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第3世代で大幅高速化「M3 MacBook Pro」を試す(西田宗千佳)

ASCII.jp / 2023年11月7日 8時0分

MacBook Pro 14インチ・M3搭載モデル。カラーはスペースグレー

 アップルが11月7日から発売する、M3搭載MacBook Proのレビューをお届けする。M3には「M3」「M3 Pro」「M3 Max」の3種類があるが、今回試用したのは「M3」を搭載したMacBook Proである。

 実際に使ってみるとこの製品の位置付けがよくわかる。別の言い方をすれば、「どんな人がどのM3を選ぶべきか」ということも見えてくる、という話だ。ベンチマークソフトなどの値も含め、M3版の価値を考えてみよう。

M3搭載Macとはどんなものなのか

 アップルがMacに自社設計半導体である「Mシリーズ」を使うようになって3年以上が経過した。これまでは色々な製品が出るたび、数字だけが末尾である「無印」と、よりハイエンドな「Pro」「Max」が刷新されてきた。ただ、今回のように3種類が同時に発売されるのは初めてのことになる。

 位置付けは以前と変わらない。

 無印が「価格重視で普及型」、Proが「性能が高いプロモデル向け」、Max以上が「より高い性能を求める限られた人向け」という感じだ。

 今回、試用機として手元にあるのはM3搭載モデルだ。これまでMacBook Proは、M1搭載の「13インチモデル」とM2 Pro・Max搭載の「14インチモデル」「16インチモデル」があったが、13インチモデルがラインナップから外れ、14インチモデルでM3からM3 Maxまで、3種類のプロセッサーが使われるようになった。

筆者私物の13インチMacBook Pro(M1搭載)。インテルMac時代に登場したデザインを引き継いでいた
同じく筆者私物の14インチMacBook Pro(M1 Pro搭載)。デザインはここから変更になり、M3版にも引き継がれている

 13インチモデルのボディデザインは2016年に登場したものを引き継いでおり、2021年に14インチ・16インチとしてリニューアルしたものとは違っていた。すでにMacBook Airも新デザインになっており、古いデザインをここで一掃した形になる。

 だから製品としての位置付けも、M3搭載MacBook Proについては「M1搭載13インチMacBook Pro」のそれを引き継いでいる。

M3版MacBook Proの端子部。USB-C端子は左側に2つ。右側はHDMIとSDカードだ
M1版MacBook Proは、同じくUSB-Cが左側に2つだが、MagsafeやHDMI、SDカードスロットがない

 USB Type-C端子が本体左側に2つ、というのもその一例。これは無印Mシリーズを搭載したMacBook Pro共通の特徴であり、13インチモデルも同様だった。理由は無印Mシリーズが「USB端子を2つしかコントロールできない構造」であるからだ。逆に言えば、同じ14インチMacBook Proでも、プロセッサーが異なるM3 ProとM3 Maxは端子が3つある。「M3になってUSB Type-Cが減った」という書き込みがSNSで見られたが、それは誤解である。

M3世代でも、一番下のM3版はスペースブラックではなく「スペースグレイ」

 13インチに比べ改善された点もある。それがディスプレイだ。通常のバックライトからミニLEDタイプに変わった。筆者は2年間、M1 Pro搭載の14インチMacBook Proを使い続けているが、画質は明白なほどに差がある。

 なお、今回MacBook Proには新色「スペースブラック」が追加されたが、こちらはM3 Pro以上を搭載したモデルのみに採用されている。M3版MacBook Proは、従来からある「スペースグレイ」と「シルバー」。今回試用したのはスペースグレイのモデルである。

GeekBench 6のCPUテスト

性能は順当に向上、M3で「M1 Pro」に並ぶ

 さて、M3はどのくらい性能アップしたのだろうか? 手元にはM1搭載のMacBook Pro(2020年秋発売)とM1 Pro搭載のMacBook Pro(2021年秋発売)がある。これらと複数のベンチマークを使って比較してみたいと思う。

 今回は「GeekBench 6」と「Cinebench 2024」、そして「3DMark(Solar Bay)」でテストしている。前者2つはCPUとGPUの、最後の1つは主にGPUの性能をテストするものだ。

