Ryzen Pro 7000シリーズを発表、Ryzen AIはWindows 11で対応済み AMD CPUロードマップ
ASCII.jp / 2023年6月19日 12時0分
AMDは6月13日にData Center and AI Technologyというイベントを開催したが、この話は来週することにして、その6月13日と翌14日にAMDはクライアントCPUでいくつかアップデートを行なったので、今回はそのCPUの話をしたい。
Ryzen Pro 7000シリーズを発表
まずはZen 4世代のRyzen Proである。要するにビジネス向けプロセッサーで、コンシューマー向けではない。もともとRyzen Proシリーズは、コンシューマー向けのRyzenから第1四半期前後程度の間をおいて投入されてきており、そこから考えるとこれまでZen 4ベースのRyzen Proが投入されてこなかったのはけっこう遅いというべきなのかもしれない。
もっともこのあたりは少し事情が複雑で、Zen 3世代の場合デスクトップ向けは以下のようになっており、VermeerベースのRyzen Proは実に1年7ヵ月遅れにもなっている。
初代のZenの時にはそもそもAPUがないということもあってSummit Ridgeしか選択肢がなかったが、本来ビジネス・デスクトップはGPU統合が強く求められる市場であり、Zen 2世代でモバイル向けコアを利用したAPUが投入されるようになったことで、APUとCPUの2本立てとなると、APUが先に投入されることになった。
特にZen 3世代ではRyzen 5000Gの性能がそれなりに高かったこともあって、Ryzen Pro 5000Gが先行して投入。Ryzen Pro 5000の投入が遅かったのも仕方ないところである。
ただZen 4世代になりデスクトップ向けもGPUを搭載するようになったので、実際はもう少し早めの投入になるか? と思ったのだが、意外に時間がかかった格好だ。
さて、今回発表のRyzen Pro 7000シリーズはモバイル向けが6製品、デスクトップ向けが3製品となっている。
モバイル向けの場合、現状以下のように非常に複雑なラインナップになっているのだが、Pro向けには最新のPhoenixを利用したRyzen 7040のみがラインナップされる格好である(*1)。
もっともこの市場でもっとインテルからシェアを奪いたいAMDからすれば、一番競争力のあるPhoenixコアをぶつけるのが当然であって、またビジネス向けではむやみにラインナップを増やすよりも整理した製品展開にした方がシェアの獲得には効果的と判断したのだろう。
(*1)Ryzen 7040以外にRyzen Pro 7030Uという製品があることが判明しているが、これは後述。
一方のデスクトップ向けであるが、こちらは基本的にスモール・フォームファクターに利用されることが多いので、コンシューマー向けの105W/170WのSKUは不向きであり、65WのSKUで統一したとしている。
実はこれに関して、COMPUTEXの折にAMDのDavid McAfee氏(CVP&GM, Client Channel Business)に「どうせなら(インテルのT-SKUと同じように)35Wのラインナップを用意すればよりスモール・フォームファクターに向いているのでは?」と水を向けてみたのだが、「APUの中でもGEモデルはすでに35Wを提供している。ただ確かに今のところ(AM5では)そうした用意はない。特に日本などではそうしたニーズが高いことは理解している」としたものの、少なくとも現時点では35Wモデルを提供するプランとして公開できるものはない、とのこと。少し残念ではある。
そのデスクトップ向けで、ややおもしろいデータが出てきた。下の画像は2023~2026年のビジネス・デスクトップのTAM(獲得できる可能性のある市場規模)の推定で、今年は4770万台ほどだが、2026年にはこれが5100万台程度まで伸びるとしている。
AMDとしてはこの分をきちんと取り込むことで、このところ悪化している同社のPC事業の立て直しにつなげたいと考えているようだ。
Ryzen ProとRyzenの違いは AMD Proの有無
ところで今回発表の合計9製品のコンシューマー向けとの違いはAMD Proの有無である。ただAMD Proそのものに関しては特に従来からの大きな変更はない。
もちろんZen 3からZen 4になったことで、例えばメモリー暗号化のキーをより多く持てるようになったり、暗号化にAES-256を利用可能になったりなどの拡張があり、これは今回のRyzen Proでもそのまま引き継がれているが、これらは内部的なものであり、外部(例えばAMD Proセキュリティを利用する管理ソフトウェアなど)から見ると違いはないという話であった。
また「将来的には」AIを利用したセキュリティ対応なども考えているようだが、少なくとも現時点では具体的になにかが実装されている、という話ではないとのこと。
