ロレックスを断捨離してチューダー「ブラックベイ プロ」を衝動買い【購買編】
ASCII.jp / 2023年11月17日 11時30分
さて前回は「ロレックスを断捨離してチューダー「ブラックベイ プロ」を衝動買い【売却編】」と題して、アンティークのロレックス エクスプローラーII(以降:型番1655)とサンダーバード(型番16264)の2本を、都内の買取店を回り売却するまでの顛末を詳しくお伝えした。
そして最近再び人気の出てきたロレックスのディフュージョンモデル(廉価版拡販モデル)の購入にいたった。今回は人生初のウェブ通販で衝動買いしたブラックベイ プロのファーストインプレッションをお伝えしたい。
ブラックベイ プロとロレックス1655のデザイン比較
ブラックベイ プロは、ご存じのように筆者が売却した1655に雰囲気が似た腕時計だ。チューダーは、前述したようにロレックスブランドのすそ野を広げるべく登場したディフュージョンブランドといって差し支えないだろう。しかし、すでに長い期間がたち昨今では、その様相は極めて薄くなってきている。おもしろいのは実際の製品を見てみると、要所要所にその足跡や改良点が垣間見えることだ。
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ブラックベイ プロはロレックスが1655の後継機種として発表したモデルと比べて、その目指すベクトルは別の方向を指しており、今回はチューダーのベクトルがより筆者に刺さった。早速、宅配便で届いたブラックベイ プロは、ロレックスほど大袈裟なグリーンの豪華なパッケージではなく、華美ではない極めてシンプルなパッケージだった。
腕時計本体以外の付属品は保証書とユーザーマニュアル、クレカサイズのプラスチック製の保証カードの3つ。全てパッケージと同様の赤と黒の2色だけで、長年赤と黒がテーマカラーのThinkPadとの付き合いの長い筆者好みの配色バランスだった。
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ブラックベイ プロのベゼルサイズは、1655の40mmより1mmほど小ぶりな39mm。ロレックス1655の後継現モデルが42mmと、巨大化している方向とは対照的だ。元々コンパクトで軽量性が腕時計のひとつのターゲットだと考えている筆者は、15年近く前にデイトナから今回売却した1655に買い替えをしている。これもサイズと重さが理由だった。
ベゼルサイズが40mmと39mmとかなり近いので、外形サイズだけではすぐにピンとこないが1655とブラックベイ プロのダイアルをパッと見て、一瞬で気付く点は全部で5つ。最初の2つは1秒以下で分かるサイクロップレンズ(日付拡大レンズ)の有無と、オレンジとイエローのGMT針(1655は24時間針)の色の違いだろう。
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サイクロップレンズは見る周囲の環境でも違うが、レンズ正面で垂直に見ればおよそ日付が2.5倍サイズに拡大され見やすいとも言えるが、チョット角度が違うと今度は全く見えないことが多く、日常ではこれまでサイクロップレンズの恩恵にあずかった記憶は皆無だった。
ブラックベイ プロには、45度回転した正方形型が針の途中に付いたスノーフレーク針(通称:イカ針)がGMT針、時針、秒針の3つの針に採用されており、その内の一番長いGMT針だけがイエローに着色されている。そして1655と同様、全ての針とアワー(時)マーカーには夜光塗料が塗られており、暗所での視認性の向上を支援してくれる。
時代の差で製造後すでに40年〜50年経過している1655とブラックベイ プロの比較では、後者の使い勝手は大きく向上している。前述したが1655のGMT針の機能は、実際には洞窟探検などで長く暗所にいて昼夜の区別ができない状況でも24時間表示でその判断が簡単にできることであり、海外出張などの時に役立つローカルタイムとホームタウンの両時間を識別できる機能とは異なっている。
ブラックベイ プロは、海外に移動した時にはイエローのGMT針をホームタイムに固定したまま、現在いるローカルタイム時刻を短針を1時間刻みで前後移動させて、ローカルタイムとホームタイムを常時表示させることのできるGMT機能(キャリバー MT5652)を搭載している。午前0時を超えて短針が移動すると、カレンダーの数字もそれに合わせて前後する仕組みだ。
1655を使用していた時は、どうも1時間刻みの長方形のアワーマーカーの外側に同色で表示された正方形の24時間マーカー表示との関係性がややこしく、普段の生活では不要だった24時間表示マーカーは時間表示を複雑にするイメージだった。もちろん冒険家の為の機能が1655の素晴らしい機能であり、デザインであることは承知の上でのお話だ。
筆者の1655は使っている間に、一度4本の針(時針・分針・秒針・24時間針)をオーバーホール時に総交換している。サビて変色した針はアンティーク感は満載ではあるが、腕時計としての機能を最優先した結果だった。それゆえ、オレンジ色の24時間針は極めて鮮烈なカラーだった。ミーハーな筆者にとって当初1655を手放してもっとも残念だったのは、少し地味な黄色いスノーフレークGMT針とオレンジ色の24時間針のインパクト差だったが、今はかなり馴染んできた。