GeekBench 6のGPU(Metal)テスト
Cinebench 2024のCPUテスト
Cinebench 2024のGPUテスト
3DMarkの「Solar Bay」でのテスト

 率直に言えば、M3のCPU部分高速化は、「そこそこ」という感じだ。それでもM3はM1 Proに並んだ。2世代でついに「上位だったProモデルに無印が追いつく」までになったわけだ。

 Appleシリコン採用以降、Macの性能は急激に上がった。M1であってもかなり満足のいく性能であり、特に負荷の高い作業をしないなら今も十分……と感じている人もいるはず。筆者も同様だ。

 ただ、M1 Proと同じくらいの性能を無印のM3が出すようになったというのは小さいことではない。それだけ性能あたりのコスパが良くなったということであり、消費電力も低いということだからだ。

 作業可能時間の制約もあり、バッテリー動作時間の詳細な検証はできていないが、M3はスペック上「22時間」と大幅に伸びている。これは主に動画再生時の値だが、これを大きな魅力と感じる人もいそうだ。

 一方で、GPU性能も大幅に向上している。そもそも「無印とPro以上の差」はGPUの差でもあった。だが、そのGPUでも、テストによっては、M3がM1 Proに追いついてしまった。これはCPU性能以上の驚きだ。

購入したMacBook Proのスペック。45万円と安い買い物ではないが、後述するように複数の機材を処分し、実質出費は20万円以下に抑えている

どのMacを買うべきか? 筆者の結論は……

 ではどのMacを買うべきか? 特にここではノート型を中心に考えてみよう。

 MacBook AirはM2のままだ。それでも十分以上の性能がある。薄さを重視するなら、Airがベストチョイスであるのは今も変わらない。

 ではM3はどうか? ここはやはり「性能をどこまで求めるか」という話かと思う。

 M3版MacBook Proは、ほとんどのM1世代製品より動作が速い製品になった。MaxやUltraは少し位置付けが異なる製品であり、まだまだ「無印」で性能を抜くのは難しい。とはいえ、それゆえにMax以上は「特別な存在」なのだと思う。バッテリー動作時間も含め、手が届きやすい価格のMacとしては、性能重視ならM3版を……ということになるだろう。

 Pro以上は、円安傾向もあって価格が高めだ。よりパフォーマンスを求める人向け、という特性ははっきりしている。

 では筆者は、どの製品への買い替えを決めたのか? 答えは「M3 Pro版」である。

 もともとM1 Pro版を使っていたので、M3版では買い替える甲斐がない。かといってM3 Max搭載モデルは価格が50万円を大幅に超えてくるので、ちょっと予算的に見合わない。

 そうするとM3 Pro版を選ぶことになるが、その中でも選んだのはCPUコア12(高効率6・高性能6)・GPU18コアの上位モデルだ。価格差と性能・ストレージ量を勘案するとよりコスパがいい、という判断だ。

 しかも、ストレージは2TBに増量した。Macの場合、あとから内蔵のメモリーやストレージを増やすことができない。メモリーを36GBにするか迷ったが、現状の16GBでも不自由は感じていないので18GBを選択。一方でストレージは、現在1TBを使っていて残りが300GB程度。少し窮屈さを感じるので、予算が厳しかったが2TBにしている。

 買い替えを決断できたのは、現在使っているM1 Pro版MacBook Proが、アップルの下取りサービス「Apple Trade-In」で11万円以上になったこと、テスト機材として持っていたiPhone 12 Pro Maxと13 Pro Maxを、同様にアップルの下取りで合計15万円以上の買取額で処分できたからだ。両方を合わせればかなり出費を抑えられる計算である。

 逆に言えば、また下取りをすること前提で、「2年から3年が経過した後もそれなりの価格で処分して新型の費用にできる」ことを計算に入れると、付加価値の高いM3 Pro版が良かった……ということでもある。

 みなさんそれぞれに事情はあると思うが、「出費を抑えるために一定期間で下取り買い替えを考える」のが、今のPCやスマホに必要とされている買い替え対策の1つではないか、と思うのだ。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。

 

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