1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

アマゾン、得意のスマートホームで活きる「生成AI」関連のデバイス&サービス

ASCII.jp / 2023年10月2日 12時0分

アマゾンが米国の新しい第2本社で開催したデバイス&サービスの発表会を取材しました

 アマゾンが2023年の秋以降に発売するデバイス、提供を開始する新しいサービスの発表会を米国バージニア州アーリントンの第2本社「Metropolitan Park」で開催しました。現地で発表会に参加した筆者が、製品やデバイスに触れて体験した「アマゾンの底力」をレポートします。

ビジュアル化されたUIを搭載 タッチ操作に最適化した「Echo Hub」

 アマゾンは毎年、この時期にホリデーシーズン(クリスマス・年末の時期)に発売するスマートデバイスの新商品と、関連するサービスを発表してきました。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響を受けて、2020年以降はオンラインで実施されてきたイベントが、今年は久しぶりの対面実施。大勢のジャーナリストが集まった会場は活気にあふれていました。

発表会が開催されたバージニア州アーリントンの第2本社ビル「Metropolitan Park」

 アマゾンが発表するデバイスやサービスは「米国オンリー」で提供されるものから、英語圏のみ、あるいは順次世界展開が予定されているものまで様々です。今年アマゾンが発表した新製品の中で、日本でも発売が決まっているアイテムからおさらいしましょう。

●8インチ スマートホームコントロールパネル「Echo Hub」 近日発売予定。2万5980円

画面のタッチ操作に最適化したスマートホームコントロールパネル「Echo Hub」

 8インチのタッチディスプレイを搭載するスマートデバイスです。スピーカーや通話用マイクも内蔵していますが、アマゾンが同じディスプレイ付きデバイスのEcho Showシリーズの一員としてではなく、本機を新たにEcho Hubシリーズとして発表した背景を、アマゾンデバイス インターナショナル バイス・プレジデントのエリック・サーニオ氏が次のように説明しています。

 「Echo Hub」は、Alexaに対応するスマートデバイスをお使いのユーザーが、それぞれの機器を直感的に操作しやすくすることを目的に開発されたスマートホームコントローラーです。

Echo Hubの特徴を語るエリック・サーニオ氏

 その操作方法についてもEcho Hubらしさが追求されています。

 Echo Hubは、タッチ操作の快適さを追求した『Touch Forward』なデバイスであるところも特徴です。もちろん音声によるAlexaの操作にも対応していますが、画面を見ながら視覚的な操作もしやすいように、ビジュアルのユーザーインターフェースのデザインにもこだわりました。市場を見渡せば、他にも沢山のメーカーがスマートホームコントローラーを商品化しています。

 ところがいずれも値段が高く設定が複雑だったり、互換性の課題もあります。Echo Hubは、Alexaで操作可能な14万満点以上のスマートホームデバイスとの互換性を確保しています。スマートホームの新しい共通規格であるMatter、無線通信規格のThreadにも対応します。

ユーザーがデバイスに近付いたことを感知して、ホーム画面とアプリの表示を切り替える「Adaptive Content」

 ホーム画面には宅内のスマート家電を操作するためのウィジェットを自由に配置して、ユーザーが使いやすいようにカスタマイズができます。「Adaptive Content」という、ユーザーがデバイスに近付いたことを赤外線センサーで検知して、ユーザーがデバイスに近づいた時にホーム画面を表示。遠くにいる場合は時刻やお気に入りの写真を表示する機能も新設されます。

 アマゾンのプレスリリースの画像だけでなく、発表会のタッチ&トライコーナーでもEcho Hubの展示形態は「壁掛け」だけでした。アマゾンのスタッフに聞いたところ「デスクトップ用スタンドも発売する」そうですが、アマゾンのサイトを見ると日本は発売未定となっています。壁掛け前提になってしまうと賃貸の住まいには導入しづらかったり、家具の配置変えが必要になったり、何かと面倒が増えます。ぜひ色んな置き方ができるようにオプションのアクセサリーを揃えてほしいです。

モバイル版(iOS)のAlexaアプリに追加される「Map View」。宅内のスマートデバイスマップを見ながら操作ができます

 なお、米国のみ導入予定のサービスとして、Echo Hub的なことをモバイルのAlexaアプリに追加できる「Map View」という新機能も発表されました。

 Map Viewには、LiDARスキャナを搭載するiPhone(12以降のProシリーズ)でしか当面使えないという条件がありますが、その使い勝手はなかなかユニークです。iPhoneでユーザー宅の3Dスキャニングを済ませると、マップが自動生成されます。できたマップにAlexa対応のスマートデバイスを配置すると、画面を見ながら視覚的に操作できるようになります。「音声で動かしたいけれど、あのデバイスの“名前”はなんだったっけ?」と忘れた時に、「Map ViewやEcho Hubがあってよかった!」という実感もわきそうです。

