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凶悪化する「闇バイト」強盗までやってしまう理由

ASCII.jp / 2023年6月22日 7時0分

 関東など各地で「闇バイト」にからんだ強盗事件が続発。報道によれば一部の容疑者は「SNSの募集を見て応募した」と供述しています。なぜ闇バイトによる凶悪事件が目立つようになったのか。IT技術を悪用した犯罪事情に詳しいITジャーナリストの三上洋さんは「捨て駒として使えるから」と指摘します。

「サラリーマンの1ヵ月分が3日で稼げます」

 冒頭に挙げたのはすべて、闇バイトや裏バイトを募集するInstagramのキャプチャー。「関東にて日給3〜5万円の仕事」「ホワイトからグレーのお仕事」「サラリーマンの1ヵ月分が3日で稼げます」などというコピーが躍っています。これらはみな犯罪行為をさせようとする「犯罪者募集」の投稿です。

 Twitterでは数年前から警察の公式アカウントが闇バイト募集とおぼしき投稿にリプライをしたり、コメントつきRTをするようになりました。そのため闇バイトの募集はいまInstagramに移りつつあるそうです。

 Twitterでは最近、DMを通じて「スカウト」も来ると言います。

 「お金がない、家賃が払えないといったツイートをしている人に対して『いい仕事があるよ』と言ってくるんです。テレビ番組で『お金がない、困っている』とツイートして、さらにそういう募集をしている人たちをフォローしたりという動きをしたところ、こちらが闇バイトをしたいとは言っていないのにDMが来ました。私ではない人にもわずか10分で来ました」(三上さん)

 三上さんによれば、闇バイトが目立ってきたのは最近のこと。「昨年後半あたりから凶悪事件にこの人たちが投入される形で目立ってきました」

匿名アプリ、飛ばしのケータイで「使い捨ての駒」に

 なぜ闇バイトが増えたのか。理由は犯罪組織にとって、実行犯を「使い捨ての駒」として使える利便性があるからです。

 三上さんによれば闇バイトは犯罪のピラミッド構造の最下段にいます。一番上に犯罪グループがいて、それぞれの犯行をマニュアル化しています。その下に指示役・監視役という実際に計画を立てる人、リクルートする人などが入ります。

 その下に実行役にあたる闇バイトが入りますが、上部組織とは完全に切り離された「捨て駒」になります。

 指示役は30秒から60秒程度でメッセージが自動的に消去される「Telegram」「Signal」など匿名性の高いメッセージアプリで実行役と連絡をとっています。連絡には「飛ばし」と呼ばれる他人名義、架空名義の携帯電話が使われることも多く、犯行を企てる上部組織は「足がつきにくい」状態になります。

 さらに、実行犯が捕まっても、上部組織まで捜査が及びにくいという状況から、これまででは考えられないほど大胆な事件も出てきているといいます。

 そのひとつが、今年5月に容疑者が逮捕された「SIMスワップ」詐欺。偽造した身分証を持って携帯電話ショップに行き、紛失を装いSIMカードを再発行させ、スマートフォンを乗っ取ってしまうというもの。実行犯は顔を隠すこともなく携帯電話ショップに行くため、捕まるリスクがとても高い手口です。

 「これは実行犯が捕まることを前提としているからできるんです。今までなら捕まらないよう、知恵を絞らないといけなかった。強盗事件にしても、『お面をかぶって逃げろ』と言ったところで逃げられるわけがない。捨て駒だから、ダメでもいいから無茶させようという話なんです」(三上さん)

「抜けるなら家族にバラす」と追い込まれて

 それにしても、SNSの募集を見た程度のことで、強盗までしてしまうのはなぜなのか。理由のひとつは「もう抜けられない」と追い込まれるためです。

 「闇バイトは応募の段階で身分証を出させるものが多い」と三上さん。勤務先、身分証を持った状態の自撮り写真、集合住宅なら表札や部屋番号、一軒家の場合は郵便ポストなど。一度闇バイトを始めた人が「やめたい」と伝えた場合、こうした個人データをもとに「抜けるなら家族にバラすぞ」などと脅し、より大きな犯罪へと追い込んでいくケースがあるといいます。

 「多くの場合、最初はグレーと思ってしまうような犯罪なんです。たとえば、『受け取った荷物を転送してくれれば数千円』というもの。これはクレジットカードの不正利用で買った商品の一時受け取り先になる行為です。「こんなことまでしたんだから、次は飛ばしケータイの契約をしてこい、次はオレオレ詐欺の出し子をやれ、というふうにレベルを上げていくわけです」

 そうして犯罪行為を重ねていく中、「こいつは無茶なことでもやる」と目星をつけられた人が、実行役として犯行をさせられることになります。

 「たとえば川崎の事件のように、お面をかぶり、ショーケースをバールでぶったたいて……といったことをいきなりSNSで募集した人にやらせられるわけがないですよね。犯罪グループ側も実績を見ているところがある。小さな事件をやらせて『こいつはできるな』と判断するわけです。指示役はBluetoothイヤホンを通じて指示を出し、実行役をロボットのように使っているんですが、言われたことをしっかりと実行する実行役には『100万円やるから、もっと大きな仕事をしろ』と言う。小さな仕事をさせるのは、ある意味テストをしているという意味もあるようです」(三上さん)

子どもの「お金」と「時間」に気をつけて

 闇バイトが凶悪化する一番の理由は、応募してしまう人がいるからです。「バイト」と言われると社会的な仕事の一種のように感じられてしまいますが、実際は犯罪者募集。特に募集に引っかかりやすいのは高校生や大学生です。親は子どもたちのどんな様子に気をつければいいのでしょうか。

 「そういう世代の子どもたちと親のコミュニケーションは一番難しかったり、子どものほうがスマホに詳しかったりするので、非常に難しいですよね。理想は親子のコミュにケーションがあることですが、それができない場合は、子どもの『お金』と『時間』をチェックしてください。毎月1万円しかおこづかいをあげていないのに高級なバッグを持っているとか、良い時計を持っているとか。その場合、子どもと対峙する必要があります。時間といえば、家に学校にも塾にもいない時間がめちゃくちゃ長いなら見張らないといけないと思います」(三上さん)

 足がつきにくい巧妙な仕組みを背景に、凶悪化していく闇バイト。最初の一歩が入りやすく、一度入れば簡単には抜け出せない構造になっています。犯罪に巻き込まれないためには、とにかく「近寄らせない」ことが大切。私の子どもはまだ6歳ですが、大前提として「世の中そんなにうまい話はない」こと、困ったことがあったらすぐ親や周囲の大人に話すよう教えておこうと思いました。

 

書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ。6歳児と2歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。

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