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NTT法廃止に猛反発。NTTの失敗は、ドコモ完全子会社化で信頼を失ったことだ

ASCII.jp / 2023年10月23日 7時0分

ソフトバンク宮川潤一社長 筆者撮影

「徹底的に議論し、世論として国民に説いていきたい」

 ソフトバンク宮川潤一社長、KDDI髙橋誠社長、楽天モバイル鈴木和洋共同CEOの3人が同席した共同説明会が10月19日朝、開かれた。

 テーマは「NTT法のあり方について」。宮川社長は冒頭のように徹底的な議論が必要だと力説する。

 実は共同説明会直前、3人とオンラインで参加した楽天モバイルの三木谷浩史会長、さらにNTTの島田明社長は自民党に呼ばれ、NTT法のあり方についてヒヤリングをされていたのだ。

 NTTの島田社長は「NTT法の役割は終わった。廃止すべし」というスタンスなのに対して、競合3社は「一部見直しには賛成するが、廃止は絶対に反対」という主張する。

 両社の議論は平行線を辿ったままだ。

見直しには一部賛成も「維持すべき」点は多い

 NTTは特殊法人としてNTT法が制定されている。

 研究成果を開示する義務があったり、社名変更することが認められなかったり、取締役に外国人を起用できないなどの制限がある。

 NTTとしてはそうした縛りがあることで、国際競争力が損なわれていると主張。だからこそ、NTT法を廃止してほしいというわけだ。

 NTTは日本電信電話株式会社が正式名称だが、もはや電信は扱っていない。NTTとしては電信を削除し、名前を変更したいようなのだが、それに対してソフトバンクの宮川社長は「名前が変えられないからNTT法を変えたいというのならば、その名前をウチに譲ってほしい。『日本電信電話ソフトバンク』という名称にしてもいい。NTTというのは日本を代表する世界に通用するブランドだ」と語る。

 ただ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルともに研究成果の開示義務、社名変更、取締役の選任に対する規定に対しては「見直してもいい」と理解を示す。

 一方で、NTT法で「維持すべき」としているのが「NTTグループの一体化への防止」「全国6000万ユーザーへのあまねく提供義務の維持」「公共性の高い通信に帯する国のコントロール権の確保」だ。

もしNTTグループが一体化すれば競合には不利

 特に3社が警戒しているのが「NTTグループの一体化」だ。NTT法がなくなることで、いまは分離されているNTTとNTT東西、さらにNTTドコモが一体化する可能性が出てきてしまう。

 3社はNTT東西に光ファイバー網を接続してもらって、全国の5Gや4G基地局を運営している。これがNTTドコモと一体化してしまえば、不利な条件での接続を強要されるかもしれないと恐れているようなのだ。

 NTTの島田社長は「NTTとNTT東西、NTTドコモを統合する考えはない」としているが、3社の社長は全く島田社長のことを信じていない。

 髙橋社長は「(再統合するつもりがないなら)法律に書いておかないといけない。分離分割の方向が閣議で決まっていたにも関わらず、法律に書いていないからとNTTはNTTドコモを完全子会社化してしまった。こういうことをされるので、基本的には法律に残しておかないといけない」と語る。

KDDI髙橋誠社長

 宮川社長も「NTTはNTTドコモの完全子会社化をしれっとやってしまった。あと、10年、20年後、いま我々がこの事業をやっている世代の人間が気がついて、声を出さないといけない」と苦言を呈す。

 楽天モバイルの鈴木共同CEOも「会社というのは経済合理性第一で動く。約束が反故にされるリスクが大きいと考えるべき」と主張する。

楽天モバイル鈴木和洋共同CEO

 確かにビジネスの世界で、口約束を信じて物事を進めることはしない。契約書など紙に残してサインをするのが常識だろう。島田社長の「NTTとNTT東西、NTTドコモの統合はない」という口約束だけでは誰も信じることない。

NTTドコモ完全子会社で業界の信頼失ったのが失敗だった

 今振り返ってみれば、やはり、2020年のNTTによるNTTドコモの完全子会社化を拙速に実行してしまったことで、業界からの信頼感を一気に失ってしまったのが失敗だっただろう。

 当時もNTTによるNTTドコモの完全子会社化に対して疑問を投げ返る声があったが、NTTとしては「法制度上の問題はないと受け止めている」(NTTの澤田純社長、当時)として、TOBを強行してしまった。

 本来であれば、もっと総務省もしっかりと議論する場を設け、関係各所が納得するカタチでTOBに移行すれば良かったが、あまりにしれっと完全子会社化してしまったものだから、高橋社長や宮川社長とすれば「口約束なんて信じられない。今度こそは阻止しないと」と、腕をまくり上げているのだろう。

 実は今回のNTT法についても、自民党のプロジェクトチームは11月中に提言のとりまとめをする計画で、党内の意見集約にかかっている。

 もはや、競合3社に残された時間は限られているのだ。

国民生活への影響をわかりやすく伝えるべき

 現状、NTT法が廃止されたからといって、我々の国民の生活にどのような悪影響があるのか、またどんなメリットがあるかもピンとこない。

 自民党としても国民の支持につながる方を尊重するはずだ。

 宮川社長は「世論として国民に説いていきたい」としているが、NTTも競合3社も、企業同士の小競り合いではなく、NTT法による国民生活への影響をもっとわかりやすく伝えるべきだろう。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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