「Adobe MAX 2023」注目の生成AI新機能・新サービス、アップデートまとめ
ASCII.jp / 2023年10月23日 12時0分
アドビは10月10〜11日(現地時間)の2日間、クリエイター向けの年次イベント「Adobe MAX 2023」を米ロサンゼルスで開催。約1万人のクリエイターが会場に足を運んだほか、多くの視聴者がキーノートなどをオンラインで視聴した。筆者はアドビが実施したプレスツアーに参加し、現地で実施したキーノートやブース展示を取材した。
2023年のAdobe MAXの主役は、2022年の同イベントではまだその名前すらなかった、生成AI「Adobe Firefly」だ。今年3月に発表され、9月にブラウザ上で利用できるAdobe Firefly ウェブ版の提供が開始されたばかりだが、すでに「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustrator」にも一部機能が搭載され、大きな話題を集めている。キーノートに登壇した、デジタルメディア事業部門トップのデイビッド・ワドワーニ氏によれば、Adobe Fireflyによって生成された画像は、すでに30億枚を超えているとのこと。うち10億枚ほどは、この1ヵ月ほどの間に生成されたというから、その注目度の高さが伺える。
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ワドワーニ氏はさらにデジタルコンテンツへのニーズが過去2年間で倍増し、今後2年で需要さらに5倍に増加するという予測を紹介、Adobe Fireflyはより早くアジャイルなコンテンツを制作するというニーズを満たすために、必要なものだと強調した。なおアドビでは、Adobe Fireflyに「Adobe Stock」の許諾済みデータを学習に用いることで、商用利用に対応したコンテンツを生成できるとしている。ワドワーニ氏は、他の生成AIと異なるポイントとして、①クリエイティブツールとの深い統合、②商業用に使用できる設計、③透明性のあるトレーニングデータ、④コンテンツ認証情報のサポートという4つの特徴をあげた。
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Adobe Fireflyはテキストプロンプトによる画像の生成以外にも、様々なAIモデルを獲得して進化を続けている。今回新たに提供が開始される3つのAIモデルとして「Adobe Firefly Image 2」「Adobe Firefly Vector Model」「Adobe Firefly Design Model」が発表された。また「Adobe Firefly Video Model」「Adobe Firefly Audio Model」「Adobe Firefly 3D Model」についても開発中であることが紹介された。ワドワーニ氏によれば、今後数ヵ月以内に登場するという。
なお、新たなAIモデルによって利用可能となる各製品の具体的な機能については、下記のアップデートを参照いただきたい。
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Adobe Creative Cloudの主なアップデート
●Adobe Firefly Adobe Firefly Image 2(Bate)へのアップデートで「テキストから画像生成」が強化された。提示された参照画像を選択するか、自分で画像をアップロードして、特定のスタイルを反映した共通点のある画像を複数作成できる「生成Match」、絞り、シャッタースピード、視野角など、生成された画像に対して、カメラのマニュアル撮影時のような設定変更を可能にする「写真設定」、テキストプロンプトの入力をサポートする「プロンプト候補」が追加。また生成した画像をライブラリに保存して、共有や連携が可能に。
●Adobe Illustrator Adobe Firefly Vector Modelによる「テキストからベクター生成」(ベータ版)が導入され、テキストプロンプトからアイコン、シーン、パターンなど、編集可能なベクターグラフィックスの生成が可能に。またAdobe Fontsから類似のフォントを識別して、編集可能なテキストにできる「Retype」(ベータ版)、画像やグラフィックをリアルな外観の商品写真やモックアップに簡単に変換できる「モックアップ」(ベータ版)、ブラウザーベースのAdobe Illustrator web版(ベータ版)も利用できる。
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●Adobe Photoshop Adobe Firefly搭載のAdobe Photoshop web版が一般提供され、Google Chromebook Plusデバイスでも利用可能に。
●Adobe Express(プレミアプラン) プレミアムプランで、Adobe Fireflyを用いたAI機能が多数利用可能に。Adobe Firefly Design Modelを用いた 「テキストからテンプレート生成」(ベータ版)では、テキストプロンプトですばやくテンプレートを生成し、そのままAdobe Expressで編集ができる。
またAdobe Photoshopと同様の「生成塗りつぶし」も利用可能に。クリエイティブ内のコピーや文言を45以上の言語でローカライズできる「翻訳」機能も追加された。
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●Adobe Lightroom 写真にぼかし効果を適用できる「ぼかし(レンズ)」が追加されたほか、「HDRに最適化」でHDR写真の編集や書き出しが可能に。モバイル版のツールバーでは、よく使用される機能が優先的に表示されるなど、より直感的な操作が可能になった。
●Adobe Premiere Pro Adobe Premiere Proからキャプション、ハッシュタグ、キーワードを追加して、Facebook、YouTube、TikTokに直接動画を公開することが可能に。さらに「共有」ボタンからFrame.ioにアクセスができるようになった。キーノートでは、フィラーワードや空白の検出など、「文字起こしベースの編集」の最新アップデートについても改めて紹介されていた。
「Adobe MAX 2023」ではこのほか、Adobe Fireflyを中心にAdobe Creative CloudやAdobe Express、オンラインマーケティングツールのAdobe Experience Cloudを統合。企業が様々なコンテンツをより簡単に制作、配信でき、顧客とのリレーションシップを構築できる総合プラットフォーム「Adobe GenStudio」も公開された。
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生成AIの台頭でさらに注目される著作権やフェイクへの対策について、アドビを中心にデジタルコンテンツの来歴の記録に取り組む「コンテンツ認証イニシアティブ(CAI)」がアップデートを公開。ブラウザーに拡張機能を追加することで、ユーザーがコンテンツ認証を確認できる新たなしくみや、写真だけでなく動画データへコンテンツ認証を記録する取り組みなども展示されていた。
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このほか次世代の新機能のアイデアを紹介する「MAX Sneaks」でも、生成AIを用いたプロジェクトが多数プレゼンテーションされた。中でも「Project Stardust」は、AIを用いて任意の被写体をオブジェクトとして自由に動かしたり、足りない部分を生成できるというもので、次世代のPhotoshopが楽しみになる内容だった。生成AIによってクリエイティビティ未来はどう切り開かれていくのか、引き続き注目していきたい。
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筆者紹介――太田百合子 テックライター。身近なデジタル製品とそれら通じて利用できるサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。
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