台湾TEXのスペースセーバーキーボード「Shura」(修羅)を衝動買い
ASCII.jp / 2023年8月11日 11時30分
Shinobiのバックアップ機用として TEX「Shura」(修羅)キーボードを衝動買い
実は筆者は、前世紀にThinkPadの製品企画やブランド戦略を長く担当していた。ThinkPadと聞いて思い付く特徴は数多いが作る側、売る側、買う側の3社の一致した意見のひとつは、個性的なポインティングデバイスである「TrackPoint」だ。考案したのは当時IBMのアルマデン研究所にいた、テッド・セルカというひょうきんなおじさんだ。
TrackPointの特徴や歴史、ウンチクはネット上のコンテンツに任せるとして、トラックパッド系が苦手で使えない筆者は、TrackPointがないと何もできない。加えてキーボードは就職して初めて触れたIBM 3270のキーボードのタッチとタクタイル感、打鍵音が忘れられず、今もメカニカルキーボードが必須の融通の利かない悪い体質になってしまった。
そんな筆者の仕事での資料作成や原稿書きには、メインのパソコンとしてずっとIBMやレノボのデスクトップPC+外付けキーボードとThinkPadの2つを組み合わせて使っていた。ちょうど5年前のComputex Taipei 2018でTrackPointと大きなパームレストが特徴的な「Shinobi」(忍)を見つけてしまいハマってしまい、販売と出荷を待つことにした。
まずは2020年に入って出荷の始まった英語配列のShinobiをミーハー衝動買い。なかなか使い勝手は良かったのだが、同時並行的に使っていたThinkPadのJISキーボードと統一性を考え、秋にShinobiの日本語JISキーボードを追加衝動買いした。赤いTrackPointのポチや7段キーボード、改行キーの濃いブルーがIBMイメージを継承している素晴らしいスペースセーバー(テンキーなし)キーボードだった。
以降、筆者の原稿書き&お仕事メインパソコンは、レノボのThinkCentreデスクトップとShinobiキーボードのコンビーネーションになった。近い内にShinobiのバックアップ機を買おうと思っていた矢先に、TEXが新しいよりコンパクトなスペースセーバーキーボードのShura(修羅)というモデルを発表した。
基本的にTrackPointさえついていれば何でも衝動買いするミーハーな筆者は、早速PayPal決済でShuraを衝動買い。一時は現メイン機のShinobiとのリプレースを考えたが、最終的には当初のプラン通りShinobiのバックアップ機という自分用の言い訳で購入した。
決済は2022年11月16日。TEXもウェブ上の質問には「年明けたら送るよ!」と軽いノリだったが、出荷されない。止むなく出荷時期を何度か問い合わせしてみたところ、相変わらず「来月には送るよ」の軽いノリ。結局のところ何度か遅延して最終的に筆者の手元に届いたのは、2023年6月1日だった。なんと注文から半年と半月後だった。
届いたShuraのパッケージは、Shinobiに比べるとはるかに大人なおとなしい感じに成長していた。なぜかパッケージを開けるとTrackPointの支柱の青色が目立つ。同梱品はShura本体以外ではUSB Type-Cケーブル、キーキャップの引き抜き機、濃青の改行キー、赤と黄のTrackPointキャップ、なぜかキースイッチの消音リング(赤)が3個、TrackPointキャップの付いた置き換えキーキャップそして取説だ。Shura本体を取り出した後に見える意味不明の「迷えば、破れる」の言葉がイケてる。
キー入力時に「カチャカチャ」と小気味よい音がする MXメカニカルキースイッチの緑軸
筆者がまたしてもセミオーダーで衝動買いしたShuraは、Shinobiと同様チェリー製のMXメカニカルキースイッチの緑軸を指定。ご存じのように緑軸は青軸と同じでキー入力時に「カチャカチャ」と小気味よい音がして、誰もがタクタイル感とクリック感を存分に楽しめる荷重80gの重いキースイッチだ。80gと聞いてビビる人も多いが、実際の打鍵感はスカッとする快適マジックだ。
同梱品の中から、濃いブルーの改行キーとトラディショナルな赤のTrackPointキャップのロープロファイルを取りだして、出荷時のShuraから交換して限りなくIBM時代のThinkPadキーボードやデスクトップPC用のキーボードに着せ替え完了。
特殊な目的で使うイメージの1Uのキーキャップに赤いTrackPointのポチの付いたキーキャップは、どこに使えばよいのかあまりピンとこなかったが、まずはESCキーのキーキャップと交換してみた。しかし何度見てもやはりピンとこなかったので、今は取り外して箱に戻したままだ。