2023年の新しいFire TV Stick 4Kシリーズ

Fire TV StickもAI機能を強化

 HDMI接続のメディアストリーミングプレーヤー、Fire TVシリーズも上位の4K対応モデルが一新されます。デザインも角が取れて柔らかくなりました。

●メディアストリーミングプレーヤー「Fire TV Stick 4K Max」 10月18日出荷予定。9980円 ●メディアストリーミングプレーヤー「Fire TV Stick 4K」 10月18日出荷予定。7480円

 通常のFire TV Stick 4Kと比べて、Maxは内蔵ストレージが2倍の16GB、Wi-iFi通信はWi-Fi 6E対応です。2.0GHzの高性能クアッドコアプロセッサーを活かして「アンビエントディスプレイ」という機能を新設。ストリーミングコンテンツを視聴していない時には、Fire TVを接続したテレビの画面にデジタルアートを表示。絵画のように楽しめます。

テレビの表示を絵画のように楽しめる「アンビエントディスプレイ」

 Fire TV Stickシリーズにも、米国のみ導入されるサービスが2つあります。ひとつはユーザーが撮影してアマゾンのクラウドフォトストレージなどに保存した静止画に、アーティスティックなエフェクトをかける、アマゾン独自のジェネレーティブAIによる画像生成の機能です。

 もうひとつは動画検索がより自然な「話し言葉」による音声入力に対応します。Fire TV StickのAlexaに対応する音声検索は、今でもある程度見たい動画が決まっている時にはとても便利に使えます。ところが、特に見たい作品のジャンルや主演俳優などのあてもない時には、おもしろそうな動画に出会えません。

生成AIを使ったFire TVシリーズのコンテンツ検索を紹介するダニエル・ラウシュ氏

 アマゾンがFire TV Stickシリーズにソフトウェアアップデートで追加を予定している機能は、Alexaと「会話を交わす感覚」でおもしろそうな動画を探す使い方に向いています。発表会のステージにAmazon Alexa、およびFire TV担当のバイスプレジデント、ダニエル・ラウシュ氏が登壇してデモンストレーションをしました。

 リモコンのマイクに向かって「アクション映画が観たい。無料で見られて、僕が今まで見たことがない作品。10代の家族と一緒に見られるような内容がいい」といった具合に、合間に検索結果を表示しながら、徐々に検索条件を絞り込んでいくと、Alexaが期待に添うタイトルを見つけてくれます。デモンストレーションはAmazon Prime Videoで披露されましたが、ほかの動画配信プラットフォームでも使える機能なのでしょうか。

 米国では年末に予定しているソフトウェアアップデートにより新しい検索機能が追加されます。日本語への対応も含めて今後の展開に注目しましょう。

パフォーマンスを強化した10インチFire HDタブレット 視線操作にも対応

 10インチのFire HDタブレットも、プロセッサの強化などにより一新されます。6〜12歳のユーザーをターゲットに見すえた「キッズプロ」のモデルは、数千点の子ども向けの使い放題コンテンツ「Amazon Kids+」を1年分と、2年間の限定保証、専用スリムカバーやペアレンタルコントロールの機能を付けた価格となります。

●10インチ FireOSタブレット「Fire HD 10」 10月18日出荷予定。1万9980円(32GB) ●10インチ FireOSタブレット「Fire HD 10 キッズプロ」 10月18日出荷予定。2万3980円(32GB)

子ども向けの上位モデル「Fire HD 10 キッズプロ」

 なおFireタブレットシリーズについて付け加えると、2023年の6月に日本でも発売されたフラグシップモデル「Fire Max 11」に、視線トラッキングによりハンズフリー、音声フリーで操作できるアクセシビリティ機能の「Eye Gaze Mode」がソフトウェアアップデートにより加わります。こちらの機能は日本でも使えます。

日本上陸も楽しみ! アマゾンの米国先行発売製品

 以下は米国から先行発売されるアマゾンの新しいスマートデバイスです。中には日本に展開される日がそう遠くなさそうな製品もありますが、期待して待ちましょう。

●「Amazon Echo Show 8 Gen 3」 10月出荷開始(米国)。149.99ドル(約2.2万円)

