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2800ページ超え!ChatGPT/生成AI本14冊を読み比べてみた

ASCII.jp / 2023年6月27日 10時0分

 生成AI(ジェネレーティブAI)が話題だ。日本経済新聞社や日本 芸能従事者協会など、生成AIに関するアンケートがあちこちで実施され、デジタル庁、経済産業省、農林水産省は生成AIを業務に利用することを決めた。AIは大きく機械学習とそれ以外のAI技術に分けられ、深層学習(ディープラーニング)は機械学習に属していると言われるが、もはや世間的には、AI=生成AIの様相を呈している。  ネットにも情報があふれているが、ChatGPTをはじめとする生成AI本や、生成AIを特集した雑誌も多数出版されている。    それらの本の帯や表紙には次のような宣伝文が書かれている。    「あなたの欲しい回答を導き出すベストプロンプトを大公開‼」   「誰でも使えるAIがやってきた!」  「可能性は無限大!」    「すべきことが1/1000になる異次元のスキル」    「実生活・ビジネスで即使える」  生成AIは仕事でどのように役立つのか。思い通りの文章や画像をつくるにはどうすれば良いのか。興味を抱いている方も多いだろう。そこで、ChatGPT本および生成AI本、そして生成AIを特集した雑誌計14冊(誌)の内容を比較してみた。

書籍、雑誌とも2023年に入ってから続々刊行  

 Amazonで生成AIの書籍や雑誌を検索すると、結構な数がヒットする。その中には、話題になったAIグラビアも含まれるが、今回は「生成AIを理解し、使い始めてみる」をテーマに、その参考になる一般書や雑誌企画のみを対象にした。技術書や電子版のみのもの、AIグラビアは除外している。そのリストが下記の通りである。今後も刊行が予定されているが、5月末までに手に入った書籍、雑誌のみとなっている。

ChatGPT本および生成AI本        ChatGPT本、生成AIを特集した雑誌          

では、1冊ずつ内容を見ていこう。

『先読み!IT×ビジネス講座 画像生成AI』 著:深津貴之、水野 祐、酒井麻里子  発行:インプレス 定価:1,650円(税込)  「SFマガジン」の表紙をAIで生成するなど、早くから生成AIを活用している深津貴之氏(UI/UXデザイナー、THE GUILD代表)が執筆。写真のような画像を生成するためカメラの機種名を入れたり、Midjourney、DALL・E 2、DreamStudio、Novel AIでプロンプトと生成の結果を比較したり、実践的な内容。他の作家の作品を守るために使ってはいけないプロンプトを紹介するなど、クリエイター目線で書かれている。著作権、モデル開発といったビジネス応用では、弁護士の水野祐氏(シティライツ法律事務所)が解説していて、かなりのページが割かれている。本文が会話形式で構成されていて読みやすい。

 

『StableDiffusion AI画像生成ガイドブック』 編著:今村勇輔、著:比嘉康雄、五十嵐良平  発行:ソシム 定価:2,420円(税込)   StableDiffusionを用いたweb UI(ハンドルネーム「AUTOMATIC1111」氏が開発・配布している)をもとに、画像生成の手順や保存方法を解説している。古代エジプトの壁画、切り絵、水墨画、ステンドグラスなど、イメージに合った画像を生成するプロンプト例が紹介されていて参考になる。しかもカラーで一目瞭然。拡散モデルや著作権にも言及している。    なお著作権については学習に使って良いか、AIで生成したものに著作権があるか2つの論点がある。前者に関して、日本は諸外国に比べ学習しやすい環境であることが言われている。後者に関しては人による創作的寄与があるかどうかが問われており(https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_team/3kai/shiryo.pdf)、ユーザーがどんな生成結果になるか予測できていないことも問題視されている。

 

『先読み!IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来』 著:古川渉一、酒井麻里子 発行:インプレス 定価:1,540円(税込)   発行2か月で、8万部売れたというChatGPT本。自然言語処理や機械学習、ファクトチェック、AIが作成した文書を見分けるツール「AI Text Classifire」、生成されたプログラミングコードの権利問題など、話題は幅広い。本書も会話形式で書かれている。専門用語を極力使わないように配慮されている。

 