パーツの選択設定が終わり、今回のShuraキーボードを筆者が現在使っている複数の現役キーボードとサイズ比較をしてみた。現在使用中のShinobiとShuraの比較は、一見するとパームレスト部分の差がほとんどの様に見えるが、ShinobiはレガシーなThinkPadの系譜を引き継ぐオーソドックスな7段キーのJIS配列。一方、ShuraはFnキー列なしの5段配列だ。FnキーやDelキーは左端中央のFnキーと最上段の数字キーのコンビネーションで実現する。Caps Lockもそこは同様だ。
筆者が3台ほどバックアップ用と言い訳して所有している現在のThinkPad TrackPoint KeyboardともCtrl、Alt、Win、Fnキーなどの配置に微妙に差異があるが、Shuraは物理的にキーキャップサイズさえ合致すればキーの配列変更や交換は簡単だ。
実際の操作としてはWeb上の「TEX shura Web Configurator」でキー位置の変更をし、3つのProfileのひとつとして保存、登録。キーボード底面の任意のDIP SWをオンしてKEYMAPテキストファイルをダウンロードしてShuraに記録する。残念ながらCtrlキーなどその極一部しか使うことのない筆者は、この有用なオプションはほとんど使えていない。
同じ「スペースセーバー」という省スペースキーボードの世界にいる「バックリングスプリング」(座屈型)キースイッチを採用したIBMの元祖スペースセーバーキーボードとは、その外形サイズは大きく異なる。Shuraは日本の狭い机上面積でも十分扱えるベストサイズだ。
現在、筆者がメインで使っているShinobiキーボードに比較するとShuraのスペースセーバーの存在意義は大きい。ただ実際に筆者が1ヵ月ほど使った印象では、Fnキーによる操作の煩雑さは良いとしてもやはりパームレストが欲しいというのが正直なところだ。現在はFILCOの木製のパームレストを併用している。
IBMやレノボの純正キーボードでは、トラックポイントの3つの操作ボタンは極めて薄いフラット形状のマウスボタンの様な部品が使われている。Shuraはコストや全体デザインの観点からか専用パーツではない汎用的な1Uサイズのキーキャップが、一段くぼんだ空間に3個並んで取り付けられている。
筆者の発注したShuraは、前述した様にカーソルキーも含めそのキースイッチとしてチェリーのメカニカルキースイッチMXの「緑軸」を採用している。しかしTrackPoint関連の3つのキースイッチは両手の親指で操作することが前提であり、指先に伝わる反発も異なる様に静音のメカニカルキースイッチMXの「赤軸」が採用されている。これはShinobiも同様だ。
そして3個のキーキャップの向きが両サイドの2個のキーだけが上下逆に取り付けられており、トップ面の傾斜角が異なっている。極めて些細なことだが、汎用品を活用したこのアイデアを思い付いたTEXのエンジニアはなかなか素晴らしい。
キーボード本体の傾斜を実現するリトラクタブル・スタンドは、快適なキー入力には極めて重要な要素だ。個人的な印象だが最近のThinkPad TrackPoint Keyboardの折り畳みスタンドは、どことなく軟弱に感じている。ここはShuraの方が堅牢性が高い印象だ。
重量管理には無頓着な印象を受けるが 高品質と堅牢性を実現した上で756gは素晴らしい
全体的に普通に入手可能な厳選パーツで組み上げたShuraは、省スペースモデルではあるがモバイルワーキングのスタイルを追い求めている製品ではない。ターゲット重量も明確ではないのかもしれない。どうも重量管理には無頓着な感じだ。それでもこの高品質と堅牢性を実現しての756gは素晴らしい。
気になって計ってみたら筆者のもう一つの愛用機である「ThinkPad TrackPoint Keyboard」は実測で519gだった。個人の感想だが、それなりの値段のテンキーレスの省スペースキーボードを買うなら500g以下の製品は避けるほうが無難だ。加えて改行(エンター)キーやBS(Back Space)キーの右側にスペースを空けずに、余計なキーが並んでいるキーボードも同様だ。きっと自分がキーボードだという大事なことをを忘れてるのだろう。
最後に今回のShuraには台湾最後の活版印刷鋳造所である「日星鋳字行」さん謹製の「修羅」という2つの活字が、ネッキ(活字の軸の側面に刻まれている溝)を再現した巨大な活字形状の金属パッケージに収めて届いた。誤ったコスパだけを追い求めることによる、キーボード文化の衰退を再考するきっかけになれば素晴らしい。
今回の衝動買い
・アイテム:TEX Electronics「Shura JAPANESE JISキーボード(MX緑軸キースイッチ)」 ・購入:TEX Electronics ・価格:199.67 USD(Shura本体 169.00USD+送料 30.67USD、合計価格およそ2万9247円)
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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