ロレックスを断捨離してチューダー「ブラックベイ プロ」を衝動買い【売却編】
ASCII.jp / 2023年11月10日 11時30分
腕時計バブルと市場動向のはざまで
今、日本を含む世界多くの国ではロレックスの腕時計とその流通を担う時計店、数少ない関連メディアや雑誌、そして商品を求める顧客が三つ巴になった腕時計バブル時代だ。
20年ほど前に時計店で100万円前後だったロレックスのデイトナモデルが、今では500万円前後で販売されている。チリかホコリのような銀行金利と比べると、宝くじにでも当たったかのようなバブルだ。30数年ほど前にあった不動産バブルでは、10年物の都市部の1500万円くらいの庶民向け中古マンションがやはり1億円近い値段で取引された時代もあった。
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マンションは建物ではなく立地環境によってその価値は大きく変わる。またパソコン時代の不動産バブルとスマホ時代の腕時計バブルの差も極めて大きい。誰でも参加できるSNSによる情報発信やネットオークション、ウェブ販売が極めて一般的になり、単体で価値の決まる腕時計の流通市場は世界同時進行でそのスピード感もスケールも変化もまた極めて大きい。
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こんなバブリーな時代だが、選択肢はいつも2つだけ。速攻で持ってる腕時計を売るか全てをシカとして見過ごすかの二択だ。今回はまだ残暑厳しい9月末に昨今流行りの「ブランド買取店」を数軒回り7〜15年ほど前に手に入れたアンティークのエクスプローラーIIと、サンダーバードの2本の腕時計を売却し新しい腕時計を買おうと画策した。
ロレックスをめぐる買い取り騒動
今回は2回に分けて本記事では「売却編」、後半は「ブラックベイ プロ購入編」でお送りする。売却編では素人セラーが遭遇した令和の「買取店」の実情をご紹介する。次回はロレックスのディフュージョンモデルと呼ばれる新しいブラックベイ プロ腕時計のことを詳しくご紹介したい。
腕時計に限らず何かを売ろうとしたら質屋くらいしかなかった昭和な時代とは違い、現代の選択肢は多い。一般的にはネットオークションやフリマだろう。一方、昨今街でもネットでも流行っているのは「買取ビジネス」の形態だ。SNSなどにも頻繁に広告を出しているので一度は目にした読者も多いだろう。
昨今の広告は「一番高く買い取る」とか「一気に10社の買取査定価格を返信」とかが多いようだ。過去、筆者は衝動買いした多くのガジェットを断捨離する時にもっともしていた方法は、オフィススペースで定期的に実施していた自分専用の「超破格断捨離会」や他人の主催する「フリマ」への出張断捨離会だった。
しかし腕時計バブル時代の今回は多くの先人が実際やってこられたように、まずネットで買取査定を依頼してその査定結果をネット上で見て比べることのできる実勢販売価格との差分を肌で感じて、妥当な高額査定をしてくれたいくつかのお店にブツを持ち込んで、本格査定をお願いすることにした。
せっかちな筆者は短期決戦を目指すべく前述した「一気に10社の買取査定価格を返信」を選択し、売却希望の腕時計のモデル名と年式、コンディション、おおよその使用期間などを送ってみた。メールでも何でも極めて返信の速い人ってのはいるものだが、今回はもう速過ぎるくらい速く返事がくるケースが多かった。
問い合わせを送って数分後、本当に10社近くから現在の状況なら買い取れる最高額が「〜XXX万円」てな表示で送られてくる。なにより驚いたのは売却希望のメールを送った瞬間から、返信メールではなく何ヵ所からも音声電話やSMSが来たことだった。
今回は自分では全く使っていないサブ電話番号にしておいて本当に良かった。音声電話嫌いな人やせっつかれることの嫌な人には向いていないかもしれない。結局、電話には一度も出ずSMSで連絡をもらうかメールをくれと伝えて久し振りに短期間に集中した音声電話ラッシュを回避した。
その後も、腕時計の写真を送れとか、売却希望額を教えろとかいろいろなコメントやメールが送られてきたが何れも「一番高く買い取る」「頑張る」と言うのが共通のメッセージだった。最終的に何度かやり取りした買取業者のオフィスに現物を持って訪問することにした。
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買取提案から交渉決裂へ、信頼とリスクは綱渡り
東京都内にはもうありとあらゆる場所に買取店は存在するが、今回はネットでの申込時に家から行きやすい銀座周辺を希望したので便利なお店ばかりだった。何度かSMSやメールでやり取りしてGINZA SIXの周囲にある4社を選択。平日の1日で午前中に2店、午後に2店を回る計画とした。
計画日は9月末とはいえまだまだ酷暑の厳しい日だった。訪問予定の4店のうち3店はGINZA SIX近くの銀座の一等地にあるビルの上の方にオフィスがあった。たった1店だけが1階に立派なショールームを持つ路面店だった。
何れのお店も対応は極めてよく似ている。紳士的で、まずは売却希望の腕時計の写真を多数撮影する。そして売却希望額を確認。取り外したブレスレットの残りのコマの存在や保証書などの確認。筆者の場合はハッキリした売却希望額はないので「高ければ高いほど良い」といった感じで返答した。
最初、多くの写真を撮るのは自社での事後評価をする時に、現物を見ていなかった人にも理解してもらうためだけだと思っていた。しかし実際は、同業の買取店や海外で同様のことをしている同業者や特定の腕時計をピンポイントでモデル指定して探している有望な見込み客に送るためだと分かった。
今回の4社の内の最初の1社は、確実にブローカー的な位置づけでマッチングでビジネスをする買取業者だった。最終的には売却希望の腕時計を預かって、何人か何社かの見込み客や同業者に現物を見せてマッチングをする印象だ。なので買い取り価格帯も相手次第だ。まずは予想以上に売却時間がかかりそうだったので、このお店はお断りすることにした。