デザインも一新した第3世代の「Amazon Echo Show 8」/p>

 Amazon Echo Showシリーズから、8インチのタッチディスプレイを搭載する第3世代のモデルが登場します。ポイントは1台で空間オーディオ再生に対応すること。スピーカー構成は2基のフルレンジとパッシブラジエーターとシンプルですが、Amazon Echo Studioに続くシリーズの空間オーディオ対応スピーカーとして、空間オーディオエンターテインメントの認知拡大に一役買いそうです。

●「Amazon Echo Frames」 10月出荷開始(米国)、近日発売。269.99ドル(約4万円)から

第3世代のEcho Frames

 Alexaに対応するマイクとスピーカーを内蔵する「アマゾンのスマートアイウェア」です。レンズはサングラス・度付き・ブルーライトカットの3種類から選べます。動画を視聴することを目的としていないスマートアイウェアなので、ディスプレイは搭載していません。

 Bluetoothで接続したスマホやPCと連携して音楽を聴いたり、ハンズフリー通話に使えます。Echo Framesシリーズは試験的に導入されたDay 1プロダクトから数えると本機が「3世代目」ということもあり、洗練されたデザインになりました。

サングラスバージョンのEcho Framesを装着する筆者。軽く心地よい装着感と、音もれが気にならないサウンドのバランスがとても良かったです

 スピーカーの“音もれ”もよほど大きな音で鳴らさない限り気になりません。通勤電車や静かなカフェでボリュームに配慮すれば活用できる場面は多くありそうです。

●「Fire TV Soundbar」 近日発売。119.99ドル(約1万8000円)

コンパクトサイズな「Fire TV Soundbar」

 Fire TVシリーズ初の2.0チャンネル構成のコンパクトなサウンドバーです。アンダー2万円の入門機なので、さすがにドルビーアトモスやDTS:Xなどのイマーシブオーディオコンテンツのネイティブ再生には非対応です。ただ、eARC対応のHDMI端子も備えているので、ホームシアター機器やゲームコンソールにつないで便利な楽しみ方ができそうです。Bluetoothによるワイヤレス再生も可能。

 いま1〜2万円前後のサウンドバー市場が何気にホットです。本機が参戦することによってますますバトルが激しくなりそうです。

アマゾン独自の生成AIによる新機能「アレクサ、チャットしよう」

 アマゾンは独自開発による生成AIを、Alexaに結び付けた新しいサービスもお披露目しています。米国先行で2024年から、Amazon Echoシリーズのすべてのスマートスピーカー、スマートディスプレイで使えるようになります。

 サービスの特徴がイメージしやすいように簡略化して言うと「OpenAIのChatGPTみたいなチャット機能」です。名称はずばり「Alexa, let's chat」(アレクサ、チャットしよう)。Alexaを搭載するスマートデバイスと、音声で会話を交わしながら使えるところがアマゾン流です。

 発表会ではアマゾン デバイス&サービス事業部 シニア・バイスプレジデントのデイブ・リンプ氏がステージに立ち「Alexa, let's chat」の実演を、大勢のジャーナリストの眼前で披露しました。その模様はAmazon Newsの公式YouTubeチャンネルに動画が公開されています。タイムラインの15分15秒前後です。

Amazon Alexaの新機能「Alexa, let's chat」を責任者が実演

 Alexaが事前に覚えたリンプ氏が「応援するNFL(アメフト)のチーム」の成績や最近の調子について、まるでリンプ氏と旧知の仲のように会話を交わしています。

「Alexa, let's chat」のデモンストレーションのステージに立つリンプ氏

 リンプ氏の方がアレクサに対するリクエストに詰まることなく、リズム良く話しかけられているからでもありますが、通常は必要になる「アレクサ」や「エコー」など、Alexaを呼び出すためのウェイクワードを都度リンプ氏が発声していません。AIによるチャット生成のほかに、Echoデバイスが内蔵するマイクやカメラなど複数のセンサーを駆使して集めた情報を解析して、ウェイクワードのいらないスムーズな会話を実現しているそうです。

 リンプ氏は同じNFLのチームを応援する友だちを自宅に招いて、次の試合の日にバーベキュー大会を開くことを思いつきました。バーベキューに最適なサイドメニューをAlexaに聞き、試合の日のシアトルの天気を確認。Alexaが生成した「招待状メールの下書き」を自身のメールアドレスに送ってもらい(18分30秒前後)、無事にデモンストレーションが終了しました。

