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ついにLE Audioに対応したLinkBuds Sの音を聴く、低遅延には魅力あり

ASCII.jp / 2023年6月18日 17時0分

 ソニーの「LinkBuds S」のファームウェア(Ver.3.0.5)がアップデートし、LE Audio対応になった。このLinkBuds Sを「Xperia 1IV」との組み合わせで試用する機会を得たのでレポートする。

LinkBuds SをLE Audioでテスト
LinkBuds SとXperia 1 IV

 なお、LE Audioでは基本仕様自体の変更があるため、イヤホン・スマホともにBluetooth5.2以上の対応が必要となる。伝送方式が根本的に異なるアイソクロナス伝送をするためでもある。アイソクロナス伝送では音声データを一定間隔で伝送するため、バッファが小さくて済み、結果として低遅延になる。また、LE Audioではこれまでの標準コーデックだったSBCに代わり、LC3という高品質コーデックが用意されている。

まずはLDAC接続で基本的な音調を確認

 簡単に機材の紹介をしておく。Xperia 1 IVは、Xperiaシリーズのフラッグシップであり、ペリスコープレンズを搭載しているためか、いささか大きめで細長い形をしている。しかし手に持ってみると持ちにくさは感じず、自然にスマホの端まで指が伸ばせる様に感じた。私は普段、「iPhone 12 Pro」を使用しているのだが、Xperia 1 IVの造形は日本人の手に合っていると感じた。仕上げもなかなか高級感がある。

 LinkBuds Sはとてもコンパクトで耳に入れやすいのが特徴だ。ANCの効きも良い。音質を確かめるためにXperia 1 IVに「Apple Music」アプリをインストールし、接続のためにソニー「Headphones connect」アプリをインストールした。また遅延のテストをするためにGoogle Playストアからピアノアプリ「Mini Piano lite」を入手し、インストールしている。デジタル処理は省きたかったのでDSEEはオフにしている。

 LinkBuds Sに大きめのイヤーピースを装着して聴いてみたが、低音がやや多すぎる感じがしたので、「Headphones Connect」のイヤーピース装着テストをしながら耳に入る最小サイズのイヤーピースを選んだ。低音が多いと中高音域に曇りを感じてしまう。そのためまず適度なサイズのイヤーピースを見つけることが「LinkBuds S」を使うコツだと思う。

 音のバランスの良いところを見つけると、再生音はぐんと向上する。高音域もきれいで、低音のウッドベースのピチカートの歯切れもよくスピード感もある。多少抑えても低音はたっぷりと出るので、ロックやポップにはなかなか良い迫力が楽しめる。ヴォーカルも明瞭感が高く、音がきつすぎないので気持ちが良い。よく効くANCが搭載されて、この音質ならば普及クラスとしてはなかなか良い選択になるだろう。

 はじめは接続性優先で聞いていたのでAACがコーデックとして選ばれていたが、「Headphones connect」アプリで音質優先に切り替えると、コーデックがLDACに変わり、音質が向上して、特に声がより鮮明に聞こえる様になる。

LinkBuds SをLE Audioでテスト
楽器アプリをBluetoothイヤホンと一緒に使用すると遅延が発生する旨の警告が出る。

 アップデートする前にピアノアプリも試してみた。「Bluetooth接続では遅延が生じます」という警告画面が出るが、たしかにAACコーデックでは、やはり遅延を感じる。素人としてはちょっと遅れる感じだが、ミュージシャンはかなり気になると思う。

LDACの音質には届かないが、低遅延は魅力的

 LinkBuds SのアップデートにはHeadphones Connectを使用する。Xperia 1 IVは、既にAndroid 13をインストールした状態で使用した。Androidの開発者モードでBluetoothコーデックを確認すると、グレーアウトされているがLC3が実装されていることを確認できた。LinkBuds Sを接続すると「最新ソフトウエアを転送中です」と表示がなされる。これは数十分ほど時間がかかる。転送が終わるとアップデートを促される。このアップデートは数分程度で済む。

LinkBuds SをLE Audioでテスト
LE Audio切り替え前の状態。AAC接続/ファーム転送時
LinkBuds SをLE Audioでテスト
2 LE Audio切り替え前の開発者モート

 LE Audio接続に変更するにはHeadphones Connectの「システム」タブからLE Audio優先の設定をする。再ペアリングする旨のダイアログが出るので、Bluetoothの接続機器情報を削除して、再度ペアリングをする。ちなみに、LE Audioで接続している間は、LDAC再生、マルチペアリング(2台の機器との同時接続)、音声アシスタント、「サービス」タブの機能が使えなくなるので注意が必要だ。

LinkBuds SをLE Audioでテスト
LE Audio設定項目
LinkBuds SをLE Audioでテスト
LE Audio切り替え表示
LinkBuds SをLE Audioでテスト
LE Audioに切り替える際の警告
LinkBuds SをLE Audioでテスト
LE Audioに切り替えた後の画面

 再度ペアリングをして、再びHeadphones Connectを立ち上げると、画面にLE Audioの文字とLC3の文字が表示される。いままで長い間フォローしてきたLE Audioが、この瞬間にようやく使えることになったと確認できたわけだ。

 LC3の音をしばらく聴き込むと、AACの時と比べて、音の明瞭感が上がってクリアな感じになる様に感じた。ピアノの響きがより鮮明になり、アコースティク楽器の明瞭感が向上する感覚だ。ただし、ビットレートなどは比較できないが、劇的なほどの違いはなかった。また、Classic Audio(Bluetooth Classic)の設定に戻して、AACの音を再確認するとLC3よりもやや薄く軽く感じられる。

 同様にLDACとLC3を比較すると、LDACの方が声や楽器音はより鮮明に聞こえるように思う。直接AB比較はできないので何回かClassic Audioと切り替えて確かめてみたが、音質的にはAAC

 遅延(レイテンシー)の改善を確認するために、ピアノアプリで打鍵してみた。タッチした後に音が出るまでの間隔はだいぶ小さくなる感じがした。また、Classic Audioで少し試してからLE Audioに変えると画面をタッチする前に音が鳴る感覚さえある。私みたいな素人でもかなり遅延が小さくなった感じはする。こうして一通り試してみると、LDACが使用できるXperia 1 IVユーザーのメリットは音質向上というよりも、低遅延化による恩恵の方かもしれない。

追記: LE Audioでの再生時間については、LinkBuds SとLC3の例としてソニーのサイトで公開されています。 https://helpguide.sony.net/mdr/linkbudss/v1/ja/contents/TP1000536104.html

 こうしてワイヤレスオーディオの歴史のまた新しい1ページがめくられた。LE AudioにはAuracastという兄弟もいる。Auracastは、MWCに続いてCOMPUTEXでデモが開催されるなど確実に進展している様なので、引き続き進展をチェックしていきたいと思う。

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