1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

ソニーPCLのOSVP拠点「清澄白河BASE」が進化、圧巻のスクリーンや撮影車を見てきた

ASCII.jp / 2023年10月2日 8時0分

 ソニーPCLは9月20日、「清澄白河BASE」の最新バーチャルプロダクションシステム、ボリュメトリックキャプチャスタジオを公開した。

訂正とお詫び:本文をより正確な表現に修正しました。(2023年10月2日)

バーチャルプロダクションの実践に取り組む国内拠点

 バーチャルプロダクション(OSVP:On-Set Virtual Production)は、大型ディスプレーに映し出した背景映像の前に物理的なセットを組み、その前で演技する役者や演奏するアーティストの映像を収める撮影手法。特徴は後工程で映像を合成するグリーンバックとは異なり、撮影に立ち会っている人全員がリアルタイムで完成イメージを理解でき、演者もどのような背景の前に自分がいる映像ができるのかを理解しやすい点だ。また、セットや被写体に映り込む背景も自然となり、リアルな映像表現が可能である。

バーチャルプロダクションのイメージ。背面の大型ディスプレーの前で演技し、その様子をカメラでとらえる。
バーチャルプロダクションの特徴として、例えば写真の車体のようにさまざまな背景が映り込み、反射する場合でも後から合成せず、そのまま撮影すればいい。

Crystal LED使用のLEDウォールが幅16K相当に

 清澄白河BASEは2022年2月にオープンした施設。今年に入って、既設で解像度9600×3456画素のLEDウォールに加え、解像度7680×3456画素(画素ピッチ1.58mm)のLEDウォールを新たに追加した。

左の円弧部分は既存だが、これに右側のフラット部分を追加して16K相当のスクリーンとなった。こうした拡張を後からできるのはCrystal LEDならではと言える。

 表示にはソニー製のCrystal LEDディスプレー(Bシリーズ)を使用。もともとあった円弧状のスクリーンに平面スクリーンを組み合わせることで、カメラワークの自由度が増し、対応できる撮影シーンを増やしている。合計した画面サイズは1万7280×3456画素でサイズは横27.36×高さ5.47m。横幅が16K相当になった。

スタジオ設備の説明

 加えて、多面的な照明効果が得られる解像度1536×960画素の可搬式LEDを新規導入。ソニー独自開発で天井LEDの効率的な昇降ができる“クイックキャリブ”、XRシステム/トラッキングシステムを追加している。

 XRシステム(SMOD:スモード)は、AR技術により足りない背景を延長するといった処理も可能となっている。

ボリュメトリックキャプチャスタジオ

 これとは別に昨年7月に「ボリュメトリックキャプチャスタジオ」を開設。ここでは360度方向に100台以上設置したカメラで物体や人物のパフォーマンスをとらえ、3次元のデジタルデータを作成できる。このデータを活用することで、後から自由なアングルで撮影した内容を再現できる。また、実写という特徴を生かし、CGを上回るリアルな映像表現も可能。布や髪と言った計算で再現することが難しいものも自然な動きのまま収められる。同時にVRを始めとしたコンテンツでユーザーが見たい場所を見たい角度から見るといった、インタラクティブなコンテンツも作れるようになる。

 会場では後述する「王様戦隊キングオージャー」と連携して作成したオブジェクトを使用した空間再現ディスプレイやVRゴーグルを活用したデモもあった。

スタジオのスペック
開設までの経緯と取り組み
撮影した3Dモデルの活用
空間再現ディスプレイを使用したデモ。ボリュメトリックキャプチャスタジオで撮影したオブジェクトをたくさん配置している。
空間再現ディスプレイの枠が表示されて、どの部分が見えるかのガイドになっている。

 ソニーPCLの代表取締役 執行役員社長の中村英明氏は冒頭で「進化した清澄白河BASEを体験してほしい」と挨拶。昨年2月の開設以来、清澄白河BASEが多くのCMやMVなどの撮影に活用され、その過程で把握した課題に対応しながらスタジオとしての進化を遂げていると説明し、「ソニーグループの技術と、コンテンツ制作のノウハウをクリエイターにつなぐ役割を今後も果たしていきたい」と抱負を述べた。

 ビジュアルソリューションは成長領域のひとつで、バーチャルプロダクションだけでなく、映像編集やイベント制作、空間設計にも展開したいと考えているという。

実験だけでなく、商業映像への現実的な活用も進む

 清澄白河BASEで撮影した映像は多岐にわたるが、いくつかの事例も紹介された。クリエイティブレーベルのPERIMETRONが撮影したKingGnuのミュージックビデオ「Stardom」はバーチャルプロダクションとボリュメトリックキャプチャの両方を用い、疾走感あふれる映像表現に挑戦している。また、TYO driveの「drive」では、2台の車を活用したカーチェイスシーンを撮影している。これらの映像はメイキング動画もYouTubeで公開されている。