残り3店だが午前中にマッチング買取の店にかなりの時間を使ってしまったので、午後に全部を詰めて訪問することにした。午後の1店目では想定額が高いと考えていたアンティーク腕時計が意外に安かった。どうも販路がないか見込み客の該当がないようだ。一方、安い方の腕時計は3店の中では最高額を付けて頂いた。
午後の2店目はショールームを持つ一番大きな路面店。2個の腕時計の総額は3店の中では最高額だった。マッチング買取の店と行けなかった1店を除き、この日の午後に行った2店に絞ることとした。今回は初めての経験でもあり、対面でのプロセスは想定外に疲れるので無理なスケジュールは禁物だと悟った。
そしてその後もいくつかのやり取りをして、最後に行ったショールームを持つお店1店にメインの腕時計を売却。安い方のモデルは最高値を付けてくれたお店に買い取ってもらおうと考えたが、2台の総額は路面店が最大なので結局2本の腕時計をまとめて売却することに決めた。
日を改めて行った路面店のお店では同じ担当者と最終的な面談をした。ところが前回までは全く話題にも出なかった新しい話が突然出て来て面食らった。内容は2つ。一つ目は、伝えた買取価格はお店側が腕時計本体を預かって見込み客や同業者に交渉後の予定額だと言い出した。最初に登場して断った「マッチング買取」とほぼ同じだ。
加えてもし今日買い取るならアンティーク系のエクスプローラーIIは現在の査定価格からマイナス10〜20万円とか言い出した。緊急の対応としてエクスプローラーIIはこの路面店にお願いするとして、サンダーバードは最高値を付けてくれた別のお店にお願いしたいと言ったら、またしても今まで一度も聞いたことのなかった「査定額は2台まとめての値段だ」と言い出す始末。
結局、信頼できないのでこの時点で交渉は決裂となった。これが買取店の通常オペレーションかどうかは素人の筆者には分からないが、有力な購入客が見当たらないのに買取をコミットするのはリスクが高い。なので買う側の立場に立てばこの仕組みや買取・販売方法が悪いとは言えない。時間のある人のネゴシエーションゲームなのだ。
今回訪問した3店が最終的にはほぼ同じように、最初の買取提示額は大きいが、最終的には即金購入は「見込み客に当ってから」、そして「しばらく買取予定商品を預かって持ちまわりたい」というのが本音。同日、雑誌メディアで常に広告展開しているロレックス専門店に持ち込んだ時も全く同様。仮査定はするが、その後は商品預かりで最終査定とのことで2週間くらいかかりそうだった。
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アメ横でサプライズが起こった、驚きと結末
人生初の買取業者とのやり取りには疲れたが筆者も諦めの悪い性格ゆえ、最後にアメ横にある全く別のお店に持って行ってみようと思って有楽町から山手線に乗って御徒町で下車。ロレックスの販売では有名なお店。買取もやっており自営の店舗を持って販売も常時している。
急遽そのお店に現物の腕時計2本を持ち込んで3社での見積もり価格を伝えつつ、様々な条件が後出しで登場してぐったりして交渉決裂したことを伝えた。ところが何とそのお店では全く写真も撮影せず、査定のプロがルーペですみからすみまでチェックするだけ。最後に裏蓋を開けて詳細をチェック。そして最終的な買い取り額が提示された。
なんとメインの腕時計は、ショールームを持っている銀座の路面店が提示した「お客がいれば」という条件付きの最高額よりさらに5万円上乗せ。安い方の腕時計は、別の買取店が付けた最高値と同額となり総額でも最高額。
その後いろいろ話を聞くと、彼らはかなりの売り上げのある自営店を2店舗持っていることが、他の買取店との最大の差だった。写真を撮りまくってあちこちに送る必要がそれほどなかったということだ。最初から自社で直販しているお店に行くべきだった。
最後に買取金額は銀行振り込みだと思ってスマホを見て口座番号を紙に書いて伝えようとしたら「いやうちは現金オンリーで、振り込みなんてありません」と言われて売買契約書にサイン。1万円札を数える紙幣計数機とやらの心地よい動作音を始めて聞いた。そして「最近はアメ横も物騒ですから、すぐに銀行に行ってください」と店を送り出された。上野に住む筆者の灯台下暗し。アメ横は凄い街でした。
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自宅に帰り、以前のコラムでもご紹介したエクスプローラーIIに付けていたwena3をLAARVEE Crushed Submarinaに付け替えた。そして最初に銀座に意気揚々と出かけた日から目を付けていたチューダー ブラックベイ プロ腕時計を人生初のネット注文。
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いろいろあるモノで今回のブラックベイ プロの発注も、ダブルブッキングの災難に合い在庫商品は別のお客さんに取られたり最後までバタバタした買い替え劇だったが、最終的にブラックベイ プロは筆者の手元に来た。次回はこの素晴らしいブラック・ベイのお話しを少し……。
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![T教授 T教授](https://ascii.jp/img/2011/06/22/1511551/x/f5fe44986d09d330.jpg)
今回の衝動買い
・アイテム:チューダー「ブラックベイ プロ」
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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