『ChatGPT 120%活用術』 著:ChatGPTビジネス研究会 発行:宝島社 定価:1,390円(税込)  ChatGPTの概要、アンケート項目・謝罪文の作成といったユースケースごとの使い方などを解説。回答の精度を上げる方法だけでも4種類紹介されている。Windowsでの疑問点の解消方法、Excelの関数の探し方、Bingの使い方を紹介している点は他の類書には見られず、本書の特長となっている。各ページは見出し(ChatGPTでやりたいこと)、解説文、プロンプト例、ChatGPTの回答で構成され、書体や色分けで見やすく整理されている。

 

『AI白書2023』 編:AI白書編集委員会  発行:角川アスキー総合研究所、発売:KADOKAWA 定価:5,500円(税込)   AIの技術・利用動向がわかるベストセラー書籍の最新版。今年は「生成AIのインパクトとAIガバナンス」をテーマに、ChatGPT開発秘話、Stability AI/アドビ株式会社のインタビューに加え、大規模言語モデルと画像モデル、倫理・品質などのAI技術の概要、海外のAI知的財産関連動向などを掲載している。

 個人ではなく、企業のAI導入・利用担当者らを読者対象にしている点が特徴。国内のAIユーザー企業34社の実例紹介では、開発の工夫や協業先の選定、AI研修の方法などを参考にすることができる。国内AIベンダー企業への開発費用や開発期間等のアンケート調査を実施し、結果を掲載している。他の本よりも値段は高いが416ページとボリュームがあり、紙の書籍を購入すると本文のPDFデータをダウンロードできる特典もある。

 

『図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本』 著:田中秀弥、監修:松村雄太 発行:秀和システム 定価:1,210円(税込)  画像生成AIの仕組みや著作権、活用事例などをまとめた1冊。自分の望む画像を生成するためのプロンプトやパラメータ、Midjourneyの使い方などについても書かれているが、それらを詳しく解説することより、国内外の最新のツールおよびサービスの紹介に主眼が置かれている。例えば、プロンプト関連では、Lexiaなどのプロンプトデータベース、プロンプトを作成するツール、プロンプトを取引するマーケットプレイス。活用事例では、ゲーム制作のインディーゲーム、建築やインテリアデザインにおける3Dの生成支援ツール、医療画像の研究例といった具合だ。画像生成だけでなく、ChatGPTを含む生成AI全体についての記述もある。

 

『ゼロから身に付く! ChatGPT活用スキル』 著:ChatGPT研究所 発行:工学社 定価:2,750円(税込)   ChatGPTの使い方やプロンプトの例を紹介しているのは類書と同じだが、海外の論文をもとにプロンプトの書き方を紹介したり、敬語と命令形で生成文がどうかわるかを検証したり、視点がユニークだ。ChatGPTプラグイン、Whisperの使用手順、ChatGPTの仕組みにも言及している。PDFを要約させる方法など、仕事を効率化させる手段が豊富だ。

 

『ChatGPTの衝撃 AIが教えるAIの使い方』 著:矢内東紀 発行:実業之日本社 定価:1,540円(税込)  自然言語処理の解説に始まり、ビジネスや日常におけるChatGPTの使い方を説明している。具体的には、コーディングの補助、企画書や契約書の作成法、レシピの考案などに用いるプロンプト例などである。著者は経営していたクイズバーをやめたそうだが、その理由はGPT⁻4の登場により「クイズ作りはAIでOK」という確信を得たからだそうだ。「AIの奴隷になるか、AIを奴隷にするか」と読者に問いかけている。

 

『AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方』 著:伊藤穰一 発行:SBクリエイティブ 定価:1,760円(税込)  ベンチャーキャピタリスト、起業家として著名な伊藤穰一氏(デジタルガレージ取締役、千葉工業大学変革センター長)が執筆。AIで仕事がどのように変わるかについて、資料作成、プログラミングなど仕事内容の面からだけでなく、広報、アナウンサー、教師など職種の面からも考察されている。プロンプトマーケットといった最新情報、IPビジネスへの応用のアイデア、AIとWeb3の融合など伊藤氏ならではの提案も掲載。AI時代を生き抜くための指南書となっている。

 

『生成AI 社会を激変させるAIの創造力』 著:白辺陽 発行:SBクリエイティブ 定価:1,870円  AIの歴史から、実用的なサービス、生成AIが引き起こす問題、今後の社会変化と未来まで順に述べられている。生成AIを文章生成AI、画像生成AI、動画生成AI、3Dモデル生成AIに分類し、例えば文章生成だとJasperやCatchyなど、国内外の汎用AIツールを紹介している。広告・SEOと生成AIについての記述は本書が詳しかった。

