートフォンのように暗い所をものすごく明るく写し出す訳ではない。見た目通り暗い状態ながらも、写りの綺麗さに重点が置かれているというのは、写実的表現にこだわるソニーらしいポイントと言える。
またXperia 1 Vのカメラには、従来存在した被写体との距離を図る3D iToFセンサーがなくなっており、その代わりにAI技術によって被写体との距離を推定し、フォーカスを合わせる仕組みとなっている。3D iToFセンサーでは被写体が遠くや端にある、あるいは色が黒い場合などにフォーカスを合わせるのを苦手としていたが、それをAI処理に変えることで全体にフォーカスを合わせやすくなったようだ。
動画撮影関連の機能も強化 縦画面撮影もしやすく
加えて「Photography Pro」、そして動画撮影の「Videography Pro」には新たに「S-Cinetone for mobile」が追加されている。これはソニーのプロ向け映像制作カメラやデジタル一眼レフカメラなどに搭載されいている機能を、スマートフォン向けに調整して投入したもので、人の肌の質感を自然に映し出す画作りに特徴がある。
Photography ProやVideography Proには6つのクリエイティブルックが搭載されており、撮影時に好みのものを選ぶことができる。メインカメラだけでなくフロントカメラで撮影する時にも活用できるので、本格的な映像撮影だけでなく、VLogやセルフィーの撮影などにも役立てられるだろう。
他にも動画関連の機能強化が図られており、商品にフォーカスを当てる「商品レビュー用設定」や、背面のカメラ部分にもマイクが追加され、撮影時の音声をより鮮明に録音できるようになった。
だが、よりうれしいと感じる人が多いのは、「Photography Pro」「Videography Pro」のインターフェースが縦画面で使えるようになったことではないだろうか。最近ではスマートフォンで視聴しやすい縦画面動画を使う機会が増えているだけに、縦画面でもプロ級のクオリティーで撮影しやすいことは大きなメリットだ。
ちなみにフロントカメラは約1200万画素/F値2.0と、従来と大きな違いはない。とはいえ縦画面で撮影しやすくなったので、VLogなどにはより活用しやすくなったといえそうだ。
基本性能は非常に高くゲームでプレイも満足
基本性能を確認すると、Xperia 1 Vはチップセットにクアルコム製のハイエンド向けとなる最新の「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載しており、キャリア各社向けのモデルはメモリー12GB、ストレージ256GB、SIMフリーモデルはメモリー16GB/ストレージ512GBとなる。現行のハイエンドモデルとしてはスタンダードだが性能は非常に高く、それに加えてmicroSDで1TBまでのストレージ追加ができるのというのも、映像に力を入れているXperia 1 Vでは大きなポイントといえる。
試作機ということもありベンチマークを取ることはできなかったことからゲームで性能を確認すると、「PUBG MOBILE」のグラフィック設定はクオリティーが「FHD」でフレーム設定が「ウルトラ」まで。「原神」のグラフィック設定は初期状態で「中」だが、「最高」かつフレームレートを60、モーションブラーを「非常に高い」にするなど最上位の設定でプレイしても、よほどのことがない処理落ちなどが起きることはなかった。
それゆえ性能面では文句なしといえるのだが、発熱はどうか。原神を1時間ほどプレイして表面の温度を測ってみたのだが、前面は45度、背面は43度以下という状況であった。熱いとは感じるがプレイに支障が出るほどではなく、熱によるパフォーマンス低下も感じられなかった。
さらに言えばXperia 1 Vは、ゲームの冷却を強化したり、出力を増やしたりできる「Xperia Stream」にも対応している。ゲームにこだわるなら、そちらを使うことでより冷却効果を高められるだろう。
またゲームプレイ中に利用できる「Game enhancer」にも進化ポイントがいくつかあり、中でも多くの人が恩恵を得られそうなのが、シャッターキーを押してスクリーンショットを撮影できるようになったこと。これを利用するにはGame enhancerの「HWBショートカット」の設定から「クイックスクリーンショット」を選べばよく、ゲーム中に最適なタイミングでスクリーンショットを撮影しやすくなることから有効活用したい。
なおバッテリーは5000mAhと、現行のハイエンドモデルとしては一般的だが大容量。急速充電だけでなくワイヤレス充電や、バッテリーの負荷を抑えながら充電する「いたわり充電」にも対応するのも従来モデルと同様だ。
最後に通信に関してだが、Xperia 1 Vは物理SIM(nanoSIM)とeSIMのデュアルSIM機構で、5Gにも対応するが携帯各社向けのモデルとSIMフリーモデルとでミリ波への対応が異なる。SIMフリーモデルはメモリーやストレージが多い一方、ミリ波には対応していないので通信性能に期待する人は注意しよう。
【まとめ】値段は高いが写真や映像にこだわる人に最適
ここ最近、ハイエンドスマートフォンはイメージセンサーの性能向上が著しい一方、本体サイズが大型化しており、それが主に厚みとなって本体のデザインに影響を及ぼすことが増えていた。それだけに、新しいイメージセンサーの搭載でスマートフォンに無理なく収まり、しかもフルサイズのセンサーに匹敵する性能を実現したXperia 1 Vのカメラには驚きがある。
一方で値段は19万円程度と非常に高く、購入する人はやはりカメラの画質や使い勝手にこだわるプロ、セミプロやVLoggerなどに限られるだろうが、縦画面での撮影対応などにより使い勝手は向上しており、満足度は確実に高まっている。映像や写真にこだわる人なら購入を検討する価値はあるだろう。
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