iPhone動画のバリエーションを広げるカメラワークとユニークなショットの撮り方を覚えよう
ASCII.jp / 2023年10月12日 10時0分
動画撮影では、カメラを動かすこと、いわゆるカメラワークが大切なテクニックだ。これは、iPhoneで撮る場合も同様で、覚えておくと撮影のバリエーションを広げることができるだろう。また、ユニークなショットの撮り方や、トランジション(後述)を意識した撮影をしておくと、編集段階でさまざまなカットのつなぎ方を試せるようになる。
今回は、iPhoneでの動画撮影における基本的なカメラワークやテクニック、編集を意識したトランジション撮影の方法について解説していこう。
iPhoneで活用したい基本のカメラワークを覚えよう
カメラワークとは、写真や動画の撮影技法のことだ。カメラワークの動きや目的などを理解しておくと、動画のクオリティは格段に上がるだろう。カメラワークにはさまざまなものがあるが、よく使われるのは次の5つだ。
【フィックス】 「フィックス」は、カメラを一定の位置に固定して撮影する方法だ。カメラの動きがなく、フレーム内の被写体や背景だけが動くため、視聴者の注意を被写体に集中させられる効果がある。最もよく使われるカメラワークで、長時間撮影する場合は三脚の使用が必須となる。
【パン】 「パン」は、カメラを水平方向に動かすことで、左右にシーンを移動させる撮影方法だ。広い景色を1つのカットで見せたり、移動する被写体を追ったりするのに適している。安定したパン撮影をするには、三脚を使ってカメラを左右に振るようにしたい。
【ティルト】 「ティルト」は、カメラを垂直方向に振って撮影する方法。上下にカメラを動かすことで、高い建物の地上階から屋上階までをカバーしたり、人物を写してから一気に空を狙うといった撮影にも使える。
【ズームイン/ズームアウト】 レンズの焦点距離を変更することで、被写体に近づいたり(ズームイン)、遠ざかったり(ズームアウト)する効果を作り出す撮影方法。特定の被写体に注目させる場合や、視点を変えて全体の景色を見せたい場合などに使う。ただし、iPhoneでズームを使うとデジタルズームに切り替わることがあるので、あまり利用しないほうが無難ではある。また、使うときは、スライダーで操作するようにしよう。
【トラック】 これは、カメラ自体を前後や左右に移動させながら撮影する方法のこと。例えば、歩いている人物の横を、カメラが一緒に移動しながら撮影するようなときに使う。iPhoneで撮影する場合は、手ブレが気になるので、「アクションモード」を使うか、ジンバルを利用して撮影したほうが安定した画像になる。
映像にちょっとしたアクセントをつけられる撮影時の工夫
動画撮影では、構図がもちろん重要だが、そこにちょっとした工夫を加えることで、ユニークな映像を撮影することができる。ここでは、よく使われる手法を紹介していこう。
【ボケ】 被写体に焦点を合わせると(AE/AF ロック)、背景がボケる。これを寄りの画などで利用すると、被写体を際立たせることができる。ただし、ボケ方が甘いと中途半端な印象を与えてしまうので、甘いと感じた場合は、画角を少し引いて、すべてにピントが合っている状態(パンフォーカス)にしたほうが違和感は抑えられる。
iPhone 13以降なら「シネマティック」モードを使えば、しっかりと背景をボケさせることができるので、対象のiPhoneを持っている人は、こちらのモードを使うのがおすすめだ。
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【前なめ】 「前なめ」とは、被写体の手前に別の物を配置して撮影すること。映像に奥行き感を出せる基本テクニックだ。例としては、カメラと被写体の間に花や葉、手やアクセサリーなどを配置し、それが部分的に映ることで、映像に奥行きや厚みを持たせられる。特に、クローズアップ撮影の場合は、より豊かな映像になる。
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【フレーミング】 これは、被写体を何らかの「枠」で囲むことで、視線を被写体に導きやすくできる手法だ。例えば、木と木の間や、建物の窓、アーチやトンネルなどの自然な枠を利用して被写体を撮影することで、視線が被写体に集まりやすくなる。被写体を強調したい場面、特定の場所に視線を誘導したいときなどに特に有効だ。
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【ダッチアングル】 カメラを意図的に傾けて撮影することで、視覚的な違和感を生み出し、シーンに緊張感をもたらす手法。映画やドラマなどでは、混乱している人物の心理描写などに使われたりする。また、特定の被写体を、ほかとは異なるものとして強調したい場合に使うのも効果的だ。
ただし、「ダッチアングル」は効果が強いため、使用する場面や頻度を考えないと見る人に強い違和感を与える。そのため、目的が明確でない限り、多用しないほうがいいだろう。
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【フェイクドローン】 これは、ドローン映像のような高所からのアングルを模倣するテクニックだ。自撮り棒や延長アームなどを使ってカメラを高く持ち上げることで、高度感を出すことができる。
さらに、ゆっくりとカメラを動かすことで、まさにドローンが飛んでいるかのような映像を撮影することが可能だ。ただし、自撮り棒が短いと、あまり高度感が出ないので、撮影後に必ず確認しよう。
これらのテクニックは、上手に活用することで動画の中でもちょうどいいアクセントとなるはずだ。ぜひ活用してみてほしい。
「トランジション」を意識した撮影テクニックを覚えよう
動画制作では、カットとカットのつながりをどのように演出するかが重要なポイント。この効果を「トランジション」と呼び、撮影するときからシーンのつながりを意識しておくと、編集時の作業の幅が広がるだろう。ここからは、トランジションを意識した撮影テクニックについて紹介していこう。
【ワイプトランジション】 これは、ある場所から別の場所に移動する際に最適な方法だ。例えば、壁や柱など、風景内の何かがレンズ(画面)を覆うまでカメラをパン(または横移動)して撮影を終え、続くカットは、レンズ(画面)が覆われている状態から撮影を開始し、同じ方向にパン(横移動)して撮影を続けるというもの。
下のサンプル動画の場合、1つ目のカットは横移動で柱まで撮影し、2つ目のカットは看板から同じ方向に移動して運河を撮影している。1つ目のカットは柱で終え、2つ目のカットにつなげると、場面がシームレスにつながっているようになる。つなぎ部分の色合いを近づけると、きれいに仕上げられる。
【スムーズトランジション】 こちらは、カットとカットをスムーズな動きでつなぐトランジション。非常にシンプルだが使い勝手がよく、海外のクリエイターにも多用されているテクニックだ。このトランジションを使う場合は、1つ目のカットではカメラを素早く振って撮影を終え、2つ目のカットはそれと同じ方向にカメラを振ってから被写体を捉えるようにする。こうして撮影したカットをつなぐと、非常に動きのあるシーンを演出できるのだ。
注意点としては、2つのカットのつなぎ部分は同じような色や明るさで撮ること。1つ目のカットの終わりが黒で、2つ目のカットの終わりが白だと違和感が出てしまう。下のサンプル動画では、葉や木々を使ってみた。どちらも同じような色味なので、シーンのつなぎで違和感を感じない仕上がりになっている。
【イン/アウトトランジション】 1つ目のカットで被写体などをフレームいっぱい(真っ暗)になるまで寄ってから撮影を終え、2つ目のカットは、フレームいっぱいに寄った状態からカメラを動かして撮影を続ける方法。異なる場所やシーンへの移動をスムーズに表現できる。この撮影の場合も、2つのカットのつなぎ部分は同じような色や明るさで撮るとスムーズにつなげられる。
【スカイホイップ】 「スカイホイップ」は、カメラを素早く空や地面などの方向に振ることで、次のシーンに移行する手法のこと。1つ目のカットの最後にカメラを素早く空や地面の方向に振る。そして、2つ目のカットは同じ方向からカメラを振り下げる(または振り上げる)動きで開始する。これにより、2つの異なるシーンが、滑らかで自然につなげられる。つなぎの場面は、やはり同じような色合いにする必要がある。
このトランジションは、バラエティ番組やミュージックビデオなどでよく見られるテクニックで、視聴者にダイナミックな印象を与えられる。青空または曇り空のときに撮影するのが好ましいだろう。
あまり考えすぎずに、まずはとにかくいろいろと試そう
ここまでさまざまな撮影テクニックを紹介してきたが、たくさんあるために、どれを使ったらいいのか迷ってしまうだろう。だが肝心なのは、とにかくいろいろな撮影方法を試してみることだ。
実際に撮影してみると、想像していたよりもはるかにいいカットが撮れる場合もあるし、思ったほどいい感じにならないこともある。また、イマイチだと思っていたカットが、別のカットと組み合わせて編集したら、非常に効果的だったということもある。まずは、数をこなすことが、上達への第一歩だ。
今回、初歩的なカメラワークや撮影方法を中心に取り上げたが、撮影技法はこれ以外にもたくさんある。そんな中で、まずは基本を押さえておくことが何よりも大事。よく使われるものばかりなので、どんどん活用してみてほしい。
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