現状ではAIアクセラレーターを搭載しているのはモバイル向けのRyzen Pro 7040シリーズだけで、Ryzen Pro 7000シリーズは未搭載なので、実装の準備を始めるには適切であっても実装してそれを公開するにはまだ不向きだろう。
Ryzen 7040シリーズのAIエンジン「Ryzen AI」は すでにWindows 11に対応済み
話のついでにRyzen AIについて。Ryzen 7040シリーズには専用のAIアクセラレーターであるRyzen AIが搭載されるが、このRyzen AIの正体はもともとXilinxがVersal ACAPシリーズのうち、Versal AI Core/Versal AI Edgeで搭載したAI エンジンと呼ばれるものである。
このAIエンジンの詳細は連載674回で説明したとおりだが、今回ちょうどビジネス・クライアントの説明があった折に確認したところ、Ryzen AIとして搭載されているものはVersal AI Edgeと同じ第2世代のAIエンジンとのことだった。
それはともかくとして、すでにWindows 11がこのRyzen AIに対応していることが今回説明された。
今年1月の発表時、まだソフトウェアスタックは不十分であり、モデルも少なかったが、現在はソフトウェアスタックもそろい、またWindows MLから呼び出して使うことも可能になったとしている。
Windows MLで思い出したのだが、「Windows MLがRyzen AIで動作するということは、つまりRyzen AIを使ってXeSSが実行できるということか?」と確認したところ「技術的には可能なはずだが、実際にゲームでそれが可能かどうかはゲーム側の実装による」という返事が返ってきた。一度試してみたいものである。
Ryzen Pro 7000シリーズ搭載製品が早くも登場
話を戻すと、今回Ryzen Pro 7040Uを搭載する製品としてHP/Lenovoの製品が4種類づつラインナップされている。
もっともこれ仔細に見てみると、Ryzen Pro 7040を搭載しているのは比較的ハイエンドで、例えばHPのEliteBook 645/655 G10やLenovoのThinkPad L13/L13Y/L14/L15とThinkPad E14/E16にはRyzen Pro 7030シリーズが搭載されているのがわかる。
これは別に誤植ではなく、例えばLenovoのThinkPad L14 Gen4 AMDを見てみるとRyzen 5 PRO 7530U 2.00GHzが搭載されていると明記されている。先に書いたようにこれはBarcelo-R(Barcelo-Refresh)だが、これはもともと連載664回で説明したようにRyzen Pro 5000 Uシリーズのリブランド品である。
Ryzen 5 7530Uのスペックから判断すると、Ryzen 5 Pro 5675Uの動作周波数変更版というあたりだろうか。Ryzen Pro 5000シリーズの時点ですでにPro対応が完了しているから、そのままラインナップに加えているということだろう(それを公式に発表していないあたりがアレだが)。
一方Ryzen Pro 7040 HSシリーズの方はHPが2製品を追加するとしている。
ただ気になったのがDellの名前がないことだ。なので「Dellは?」と確認したところ、「確かに現在のラインナップにはないが、SMB向けにVostroで採用されているし、ここ第2四半期で言えばPrecision 7865をちょうど発表したばかりだ。今後に期待してほしい」という返事が返ってきた。
以上のように、6月13日にはRyzen Proの新製品が発表されたわけだが、翌6月14日に発表されたのがRazerの第4世代Blade 14へのRyzen 7940 HSの採用である。
2022年モデルのBlade 14はRyzen 9 6900HXにGeForce RTX 3070 Tiないし3080 Tiと165Hz表示のQHD液晶を組み合わせた構成であったが、今回発売された2023年モデルは以下のように更新されている。
- プロセッサーをRyzen 9 7940HSに更新
- GPUをGeForce RTX 4060ないし4070に更新
- 液晶をQHD(2560×1440pixel)@165HzからQHD+(2560×1600pixel)@240Hzに更新
細かいところでは液晶は輝度が最大500NITSに向上したほか、ついに内蔵メモリーがSO-DIMMスロット経由となり、最大64GBまでの拡張に対応したのは、少なからぬユーザーが待ち望んでいたことである。
ただしその分全体として少し大型化している。2022年モデルが319.7×220×16.8mm、1.78Kgだったのに対し、2023年モデルは310×228×17.9mm、1.84Kgになった。幅こそ1cmほど縮まったが、奥行き(これは液晶が大型化したから仕方がない)と厚み、重量ともにわずかながら増えている。
このBlade 14は3種類の構成が用意される。オーダー開始は6月13日、出荷開始は6月20日である。
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