アマゾンが提供するAPIにより、AIにより音楽・歌詞の生成を楽しむアプリ「splash」のAlexaデバイス対応スキルが実現します

 アマゾンは外部デベロッパのため、生成AIをベースにしたスキル開発のためのAPIも公開しています。発表会では米国のスタートアップ「splash(スプラッシュ)」による、生成AIで作曲が楽しめるアプリがAmazon Echo Showシリーズで楽しめるイメージを紹介しました。

 アマゾンのリンプ氏は壇上で「いま話題を振りまくジェネレーティブAIを活用したサービスの中で、既にローンチしているものはビジネスユースやクリエイター向けのものが多い。アマゾンはユーザーのスマートホーム体験を豊かにするために、ジェネレーティブAIやLLM(大規模言語モデル)を含む様々なAIに関わるテクノロジーを育ててきた。2014年に誕生したAlexaは時間をかけて、ここまで成長を続けてきた。今後も最先端のAIテクノロジーを取り込みながら、Alexaをユーザーにとってスマートホームの最良のパートナーにしていきたい」と宣言しました。

 私たちはまずひたすらに、サービスの日本語対応の時期が気になるばかりです。アマゾンがフルスロットルで頑張ってくれることを期待しましょう。

1階のパブリックビジター用スペース。アマゾンやAlexaの歴史に触れられるコンテンツが用意されています

拡大するアマゾン。生成AIで再び勢いに乗るか?

 今回アマゾンが発表会を実施したMetropolitan Park、通称「Met Park(メットパーク)」は2023年5月にオープンしたばかりの新しい施設です。22階建ての2つのビルディングは「Jasper(ジャスパー)」と「Merlin(メルリン)」として名付けられました。

メットパークの外壁のサンシェードは建物への直射日光を抑え、冷房エネルギーを節約。まぶしさを軽減する効果もあります

 構造体には低炭素コンクリートとマス ティンバー集成材木材を使い、地元バージニア州で発電した再生可能電力によるオペレーションを徹底しています。また雨水や館内で利用された水を再利用するための、エコで最新鋭のリサイクルユースシステムを有しています。

1階の屋外カフェスペース。地元の生活者にも開放しています

 渡り鳥の飛行経路にほど近い場所に立地するMet Parkは、地元の野生生物との共生を目指しています。2棟のメインビルの屋上は地元の自生植物により緑化され、渡り鳥が羽を休められる環境が整っています。19箇所の屋外テラスは社員の憩いのスペースになっており、また1階には誰でも立ち寄れるカフェスペース、ドッグランなどの施設があります。

地元に拠点を置くアーティストの作品などがガーデンに展示されています

 館内の社員向け設備のデザインも広々として洗練されていました。「センター・オブ・ エナジー」として名付けられたフリースペースにはカフェやミーティングスエリアが充実しています。22階建てのビルは低層階から社員の入居を始めていますが上層階がまだ内装の工事等が進められています。低層階にはまだグループミーティングのスペースが作りかけだったり、各所に真新しさが感じられるビルディングでした。

「センター・オブ・ エナジー」の広々としたホール
アマゾンの写真が仕事や休憩に使えるスペースが充実しています

 アマゾンはシアトルの本社に続き、この場所を第2の本社(HQ2)と位置付けて、ビジネスの成長をさらに加速させる考えです。周辺地域への投資などにより、2030年までに25,000人のアマゾンの雇用を創出する計画も発表しました。地域全体では数千人の間接雇用をサポートできる施策を有していますが、現在までのところ、HQ2で8000人以上のアマゾンの雇用を創出したそうです。

 アマゾンのサーニオ氏は「アーリントンでの本社拡大は、地元の方々の応援を背に実現できたこと。地域に恩を返しながら、世界中に展開するアマゾンの拠点の仲間たちと一緒に事業拡大を加速させます。今回発表した最先端のAIを活かしたサービスにも一段と積極的に投資します」と、HQ2が順当な船出を切れたことを強調していました。

 イベントを取材した筆者も、パンデミックを乗り越えてふたたび大きな波に乗ろうとするアマゾンの「勢い」を肌に感じました。話題づくりではOpenAIやGoogleが先行した生成AIについても、これからアマゾンがより「家庭に近い」サービスやデバイスを届けてくれそうです。

 

筆者紹介――山本 敦  オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください