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【レビュー】新AirPods Pro、USB-C対応で変わること・変わらないこと

ASCII.jp / 2023年10月20日 19時0分

USB-Cコネクターを搭載する“新しい”「第2世代のAirPods Pro」

 アップルが、デジタルコネクターをLightningからUSB-Cに変更した新しいAirPods Proを9月22日に発売しました。このイヤホンがユーザーの体験にどんなインパクトをもたらす製品なのか、実機を試してわかったことをレポートします。

第2世代AirPods Proの後継機。USB-C対応のメリットは?

 AirPods Proといえば、2022年9月にノイキャン性能を高めて、充電ケースには紛失防止等に活用できるブザー音を鳴らすためのスピーカーを内蔵したり、多くの機能追加をした「第2世代のAirPods Pro」が発売されました。

 今年アップルが発売するAirPods Proは、この第2世代機をベースとしたノイズキャンセリングと外部音取り込みの機能などを搭載する人気モデルの後継機です。この後で紹介するいくつかの機能が追加されていますが、価格は3万9800円に据え置かれました。USB-Cモデルの発売を受けてLightningモデルは生産を完了。店頭に残っている在庫が売り切れると、新品は購入できなくなります。

 大きな変更点は充電用のデジタルコネクターがアップル独自のLightningから、汎用性の高いUSB-Cになることです。バッテリーの容量や充電速度は変わりません。充電はUSB-Cケーブルをケースに挿すか、またはApple Watchの充電器、MagSafe充電器、Qi互換のワイヤレス充電器も使えます。

左がLightning、右がUSB-Cの第2世代AirPods Pro。ケースにはスピーカーやストラップホールも設けられています

 コネクターがUSB-Cになる一番のメリットは、iPadやMacBookなど既存のアップルデバイス、または他のUSB-Cケーブルによる充電に対応するPCや周辺機器と同じ充電ケーブルが使えるようになることです。

 アップルが同日に発売したiPhone 15ファミリーもデジタルコネクターがLightningからUSB-Cに置き換わったので、同じ充電ケーブルが使えるという意味では、今まで通りの利便性が確保されます。今回アップルがUSB-CのAirPods Proを初めて発売した理由は、iPhone 15ファミリーと一緒に使う際の不便をなくすことに他なりません。以下は筆者の予想ですが、続いて他のAirPodsシリーズもUSB-Cモデルに順次置き換わることになるでしょう。

 新しいAirPods Proも、第2世代のモデルどうしでイヤホンの外観は変わりません。充電ケースもまた、デジタルコネクタを注視しない限り、他の向きからはAirPods Proを作った人でさえ、見分けることが難しいと思います。

Apple Vision ProとAirPods Proを組み合わせた時にロスレスオーディオ再生に対応します

ロスレスオーディオ再生の追加は何のため?

 デジタルコネクターがUSB-Cになること以外にもうひとつ、Lightningモデルから大きく変わったポイントがあります。ロスレスオーディオ再生への対応です。

 ただ、AirPods Proでロスレスオーディオ再生を楽しむために欠かせないコンテンツプレーヤー機器が、2024年に発売を予定するヘッドセット型空間コンピュータ「Apple Vision Pro」に限定されています。USB-CモデルのAirPods ProとApple Vision Proをペアリングすると、両方の機器が内蔵する「Apple H2」チップが連携して、ワイヤレスで最大48kHz/20bitまで非圧縮(ビットレートは約1.9Mbps)で送り届けることができるようになります。

 筆者は先日Apple Parkで開催された新製品発表会の機会に、本件の詳細を取材しました。ロスレスの無線伝送は「アップル独自」の技術であることまでは判明しました。ただ、Bluetoothオーディオのコーデックにアップルが独自の手を加えて実現したものであることを、明快に否定できる情報までは集め切れませんでした。Apple Vision Proの発売を待って、または他にもAirPodsシリーズによるロスレス体験に対応するデバイスが登場することがあれば情報を深掘りしてみたいと思います。

 AirPods Proのロスレスオーディオ再生は、Apple Musicにロスレス音質のコンテンツが登場してから、多くの音楽ファンが「AirPodsで聴きたい!」と待ちわびている体験です。なのになぜ、今回iPhone 15ファミリーとの組み合わせではなく、空間オーディオにも対応するサウンドシステムを既にビルトインしているApple Vision Proとの組み合わせで実現することになったのでしょうか? 筆者はその技術が「どうやって」実現するのかよりも「何のため」なのかが気になっています。もちろんApple Vision Proで、Apple Musicのロスレスコンテンツがいい音で再生できればうれしいと思いますが。

空間オーディオに対応するサウンドシステムを内蔵しているApple Vision Proがなぜ、AirPods Proと組み合わせるロスレスオーディオ再生の機能を必要とするのでしょうか

 Apple Vision Proの内蔵カメラに続き、iPhone 15 Proシリーズも対応することが明らかになった「空間ビデオ(Spatial Video)」を撮る時に、「音声はバイノーラルで記録して、ノイズキャンセリングもかけられるAirPods Proにロスレスで送り出して聴けば満点の没入感」といった方向の使い方が予定されているのかもしれません。

ソフトウェアアップデートにより、第2世代のAirPods Proに3つの新機能が加わりました

ノイキャン効果を自動最適化する「適応型オーディオ」

 USB-CモデルのAirPods Proの発売に合わせて、第2世代のAirPods Proにはソフトウェアアップデートにより3つの新しい機能が加わります。

 ひとつが「適応型オーディオ」です。ユーザーがいる場所の環境ノイズの状況に合わせて、AirPods Proがノイズキャンセリングと外部音取り込みの「バランス」が最適になるよう自動的に調整する機能です。

 第2世代のAirPods Proからノイズキャンセリングの消音効果が、初代のモデルに比べて約2倍に強化されました。ノイズキャンセリングを有効にすると、隣で話している人の声もほぼ聞こえなくなり、音楽などを再生すると完全にシャットアウトされます。外部音取り込みにモードを切り換えると、他のワイヤレスイヤホンに類を見ないほど周囲の環境音がクリアに聞こえてきます。ふだんはノイズキャンセリングをかけつつ、周りの人に話しかけられたり、ドアベルが鳴った時などに反応できるようにしたいというユーザーのフィードバックを受けて、適応型オーディオが新たに作られたそうです。

 AirPods Proのソフトウェアアップデートが完了すると、デバイスの設定画面の「ノイズコントロール」にタップして切り換えられるメニューが加わります。コンテンツ再生を始めると、コントロールセンターのAirPodsの音量スライダーを長押しして、ノイズコントロールの切り換えを選択後、ノイズキャンセリング/外部音取り込み/オフのほかに「適応型」が選べるようになります。

AirPods Proのノイズコントロール設定から適応型オーディオが選択できます

 モードの切り替えは、AirPods Proの設定画面から「AIRPODSを長押ししたときの操作」の中に「適応型」を割りあてれば、イヤホンの感圧センサーリモコンの長押し操作で素速くできるようになります。切り換えが実行されたことを知らせるチャイムも、適応型の音が新設されているので、現在の設定モードは「聞きわけ」ができます。

空の旅の道中。機内でAirPods Proの適応型オーディオを試しました

 筆者は今回、新しいAirPods Proを飛行機の中で試してみました。筆者の体感では「ノイズキャンセリング」モードの消音効果が100%だとすれば、「適応型」モードに切り換えても60〜70%前後の消音効果が得られます。そのうえで機内アナウンスが聞こえてきたことが音楽を再生しながらでもわかるほど「外部音取り込み」の効果も得られます。小さな子どもの泣き声も消音効果を通り抜けて聞こえてくるので、ご家庭でAirPods Proがより活用しやすくなりそうです。

会話検知、パーソナライズされた音量はAirPodsの設定から必要に応じてオンとオフが選べます

音声コミュニケーションをサポートする「会話検知」

 残り2つの新機能である「会話感知」と「パーソナライズされた音量」も、AirPods Proの設定画面からオンとオフが切り換えられます。

 会話検知は、ユーザーがAirPods Proを身に着けて音楽などを再生している最中に「ユーザー自身が会話を始めたこと」をイヤホンがすぐに検知して、再生中のサウンドをボリュームダウン、環境音を取り込むモードに切り換えます。会話が終わると、数秒ほどしてからコンテンツのボリュームが元に戻ります。対面コミュニケーションの際に便利な機能です。

 会話検知がApple Musicの“カラオケ機能”である「Apple Music Sing」とぶつからないのか試してみました。アイコンをタップしてSingモードを有効にすると、同時に会話検知は無効になるようです。ユーザーの歌声を会話音声と認識して、ボリュームを下げてしまわないようにうまく作り込まれています。ただ、歌い終わったらSingモードを無効にしないと、会話検知が無効なままになってしまいますので注意しましょう。

 「パーソナライズされた音量」は周囲の環境に合わせて、コンテンツのサウンドを自動的にアップダウンして最適化する機能です。自動ボリューム調整の機能は、他社のイヤホンやヘッドホンにも時々搭載されています。中には屋外を歩いて移動している時、とっさに大きめの音が聞こえてくるとボリュームを下げてしまったり、自動調整が頻繁にかかりすぎる製品もあります。AirPods Proの「パーソナライズされた音量」は外部音から影響を受けることも少ない印象ですが、設定のデフォルトは「オフ」になっていますので、好みに応じてオンに切り換えて使えば良いと思います。

AirPods Proは飛行機の旅にも最適。ひとつ注意点も

 先述の通り、筆者はデジタルコネクターがUSB-Cになった新しいAirPods Proを飛行機の中で試してみましたが、やはり音楽や映画のサウンドに深く没入できるノイズキャンセリングの高い効果が魅力的なワイヤレスイヤホンです。かつてのノイズキャンセリングイヤホンは、飛行機のエンジン音など強いノイズは消去しきれず、耳を覆うノイズキャンセリングヘッドホンと性能差もありました。今はもう、この手のひらサイズのAirPods Proがあれば十分。機内に持ち込むバックにより多くの空きスペースが確保できます。

 充電ケースにはストラップが付けられるので、機内でうっかり紛失する心配もありません。アップルのデバイスどうしで「自動切り替え」が使えるので、MacBookでインタビューのテープ起こしをしながら、合間にiPhoneに切り換えて動画や音楽を聴いてひと休みという使い方が機内でもスムーズにできました。

機内や空港施設ではUSB-Aタイプの充電ケーブル、またはUSB電源プラグを備えるようにしましょう

 USB-Cはデジタルデバイスどうしで充電ケーブルを使い回せる等の意味では汎用性の高いコネクターですが、機内に空港、ホテルなどではまだUSB-Aコネクタによる電源サービスの方が一般的です。新しいAirPods Pro、iPhone 15ファミリーのユーザーはしばらくの間、空の旅には片側がUSB-Aの充電ケーブルを機内持ち込みの荷物に入れて出かけることをおすすめします。

 

筆者紹介――山本 敦  オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

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