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進化したグーグル「Pixel 8」が示すスマホ業界の新たな動向(石川温)

ASCII.jp / 2023年10月6日 7時0分

 グーグルは10月4日、新製品スマートフォン「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」を10月12日に発売すると発表した。国内ではGoogleストア以外にも、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが取り扱う。

「Tensor G3」チップとAIを活用した動画編集機能に注目

 Pixel 8とPixel 8 Proはグーグルが設計したチップである「Tensor G3」とAIの組み合わせが特徴だ。特にカメラ関連では、集合写真を撮影する際、目をつぶっていたり、別の方向を見ていた人がいた場合、複数回、シャッターを押しておけば、それぞれベストな表情を選択できる「ベストテイク」機能がスゴイ。

集団で撮影した際、それぞれのベストな表情を選択できる「ベストテイク」機能
数回タップするだけで、被写体の位置やサイズを変更できる「編集マジック」

 また、前モデルまでは背景に写っている余計なものを消せる「消しゴムマジック」が人気であったが、今回からは動画撮影後、余計な騒音や人の声を消せる「音声消しゴムマジック」がとても便利そうであった。

 これまでパソコンにデータを移して、動画編集ソフトで苦労しながらノイズを消す作業が必要であったような動画でも、Pixel1台で簡単に騒音などが消せてしまうのだ。

 スマートフォンはデザインや外観などはすでに完成の域に突入しているが、中身、特にAI関連の進歩はまだまだめざましいものがあると言えるだろう。

動画撮影後、余計な騒音や人の声を消せる「音声消しゴムマジック」

Pixelの出荷シェアが急成長 グーグルの「垂直統合モデル」が軌道に

 ここ最近、Pixelの存在感が増しているというのがスマホ業界のトピックだ。

 調査会社であるIDCによると、2023年第2四半期(4〜6月)の出荷台数ベースのシェアで、Pixelが15.4%とiPhoneに次ぐ2位に躍り出たという。しかも、3位サムスン、4位FCNT、5位ソニーに倍近い割合になっているから驚きだ。

 今年前半、グーグルは、廉価版モデルとなる「Pixel 7a」を投入。また、n79というNTTドコモしか持たない周波数帯に対応したことで、NTTドコモでの取り扱いが始まった。

 ソフトバンク、KDDI、NTTドコモという3キャリアが販売を争ったことで、シェアが大きく拡大した模様だ。

 実際、Pixelはソフトバンク独占時代やKDDIでの取り扱い開始でも、販売に苦戦していた過去がある。iPhoneと同じく、NTTドコモを含めた3キャリアの販売合戦が始まったことで、値下げなどのキャンペーンが過熱し、一気に売上げを伸ばした模様だ。

 ただ、グーグル関係者はキャリアの販売力というよりも「Pixel 6aぐらいから、ハードとAIによるソフトウェア処理が融合し、使い勝手が大きく向上したのが理由ではないか」と語る。

 Androidを手がけるグーグルが、ハードウェアも同時に開発、設計するという「垂直統合モデル」が軌道に乗ってきたというわけだ。

 グーグルでは世界的にユーザー調査を徹底的に実施し、開発にフィードバックを反映している。日本では文字入力関連、アメリカではバッテリーに対する不満が多かったようだが、そうした声に対しても、真摯に開発をすることで、使い勝手の向上に繋げているようだ。

Googleストアでは独自のキャンペーン施策を展開中

グーグルと日本メーカーが共存共栄できる施策に期待

 実はグーグルは特に日本市場を重視している。香港の調査会社であるカウンターポイントリサーチによれば、Pixelの国別出荷シェアで、2023年1〜3月においては日本が34%と世界最多だったことが明らかになった。

 そんななか、Androidというプラットフォームを提供するグーグルが、ハードウェア展開に本気になってきたことで、逆風が吹き始めているのが、これまでAndroidスマートフォンを手がけてきたメーカーだ。

 10月3日に「AQUOS sense8」を発表したシャープは「プラットフォーマーのスタンダードスマートフォンも出ている。これは大きな地殻変動だと言える」(小林繁通信事業本部長)とPixelの躍進に警戒感を示す。

 実際、Androidスマートフォンの販売シェアではトップを維持していたシャープだったが、先述のIDCの調査ではPixelに首位の座を奪われてしまっている。

 これまで、シャープはAQUOS senseシリーズが台数を稼いできたが、Pixel 7aというまさにミドルレンジの価格帯で競争力のあるスマートフォンに苦戦している感があるのだ。

 グーグルが強いのがやはり販売施策に多額の予算をつぎ込めることだろう。Googleストアを見ると、まず飛び込んでくるのが「Pixel 8とPixel 8 Pro、どちらを買っても3万9800円より」というコピーだ。

 実際は、iPhoneやPixelなど、いま使っているスマホを下取りに出すというのが前提ではあるが、それとは別にPixel 8 Proなら5万円分の次回以降に使えるストアクレジットがもらえるようになっている。下取りを組み合わせれば、10万円を切ってくるだけに一気に割安感が出てくるのだ。

 ただ、次回以降に使えるストアクレジットと言うことで、結局、支払い自体はそこまで安くなっていない。しかし、ストアクレジットで5万円分も支給されると言うことは、次もPixelを買わなくてはということになるだけに、結局、Pixelに囲い込まれることになる。

 今年、日本市場においては京セラやFCNTがスマホ事業の見直しをした。このままグーグルがPixelを頑張れば頑張るほど、京セラやFCNTに続くメーカーが出てきてもおかしくない。

 数年後、「日本のスマホ市場にはアップルとグーグル、中国メーカーとサムスンしか残らなかった」なんてことがないよう、グーグルにはPixelでAndroid市場を盛り上げつつ、パートナーである日本メーカーも繁栄し、共存共栄できる施策を期待したい。

 

筆者紹介――石川 温

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)、『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

 

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