ブラックベイ プロのイエローのGMT針が嫌なわけではないが、筆者は今もオレンジ色の1655の24時間針には極めて強い憧れがある。そのため、一時は現在のエクスプローラーIIも候補には上がったが、やはりベゼルの直径が3mmも大きな42mmのビッグサイズとその重量は、以前のデイトナを思い出す感じで候補からは外れた。
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まず蓄光・発光パワーに驚いた! 新品ブラックベイ プロに見た進化する機能性
洞窟探検冒険腕時計とは言っても40年以上昔の1655に夜光塗料(トリチウム)の効果は100%期待できないのは当然だった。しかし新品のブラックベイ プロはその効果は大きく、正直驚いた。夜、ダイニングテーブル上に置いたブラックベイ プロの真上に位置するLEDシーリングライトを消した瞬間、3時位置(日付)を除く11個のアワーマーカーと4本の針が圧倒的な蓄光力で輝き始めた。当然だがアンティークの1655では一度もお目にかかったことのない光景だった。
ブラックベイ プロのアワーマーカーを接写拡大すると分かるが、逆三角形の12時、スリムでスクエアな6時、9時以外は円形で全て厚みのある立体的な発光セラミック(セラミックス+ルミノバ)を採用したデザインだ。これにより文字盤上の光量を増加させている。また針とマーカーは純白ではない少しエイジングされたようなマット仕上げの優しいオフホワイト。これらの相乗効果で1655に比べて効果の高い視認性の向上をもたらしている。
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通称「デカバラ」と呼ばれたアンティークなチューダーの腕時計では、リュウズや裏ブタにはロレックスのアイコンである「時計職人の5本指」と共に大きな文字で「ORIGINAL OYSTER CASE BY ROLEX GENEVA」と記されているものが多い。今回のブラックベイ プロでは、自社オリジナルのキャリバー(ムーブメント)を採用していることが明快に記述されている。
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またブラックベイ プロの大きなリュウズには、チューダー家の家紋である「チューダーローズ」をデザインし、アイコン化されたバラが採用されている。筆者のアンティークチューダー腕時計の12時のマーカーとして採用されている「バラ」とほぼ同じイメージのモノだ。ダイアル上の12時位置とブレスレットのロック部分に採用された、チューダーの新しいモチーフである「盾」と「バラ」の共存は素晴らしい。
新世代のブラックベイ プロは、ブレスレットのオーナーへの最適化も進化している。ポリッシュ&サテン仕上げの肉厚のスチール製リベットブレスレットは、ダブルロック機構の採用と相まって腕への装着性能が高く装着・脱着は簡単確実だ。
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そして何よりオーナーに便利なのは「T-fit」アジャスティングシステムと呼ばれる、工具不要でできるセルフサイズ調整機能だ。オーナーは簡単な操作で、ブレスレットの長さを5段階、合計8mmまで瞬時に調節することができる。
T-fitを中間位置にセットした後、マイナスドライバーを使ってコマを取り外してピッタリサイズに調整しても、季節によって変化する腕への装着感を簡単に前後4mmまでなら最適化できる。乾燥した冬、湿気の多い夏に、その日の気分で工具なしにブレスレットの長さを調節できる機能は素晴らしい。
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約15年使った1655を断捨離して買い替えたチューダーブラックベイ プロ(79470)をここ1ヵ月ほど毎日楽しく愛用している。39mmの比較的コンパクトなベゼルサイズ、実測163gの重量、数回やったマニュアル測定で日差3秒+、自動巻き70時間のパワーリザーブ、660ft(200m)の防水、まだ海外に行けていないので実際には試せていないGMT機能、全てが1655の延長線上に位置する洗練された機能感覚だ。
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どうも筆者はロレックス エクスプローラーII(1655)が好きというより、色味の異なる一番長いGMT針を含め4本針の腕時計が、好きなのかもしれない。そういう意味ではロレックスバブルの現代に市場性の高い腕時計を断捨離して、世界中にまだまだ一杯ある素晴らしい4本針腕時計を楽しむにはベストなタイミングだったと言えるだろう。
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![T教授 T教授](https://ascii.jp/img/2011/06/22/1511551/x/f5fe44986d09d330.jpg)
今回の衝動買い
・アイテム:チューダー「ブラックベイ プロ」 ・購入:ジャックロード(中野ブロードウェイ) ・価格:54万7800円
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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