プレゼンの失敗を防ぐためスピーカーを自前で用意 選んだのはベリンガー「EUROLIVE B205D」
ASCII.jp / 2023年7月4日 16時0分
マイクと送信機、受信機だけでは音は出ない
前回の記事では、ヘッドセット型マイク「CORE 4088」(DPA)とワイヤレスシステム「SYSTEM10」(オーディオテクニカ)を紹介しました。しかし、それだけで音が出るわけではないのが、音響機器の深いところ。
関連記事:ワイヤレスでクリアなマイクの音を届ける マジシャンも使う「SYSTEM10」とは
簡単に説明すると、マイクの声をスピーカーから出すには、下の構成の仕組みが必要です。
1)マイク ↓ 2)送信機(ワイヤレスの場合) ↓ 3)受信機(ワイヤレスの場合) ↓ 4)ミキシングコンソール ↓ 5)パワーアンプ ↓ 6)スピーカー
キャスターが付いた冷蔵庫サイズの黒い箱が、ホテルの部屋や会議室などの隅に置かれているところを見た人もいらっしゃるでしょう。その中にラックがあり、上の2〜5の機器が収納されています(スピーカーは天井などに設置)。
会議室やホテルのバンケットルームなら、スピーカーを用意しなくても、部屋の設備を使うこともできます。しかし、自分でマイクやワイヤレスシステムを持ち込んで使う場合、接続口のタイプが合わない、ミキシングコンソールがない、その場所がわからない、機器同士の相性が悪い……などのケースもあります。
多くの場合、部屋の担当者と、音響機材を担当する人は異なります。そのため、音が出るまで時間がかかったり、音響設備の使用は事前申し込みが必要だったりと、本番前にバタバタ、オロオロすることもあります。
そんな理由から、筆者はプレゼンの仕事の場合、自分専用のPAをバックアップとして準備しています。
とはいっても、上で紹介した「冷蔵庫サイズの機材」を持ち歩くわけではありません。
多目的PAシステム「EUROLIVE B205D」
今回紹介するのはベリンガー「EUROLIVE B205D」。ベリンガー(BEHRINGER)は、スイス人のウリ・ベリンガーがドイツでスタートした音響機器メーカー。2002年には、中国に自社工場「ベリンガー・シティ」を建設しました。
EUROLIVE B205Dは、A4サイズほどの場所に置ける、高さ18.5センチほどのPAシステム。ミキシングコンソール、パワーアンプ、スピーカーの機能を備えています。重さはおよそ3.2kgです。
筆者が海外製のEUROLIVE B205Dを選んだ理由は、小型ながら最大出力が150Wなこと、音質の評判が良かったことです。また、クラスDアンプであることにも惹かれました。クラスDアンプは、電力効率が良く、発熱の少ないことから、薄型テレビやノートPCなどにも使われています。
マイクにはいろいろなものがありますが、筆者の使うCORE 4088はコンデンサーマイクです。コンデンサーマイクは広い周波数帯を高感度で拾えるのですが、専用電源が必要。
EUROLIVE B205Dの場合、内蔵の3チャンネルミキサーの2つのフォンコンボXLR/ライン入力は専用電源を搭載しており(48Vファンタム電源)、コンデンサーマイクを有線で繋ぐ場合にも対応できます。それもEUROLIVE B205Dを選んだ大きな理由でした。
入力はXLR、TRS(ピン)、RCA入力に対応。出力はイコライズ前の信号をそのまま伝えるTHRU(XLR)を備えていますので、アクティブスピーカーの追加も可能です。
出力は十分で音質はスッキリ。多くの場所で使いやすい
EUROLIVE B205Dの出力ですが、筆者のように話し声で使うケースなら、広めの会場でもマスターボリュームを最大にする必要がないほど十分な音が出ます。
音質は、以前に使っていた似たクラスのアンプシステム「ATW-SP707/P」(出力20W)と比べると、音の抜けが良く、スッキリとした音が出力される感じ。ただし、この比較は、出力や送信方法の違い、音の好み、それぞれの販売時期を考えると、フェアな比較にはならないかも知れません。
低音、中音、高音の調整をするイコライザーの3つのボリュームが独立しているので、プレゼンターの声質に合わせるのにも便利。3チャンネルの入力もありますので、CDやPCなどから曲を流したり、アコースティックギターとマイクで弾き語りをしたりと、ミュージシャンにもおすすめかもしれません。マイクスタンドに乗せてモニターとして使うのもよいでしょう。
もし、ストリートミュージシャンがこれを使うとするなら、リバーブがあったほうがいいかもしれません。ただし、別途100V電源を用意する必要があるかもしれないので注意が必要です。もちろん、演奏する場所でのマナーをわきまえ、規約を守る必要もありますが。
マイクスタンドにも取り付けられる
より遠くに音を伝えたいとき、スピーカーを床ではなく、高い位置に設置したくなることがあります。EUROLIVE B205Dにはマイクスタンドにも取り付けられるように、底面に穴があります。専用のアダプターを使って設置できるのも特徴です。
今の時代、プレゼンがクライアントへの重要なファクターになってきたことに異論はないとおもいます。ワンランク上のプレゼンのためにも、高音質、高出力のスピーカーをバックアップとして準備しておく。タネやシカケが大切なのは、マジックだけではありません。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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