 CM撮影の事例も増えており、芋焼酎「木挽ブルー」の撮影では、撮影時間/天候などの制約が非常に強く、撮り直しが困難なマジックタイムの繊細な映像反射表現にチャレンジ。実写では撮り直しが困難だが、何回も同じ条件で撮影ができるという利点を生かし、グラスの反射表現など理想のディティールにこだわれたという。

 東映「王様戦隊キングオージャー」など、週次のレギュラー番組で使用する事例も出てきている。カメラ位置と連動して背景の3DCGが変化するIn-Camera VFX、2D映像を流して複数の場所でロケをこなすのと同じ効果を得るScreen Process、そしてボリュメトリックキャプチャーという3つの撮影手法を瞬時に切り替えながら週次の撮影に載せていくノウハウも蓄積されたという。美術、CGチームとの連携も大きな糧となった。

 なお、ボリュメトリックキャプチャスタジオの活用事例としては、TBS系で10月から放映される火曜ドラマ「マイ・セカンド・アオハル」などもあるという。

背景アセットや大道具など、ビジネス連携も進む

 スタジオとしての進化点はすでに述べたスクリーンの追加だけでなく、In-Camera VFXに使用するカメラトラッキングシステム「Mo-Sys StarTracker」に加え、オプチトラックを20台ほど設置。また、ワークフローを改善。制作工程の組み方だけでなく、どの技術をどのスタッフィングでやれば、理想のスケジュール感、理想のコストで実現できるかについてのノウハウ蓄積が進んでいるという。

撮影に使用するVENICE 2カメラ。In-Camera VFX用のシステムを装備している。
カメラ位置をトラッキングするために天井にドットが配置されている。
スクリーンの周囲にはトラッカーが追加されている。

 また、バーチャルプロダクションは清澄白河BASEだけでなく、パートナーとの間の連携も広がっている。具体的には、角川大映スタジオと相互連携しながら最新技術の提供をし、スタッフの派遣や技術ノウハウを提供。角川大映スタジオではできないものを清澄白河BASEで補うといった取り組みができた。また、背景素材として使用できるアセット「BACKDROP LIBRARY」についても外部連携し、東急不動産の物件をロケハン・キャプチャ(3DCG化)したり、大日本印刷から神田明神の3DCGアセットの協力を受けるなど、ビジネスの循環を広げる取り組みが進んでいる。

各分野での連携

背景映像を3D撮影するための専用カーも開発

 面白いのは、特許出願中の技術を用いた360度撮影素材。VENICEカメラを向かい合わせで配置し、公道を実際に走って撮影した素材を20点ほど公開したばかりだという。

撮影に使用するカメラ搭載のクルマ

 このほか、「清澄白河BASE」制作シミュレーターとして、ウェブ会議などのリモート環境でも実際の撮影シミュレーションができる仕組みを用意している。

「清澄白河BASE」制作シミュレーター

 バーチャルプロダクションの課題としては、専門知識を持つ人材の不足が引き続きある。ここは清澄白河BASEの知見をドキュメント化したり、スタッフの外部派遣をしたりして、映像業界全体の発展につながるようにしている。

活用事例を紹介

えっ!? リアルな図書館にヒーローや怪人が登場??

バーチャルプロダクションをデモする、ソニーPCL クリエイティブ部門 ビジネスプロモーション部 マーケティング課 櫛山 健一郎氏。
図書館をイメージしたシーンを大道具と組み合わせて実現
背景には多数の本が並んでいる
CG素材であるため、光のあたり方なども現場で見ながら、細かく調整できる
よく見ると、背景にクワガタオージャーや怪人がいる。
ボリュメトリックキャプチャスタジオで撮影したデータを活用し、何人も同時に出す……と言ったことも可能に。

手のかかる自動車のロケも自由度高く

自動車の撮影もリアルに
写真に撮ると映像とは思えないほどリアルだ。
背景も自由に変えられる。
運転者のアップなど、実写では難しいシーンもこだわって撮影できる。
海外の街並みをバックに。複数の国をまたいだロケなどは、日程や予算などで普通は現実的ではないが、バーチャルプロダクションであれば1ヵ所で終えられる。
大自然をバックに。
現実ではあり得ない、サイバーパンクな空間もバックに。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください