アマゾン「Audible」が村上春樹作品や「聴くアニメ」など大型配信コンテンツを発表
ASCII.jp / 2023年6月15日 11時30分
アマゾンのオーディオブックサービス「Audible(オーディブル)」は6月14日、オーディオブックなど今後の配信コンテンツについての発表会を開催。豪華俳優陣による村上春樹作品、湊かなえ作品の配信や、人気作家のオーディオファースト作品、マーベルとコラボレーションしたオーディオエンタテインメント作品の日本語版の制作などを発表した。
聴き放題へ移行後、会員数・聴取時間が右肩上がりに
グローバルでは180ヵ国、数百万規模のユーザーを抱えるAudible。47の言語で楽しまれていて、2022年のトータル聴取時間は40億時間にも上るという。国内では2022年1月から、月額1500円で聴き放題のサブスクリプション型サービスへ移行。現在12万タイトル以上の作品が聴き放題となっている。
会員数は2023年5月時点でサービス移行前から67%増加。月間聴取時間も260%まで伸びていると、Audible カントリーマネージャーの逢阪志麻氏。引き続きコンテンツの拡充に注力していく計画で、シニアディレクター コンテンツの宮川もとみ氏から、オーディオブック、オーディオファースト作品、ポッドキャスト、オーディオエンターテインメントの各ジャンルで、新作が配信されることが発表された。
まずオーディオブックでは、「ノルウェイの森」から初期から最新の短編集まで、村上春樹氏の著書7作品が配信される。配信作品と朗読は以下の通り。
「猫を棄てる父親について語るとき」中井貴一さん 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」向井理さん 「カンガルー日和」多部未華子さん 「パン屋再襲来」柳楽優弥さん 「ノルウェイの森」妻夫木聡さん 「レキシントンの幽霊」門脇麦さん、滝藤賢一さん 「女のいない男たち」市原隼人さん
湊かなえ氏の著書5作品も配信される。映像化も多い湊かなえ作品だが、そのドラマの主演俳優陣の朗読に期待も高まる。配信作品と朗読は以下の通り。
「贖罪」小池栄子さん 「Nのために」榮倉奈々さん 「境遇」松雪泰子さん 「リバース」藤原竜也さん 「未来」のんさん
オーディオブックを配信後に、書籍が出版されるオーディオファースト作品では、出版社の協力のもと5人の著書による新作が配信される。うち古内一絵氏の「百年の子」は、石田ひかりさんの朗読ですでに配信中。汐見夏衛氏の「さよならごはんを今夜も君と」は河合優実さん、諏訪珠理さんの朗読で近日配信予定だ。
ポッドキャストでは、ラジオ局とのコラボレーションによる「加藤浩次と山口一郎のとんぼとサカナ プロデュース by 佐久間宣行」、「SAYONARAシティボーイズ」のほか、トムス・エンタテインメントの協力のもと、アニメの声優陣がそのまま参加する聴くアニメ「LUPIN THE ⅢRD」にも挑戦。前田健太さん、遠藤航さん、角田裕毅さんらトップアスリートに迫る「Athletes’ Mind~アスリーツ・マインド~」、人気ポッドキャスト「ゆかいな知性」の新シーズンのスタート、VOOXとのコラボレーションによる新番組「知の探検「この人」と60分」も配信される。
またオーディオエンターテインメントでは、マーベルとの大型コラボレーション作品「Marvel’s・ウェイストランダーズ」の制作も発表。シーズン1「Marvel’s・ウェイストランダーズ:スターロード」は古田新太さんら俳優、声優陣が参加し、全10エピソードが配信される。2024年までにシーズン6まで順次配信予定だ。
日本の作品を世界へ 良質なオリジナル作品にこだわってビジネスを拡大
CMなどでのプロモーションを強化してきたこともあり、順調に会員数を伸ばしているAudible。逢阪氏によれば、会員1人あたりの聴取時間も長くなっているという。会員1人が1ヵ月に新たに触れたタイトル数は、聴き放題への移行前は1冊程度だったが、現在は4冊に増えているとのこと。また支持されるコンテンツのジャンルにも変化があり、移行前は「自己啓発・人間関係・子育て」のコンテンツが人気だったが、現在は「文学・フィクション」が大きく増加しているという。
「聴き放題になったので聴く時間が増えるのは当然ですが、ぞれがずっと伸び続けている。ジャンル的に文学・フィクションが伸びているのも、一度聴いてみてこれはおもしろいとなり、あれもこれもとなっているのだと思います」と逢阪氏。またユーザーの層も、女性や学生、シニアと広がっているという。
「中心は20代から40代の男女ですが、聴き放題になってからは若い人も増えているので、マーベルのようなエンタメ作品を強化して、反応を見ていきたいと思ってます。一方で目が疲れるなどの理由で、本が読みづらくなっているシニアの方にも、Audibleでまた本を楽しめるようになったという、うれしい声をいただいています」
ユーザーの広がりが、コンテンツへのさらなる投資を後押ししていると逢阪氏。目指すのは良質なコンテンツの拡充でユーザー満足度を上げ、さらなる利用時間の増加へとつながる好循環だ。
「そのためにも、本屋さんで並んでるようなベストセラー本が、いち早く聴けるような体制を整えていきたい。オーディオブックだけでなく、企画としてのオーディオファーストの作品だったり、もうちょっと気軽に聞けるポッドキャストだったり。この三本柱で引き続き、皆さんが聴きたいと思うような作品を提供できるよう、努力していきたい」と言う。
より良いコンテンツを目指して、著者や出版社にはスタジオ収録に参加してもらうなど、時間をかけて信頼関係を築いてきたと逢阪氏。実際に発表会に寄せられた、湊かなえ氏の「紙の本で読んでほしいと思っていたが、収録を見学したり、作品を聴くとまったく違うもの。聴くと読みたくなるし、どちらも試したくなる。すごくいい関係なんじゃないかと思った」というコメントは印象的だった。
「著者さん、出版社さんに賛同していただけているのは、本当にありがたいこと。Audibleがローンチした2015年から、パートナーとして関係を作り上げてきたことが、今につながっています。一方で日本の作家さんの素晴らしい作品をグローバルに展開できるのもAudibleならではの強味。そこは大事にしていきたいですし、著者さん、出版社さんにも評価いただいているところだと思っています。日本から世界へ、オーディオコンテンツのポテンシャルをどこまで広げられるかというチャレンジを、一緒に楽しんでいただけているのではないかと思います」
パートナーの協力のもと、コンテンツには今後も投資を続けていくと逢阪氏。同時にAudibleを知ってもらうための活動にも、注力していきたいと話していた。
「昨年の流行語大賞の候補に『オーディオブック』が入るなど、オーディオコンテンツは今ようやく成長期に入ってきたところ。まだオーディオブックって何? Audibleってどうやって聞くの? というお客様も多いので、そこは引き続き努力していきたい。一方で、一度聴いて面白いと思ってもらえれば、これ知ってる?という風に広がっていくはずなので、そんな風に皆さんがほかの人に薦めたいと思える、サービスにしていきたいと考えています」
筆者紹介――太田百合子 テックライター。身近なデジタル製品とそれら通じて利用できるサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。
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