超見た目重視のライトアップ極振りゲーミングPC、13900K&RTX 4070 Ti構成の実力は?
ASCII.jp / 2023年6月10日 11時0分
BTOパソコンの構成は自作PCに近いということもあり、個性や趣味性の強いモデルが少なくない。サイコムの「G-Master Luminous RGB Z790/D4」もその1つで、発光するPCパーツをふんだんに採用したド派手なライトアップPCだ。
本機はマザーボードやビデオカード、PCケースファンはもちろんのこと、メモリーや電源延長ケーブル、PCケースまで光る。一般的に、これだけ発光PCパーツを盛り込めば、ケーブルの配線はかなり複雑になる。そんな苦労をメーカーに丸投げして手に入るという観点で見れば、かなり魅力的なモデルと言えよう。
見た目重視のモデルだけに性能が心配
では、そんなG-Master Luminous RGB Z790/D4の性能はどうなのか? 本機は見栄えを重視しているだけに、やや不安がある点もある。例えば、第13世代のCore i7やCore i9といった高性能CPUを搭載しているのに、簡易水冷クーラーのラジエーターは120mmだったり、上部の3連ファンはすべて排気で、吸気ファンが1つも搭載されていない。
前回は構成や各PCパーツの特徴を紹介したが、今回は定番のベンチマークソフトを使ってその疑問を深掘りしていこう。
UEFIの設定でCPU動作に制限アリ
試用機材のCPUは第13世代インテルCoreプロセッサーの最上位、Core i9-13900K(24コア/32スレッド、最大5.8GHz)。ベースパワーは125W、最大ターボパワーは253Wのため、いくら簡易水冷クーラーとはいえ、120mmラジエーターでは最大負荷時の冷却能力に不安が残る。
とはいえ、電力制限をかけて動作クロックの上昇を抑え、過度な発熱が起こらないようにすれば安定運用できることもある。もちろん、放っておいてもサーマルスロットリングで自動的に動作クロックは下がる。しかし、これはあくまで緊急避難的な機能であり、常用するようなものではない。
G-Master Luminous RGB Z790/D4ではどういった設定になっているのか見るため、モニタリングツール「HWiNFO64 Pro」を使って調べてみた。驚いたことに、通常の電力上限となるPL1は253Wだったが、短時間の電力上限となるPL2は4095Wと事実上の無制限設定になっていた。
しかし、高負荷をかけてみたところ、実際の消費電力(CPU Package Power)は113W前後までしか上昇しなかった。サーマルスロットリングで抑制されているのかと思いきや、CPUパッケージ温度(CPU Package)は70度にも届いておらず、まだ余裕がある状況だった。
そこで、UEFIの設定をチェック。CPUの動作に関わる項目を見たところ、PL1/PL2の設定ではなく、「CPU Core/Cache Current Limit Max.」という設定が160Aに制限されていた。
PL1は長期的、PL2は短期的な電力制限になるが、この設定は常時影響のある電流制限となる。いくらPL1/PL2の設定を高くしても電流制限がかかっているため、そこまで消費電力が上昇しないわけだ。
試しにCPU Core/Cache Current Limit Max.の設定を「Auto」に変更して高負荷をかけてみたところ、CPU Package Powerは最大で245W近くまで上昇したので、この設定でしっかり制限できているということが確認できた。
ちなみに、Auto設定時のCPUパッケージ温度は101度。サーマルスロットリングが発動しているため、常用するような状態ではない。それだけに、サイコムの電流制限設定は妥当だろう。
フルスレッド動作の最大性能は落ちる?
さて、この制限のかかった標準設定で性能を見てみよう。まずはCPUの地力を計測するため、「CINEBENCH R23」を試してみた。このベンチマークソフトはCGレンダリング速度からCPU性能を測るもの。結果は「pts」という独自単位のスコアーで表示され、この値が高ければ高いほど高性能なCPUとなる。
なお、CGレンダリングはマルチスレッド処理向きの作業のため、コア/スレッド数が多ければ多いほど性能が高くなる。また、動作クロックに比例して性能が上がる傾向も強い。つまり、CPUの最大性能を見るには最適なベンチマークだ。テストはすべてのコア/スレッドを使用する「Multi Core」と、1つのコアだけを使用する「Single Core」の2種類。テスト時間はデフォルトの約10分間とした。
結果はMulti Coreが26719ptsでSingle Coreが2275pts。Core i9-13900Kは電流制限がなく、冷却性能に問題がない状況であれば、38000pts台まで伸びる。つまり、電流制限によってかなり性能が抑えられている状態と言える。
ただし、Single Coreのスコアーは、電流制限がない状態と比べても遜色ない。つまり、CGレンダリングや写真・動画編集といった、マルチスレッドでCPUパワーをゴリゴリ使うといった用途では性能が発揮できないものの、それ以外の用途ではストレスのないキビキビとした動作が期待できるだろう。
ちなみに、Multi Coreテスト中のCPUパッケージ温度は最大69度と低めだったので、電流制限設定をAutoしてMulti Coreテストを実行してみると33000pts弱と大幅に伸びた。しかし、CPUパッケージ温度は早々に100度を超えたので、電力制限を緩めるにしても高負荷時の温度と相談しながら少しずつ調整しよう。
一般用途ならなんら問題がない性能
G-Master Luminous RGB Z790/D4はあらかじめ電流を制限しておくことで、最大負荷時のCPU温度を調整していることがわかった。となると、負荷が低い一般用途ではそれほど性能は落ちないと予想できる。
そこで、総合ベンチマークソフトの「PCMark 10」を使い、各テスト項目からその傾向を簡単に読み取ってみよう。まずはデフォルトの設定、160Aの電流制限がある場合のテスト結果だ。
総合スコアーは9052と非常に優秀な成績だ。ただし、動作クロック(紫色の折れ線グラフ)をよく見てみると、「Web Browsing」と「Photo Editing」、「Rendering and Visualization」でやや下がっている部分がある。
そこで、電流制限をAutoにしてみると、動作クロックの落ち込みが減ってスコアーが上がった。高クロックで安定させるためには、電流は高いほうがいいのだろう。
とはいえ、総合スコアーは9480で上昇率は約5%。CINEBENCH R23のMulti Coreテスト(約23%アップ)と比べると影響はだいぶ少ないことがわかった。
サブスコアーも全体的に上昇していたが、最も大きく変化したテストグループはやはり動画や写真編集、レンダリングといったクリエイティブ用途のDigital Content Creationで約9%アップ。こういった用途で使いたいのであれば、電流制限は少し緩めたほうが満足できるだろう。
超重要なゲーミングPCとしての性能は?
ゲームもCPU性能は重要なものの、そこまで負荷がかからない用途の代表格だ。マルチスレッドに対応したタイトルでも、フルスレッドに負荷がかかる状況はほぼない。そのため、ゲーミング性能はある一定のコア数より上になると、動作クロックのほうが大切になる。 また、ゲームにおいてはCPUよりも圧倒的にGPUのほうが性能への影響が大きい。今回の試用機材はGeForce RTX 4070 Tiを搭載したビデオカードなので、その時点でかなり高性能と言える。
試したソフトは「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FF15ベンチマーク)。解像度は4K(3840×2160ドット)、画質はプリセットの最大となる「高品質」に設定した。こちらも標準設定の160A制限とAuto設定、それぞれでどのくらい変わるのか見てみよう。
電流制限がある場合は9009スコアー、Autoの場合は8966スコアー。評価は「とても快適」と「快適」に分かれたが、数値はほぼ誤差の範囲だ。つまり、4K設定ではビデオカードの負荷が高く、CPUはあまりボトルネックにならないと見ていい。そこで、WQHD(2560×1440ドット)やフルHD(1920×1080ドット)でも試してみた。
4Kではほぼ同じだったスコアーがWQHD、フルHDと解像度が落ちていくほど開いていた。解像度が低くなれば、それだけビデオカードの負荷が下がり、CPUの性能差が可視化されていくわけだ。
では、FF15の場合、その性能差で大きくゲーム体験が変わるのかと言えば、そうでもない。電流制限がある場合とない場合でも評価は変わらず、WQHDとフルHDではどちらも「非常に快適」となった。
3DMarkでも優秀な成績
せっかくなので定番ベンチマークソフト「3DMark」の結果も見てみよう。
Speed Wayテストは3DMarkの中でも新しいテストで、DirectX 12 Ultimateに対応している。リアルタイムのレイトレーシング、グローバルイルミネーションなどが扱われるため、かなりビデオカードへの負荷が高く、最新世代の高性能GPUじゃないと厳しい評価になる。
CPUに電流制限がかかっているにもかかわらず、スコアーは5414とそのハンデはまったく感じない結果だった。やはりCPUにフルで負荷がかかるような状況でなければ、電力制限はあまり性能に影響しないということなのだろう。ほかのテスト結果もグラフにまとめておいたので、性能比較の参考にしてほしい。
ストレージも十分満足のいく速度
ストレージの標準構成はCrucial製M.2 SSD「P5 Plus」の1TBモデルだが、今回の構成では同じシリーズの2TBモデルを搭載。公称速度はシーケンシャルリードで6600MB/s、シーケンシャルライトが5000MB/sと、PCIe 4.0×4接続のSSDとしては平均的な性能だ。
「CrystalDiskMark 8.0.4」で計測したところ、シーケンシャルリードは約6638MB/s、シーケンシャルライトは約5132MB/sと、公称値を若干上回った。この速度ならまず困るシーンはないだろう。また、近年は大容量のゲームタイトルが多い。多くのゲームを並行して楽しみたい人は、2TBモデル(標準構成に+1万560円)を選んでおいたほうがいいかもしれない。
まとめ:ゲームや一般用途なら13900Kでもアリ
今のところ、G-Master Luminous RGB Z790/D4のCPUクーラーも選択肢は、120mmと小さめのラジエーターの簡易水冷モデルしかない。そのため、今回の試用機材のようにCore i9-13900Kを選択すると、どうしても最大負荷時は冷やしきれない。
そこで、サイコムは電流制限を設けて安定動作を実現し、ゲームを含めた一般用途では十分な性能を引き出せるように調整しているわけだ。そして、常時CPUに最大負荷をかけて運用する人はそう多くはない。この現実的な事情を踏まえた、絶妙なセッティングがいかにも同社らしいさじ加減と言える。
とはいえ、せっかくのCore i9-13900Kがフル活用できないとなると、少々もったいない気がする人なら、標準構成のCore i7-13700Kもオススメだ。Core i9-13900Kよりも温度上昇は穏やかになるので、ポテンシャルに近い運用ができるだろう。
また、本機の本懐はスペックではなく、類を見ないその外観だが、ゲーミングPCとして最前線で戦える実力があることは間違いない。思わず目を奪われるような超個性的なPCが欲しいのであれば、チェックしてみてほしい。
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