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財務省はカルト教団化している 森永卓郎氏が知ってほしかった「真実」

ASCII.jp / 2023年9月28日 7時0分

 『ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト』(森永卓郎 著、三五館シンシャ)の冒頭において著者が指摘しているのは、「財政均衡主義」の問題点だ。それがそのまま、「ザイム真理教問題」につながっていくからである。

 いうまでもなく、「予算における支出と収入は一会計年度で一致すべきだ」という財政均衡主義の考え方は、政界や財界、一般国民にまですっかり浸透しているだろう。だがそれは、とりわけ自国通貨を持つ国の財政に大きな弊害をもたらす。

 景気が悪化して、供給力に比べて、需要が足りなくなったとき、すなわちモノやサービスを作れる能力を経済が持っているのに、それが売れずに余ったときには、政府が公共事業を増やしたり、減税を行なって、需要を拡大すべきだというのがマクロ経済学の教えだ。(「まえがき」より)

 逆に考えれば、政府がなにも景気対策をせずに需要不足を放置していたとしたら、経済の収縮とともに税収が落ち込み、財政はますます悪化するわけだ。

財務均衡主義は長期的にも間違っている

 また、財政均衡主義は長期的にも間違っているようだ。財政の穴埋めのために発行した国債を日銀が買い取ったときには、その時点で事実上政府の借金は消えるからだ。

 まず、元本に関しては、10年ごとに日銀に借り換えてもらい、永久に所有し続けてもらう。そうすれば、政府は返済の必要がなくなる。政府は日銀に国債の利払いをしなければならないが、政府が日銀に支払った利息はごくわずかの日銀の経費を差し引いて、全額国庫納付金として戻ってくるから、実質的な利子負担はない。(「まえがき」より)

 もちろんこういうことをやりすぎるとインフレが襲ってくるので、限界があるのも事実。しかし現在の日本では、このやり方での財政資金調達の天井がかなり高いことを、アベノミクスが図らずも証明している。

 安倍政権の最終年である2020年度も1年間で、日銀は46兆円も国債保有を増やしたが、続いたのはインフレどころかデフレだった。もちろんこの年だけの話ではなく、アベノミクスの時代に似たような状況が続いたことはご存知のとおりだ。

 そうしたことを踏まえれば、消費税率を5%に下げることの財政負担は14兆円にすぎないから、その税収不足を国債発行でまかない、それを永遠に続けることはまったく問題がないことがわかる。(「まえがき」より)

財務均衡主義という“教義”が広く深く浸透してしまった

 それは著者の目から見れば単な仕掛けであるようなのだが、なぜか多くの人にそれは伝わっていない。だから結果的には、財務省のいいなりになってしまうわけだ。

 なぜか?

 それは、旧大蔵省時代を含め、財務省が40年間にわたって布教を続けてきた「財政均衡主義」という“教義”が、国民やマスメディア、政治家にまで広く深く浸透してしまったためだ。

 話を単純化するなら、さまざまな理由や根拠を見せられたうえで「お金がないので増税するしかありません」と言われたとしたら、国民は「だったら仕方がないかなぁ」と思うしかないわけである。だが、それが問題なのだ。それは、国民全体が財務省に洗脳されてしまったということにほかならないのだから。

 すなわちそれが、昨今ネットの世界で散見されるようになったワードであり、本書のタイトルにもなっている「ザイム真理教」問題なのだ。

 そこで本書では、ザイム真理教が生まれるまでの経緯、そして、それがどのように国民生活を破壊するのかということをわかりやすく解説しているのである。重要なポイントは、この「わかりやすく」という部分だ。多くの人々(私もまたそのひとりだ)にとって財務省の思惑や行動を理解することは決して簡単ではない。だから知らず知らずのうちに、多少なりとも思考停止状態に陥ってしまうのだ。

大手出版社から軒並み出版を断られた

 だが当然のことながら、そんな状態では自身の将来を守ることはできない。だからこそ、わかりやすく解説する必要があるということ。つまり著者にとってそれは、「自分のために、なんとか真実を理解してほしい」という切実な思いでもあるのだろう。

 財務省は、宗教を通り越して、カルト教団化している。そして、その教義を守る限り、日本経済は転落を続け、国民生活は貧困化する一方になる。(「まえがき」より)

 本書のページをめくっていくたびに、これが決して大げさな表現ではないことを読者は知ることになるだろう。ザイム真理教という名称自体は冗談めいているかもしれないが、実のところ彼らの考えていること、やっていることは非常に恐ろしいのだということをも。

 それは、著者が本書を世に送り出すまでの経緯にも表れている。2022年末から翌年の初頭にかけて一気に骨格をつくり揚げ、そののちできあがった原稿を大手出版社に持ち込んだものの、軒並み出版を断られたというのである。つまり大手各社は、このテーマの本を出すこと自体を拒んだわけだ。

 私は出版の世界では、言論の自由は守られていると信じていた。もちろんふつうのテーマは自由に書けるし、実際に私もたくさん本を出している。ところが、ことザイム真理教に関してだけは言論の自由がほとんどないのかもしれない。(「まえがき」より)

 そのため出版をあきらめかけていたなか、本書の版元だけが引き受けてくれたのだという。そんなプロセスを経なければならなかったということ自体に問題があるのは明らかであり、そういう意味でも、本書に目を通してみてほしいと強く感じる。

 
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  • ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト森永 卓郎フォレスト出版

 

筆者紹介:印南敦史

作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。 1962年、東京都生まれ。 「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。 著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

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