 

 ここからは雑誌の特集を紹介する。

「日経サイエンス 2023年5月号」 発行:日経サイエンス社 定価:1,576円(税込)  特集「話すAI 描くAI」が組まれ、「AIに人間らしさをもたらした大規模言語モデル」、「ChatGPTの頭のなかをのぞき見る」、「無限対談 AIがでっち上げた有名人トーク」の3本の記事が掲載されている。プロンプトをはじめとする業務への実用例などはなく、松尾豊氏(東京大学大学院工学系研究科教授)らへの取材を通し、AIおよび大規模言語モデル(LLM)の歴史、ChatGPTの学習について解説しているのはサイエンス誌ならでは。LLMのロボットへの応用(「PalM-SayCan」)、LLMを使った新型コロナウイルスの変異予測モデル、話題の論文にも触れている。紙版は売り切れとなっており、電子版のみで読むことができる。公式サイトではPDFも販売されている。

 

「週刊東洋経済 2023年4月22日号」 発行:東洋経済新報社 定価:780円(税込)    約40ページにわたり、AIの歴史、基本的な解説から、深津貴之氏(UI/UXデザイナー、THE GUILD代表)によるChatGPTへの質問の仕方、ChatGPT以外の無料のAIツール、企業内での活用例、著作権問題Q&Aまでが紹介され、「ChatGPT仕事術革命」という特集タイトルに偽りのない内容となっている。   なお、私(この記事の筆者)は日本のAI関連企業や海外企業を把握しようと努めているが、これはなかなか困難を極める。本特集に記載されている、生成AIの業界地図、生成AI関連株、「不調だった企業が生成AIを自称する例も」といった注意点は参考になった。

 

「DIME 7月号」 発行:小学館 定価:1,300円(税込)  特集「AI検索超活用術」として、清水亮氏(人工知能研究者、東京大学情報学環客員研究員)、尾原和啓氏(IT批評家)のコメントに始まり、メール文作成、要約、アイデア出しなど、プロンプト例を含めたビジネスで役立つテクニックを紹介している。ChatGPTとMicrosoftのBingの比較、Bingの担当者による解説、Google「Bard」の実力検証のページもある。生成AIの専門用語として、temperature、hallucinationが紹介されていた。生成AIに関連してよく使われる用語としてこれ以外に、アライメント(alignment)、蒸留(distillation)、脱獄(jailbreak)などが知られている。  「Newton 2023年7月号」 発行:ニュートンプレス 定価:1,190円(税込)  ChatGPTの使い方や機能も紹介しているが、ChatGPTに関係する技術を美しい図と平易な文章で解説することにフォーカスされている。ディープラーニング、Transformer、GPT、ChatGPT、ファインチューニング、GPT-4、画像生成AIという流れで、見開きで順を追って解説しているため、非常にわかりやすい。松尾豊氏が監修している。特集のあとには、チューリングやノイマンに関する物語もあり、こちらも必読。

目的にあったチャットGPT本/生成AI本を選ぼう

 各書籍にそれぞれ共通しているのは、ChatGPT本はその使い方を、画像生成AI本は画像生成の方法を、具体例を挙げて丁寧に解説している点だ。パソコンで仕事している際、コードやリンク先をコピー&ペーストする必要がなければ、手法などを参照するには本が良い。その意味で、目次を見て、参考にしたい項目がある場合は1冊購入しておくのは「あり」だと思う。  雑誌は「東洋経済」と「DIME」がハウツー的で、「日経サイエンス」と「Newton」が一般向けの技術解説になっていた。雑誌は一般向けながらAI研究者や専門家のコメントやインタビューが掲載されており、技術に興味がある人にとっては興味深いものが多い。

今回、間に合わなかったが、雑誌「PRESIDENT 2023年6.30号」、「週刊ダイヤモンド 2023年6月10日・17日合併特大号」もChatGPTを特集している。

 企業や組織全体で、生成AIやChatGPTを含むAIの導入・活用をどう進めるか? という戦略や戦術のヒントがほしいなら、手前味噌ながら小社刊の『AI白書2023』をおすすめする。    それぞれの目的にあった「生成AI本」選びの参考にしてほしい。

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