年収300万円が年収1000万円にアップする転職ワザ
ASCII.jp / 2023年11月23日 7時0分
ひと昔前とは違って、いまや転職はすっかり当たり前のものとなった。転職が否定的に捉えられがちだった時代を生きてきた私も、それをとてもいい傾向だと感じる。
だが忘れるべきでないのは、「転職することによってなにが得られるか」についてしっかりと考えることである。「転職できればなんでもいい」ではなく、転職することで得られるメリットを意識し、それを実現させる必要があるのだ。
多くの場合、転職することで目指したいのは「年収アップ」だろう。とはいえ、「転職したから年収がアップする」とは限らないのも事実。当たり前のことだが、年収を上げたいなら、それに見合う実力が求められるからだ。
現実問題として、転職は決して簡単なことではないのである。
しかしそれでも、『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(森田 昇 著、日本能率協会マネジメントセンター)の著者は、転職によって得られるものは多いと断言する。ただしそのためには、見逃してはならないことがあるようだ。
どんなに能力を磨いて昇進しても、そもそも年収が低い業界(観光や飲食、介護等)では社長にでもならない限り、年収が高い業界(コンサルや金融、エネルギー等)の社員の年収には逆立しても勝てません。同じ業界や職種、ポジションにいる限り100万円単位の大幅な年収アップは見込めません。そういった構造なのです。(「はじめに」より)
ポイントはいまいる会社の位置から”ちょっとだけ”スライドさせること
重要なポイントは、この構造を把握したうえで、「業界」と「職種」、そして役職と会社の「ポジション」を、いまいる会社の位置から“ちょっとだけ”スライドさせること。その方法を用いれば、転職による年収アップは実現できるというのだ。
サラリーマンの年収は、基本的に「業界×職種」で大枠が決まっている。そのため、年収アップさせるにはそのどちらか、もしくは両方を「年収の高い業界」や「年収の高い職種」に転職する必要があるということ。それが「軸ずらし転職」で、パターンは3つあるという。
1.業界を変える、職種は変えない 2.業界は変えない、職種を変える 3.業界も職種も変える (99ページより)
1.であれば、同じような仕事で業界を変えるだけなので経験者扱いでの転職が可能。上述したように年収アップには「業界」が重要な意味を持つため、「職種」という軸は固定して業界だけ軸ずらししていくのが年収アップの近道だということである。
例)IT業界でアプリケーションエンジニアをしていたのですが、転職後は環境・エネルギー業界の社内エンジニアをやっています。(100ページより)
対して2.は業界内で職種を変えているだけであるため、年収アップとともに業務内容が変化する。したがって、「やりたくて、自分にできる仕事」への転職を目的とするのであれば効果的だろう。
大切なのは、現職の知識や経験を活かすことができ、かつ現在の仕事でやっていることと2〜3割は重なる職種を選ぶこと。ただし、あまりに職種を変えすぎると未経験者扱いになってしまうため年収アップを望めなくなる可能性もある。
例)保険業界で営業事務をしていたのですが、転職後は同じ保険業界で営業をしています。(101ページより)
そして3.であるならば、軸をずらす角度が大きいため大幅な年収アップが可能。著者自身、IT業界でのITコンサルタント→建設資材を取り扱う商社の企画営業へと、業界と職種のどちらも軸ずらししたことで年収300万円アップに成功した経験があるそうだ。
ただし当然のことながら、どちらも変え過ぎてしまうと入社後の適応に苦労することになるだろう。そのため注意が必要だ。
例)「IT業界でアプリケーションエンジニアをしていたのですが、転職後は人材業界で新プロジェクトのマネジャーをしています」(101ページより)
「軸ずらし転職」を2、3回繰り返せば年収1000万円に
いずれにしても、こういった「軸ずらし転職」を2、3回繰り返せば、年収300万円スタートでも10年かからずに年収1000万円へ到達できるということである。ちなみに本書が説得力を感じさせるのは、そういった考え方を机上の空論で終わらせることなく、論理的に解説しているからだ。
そしてもうひとつの理由は、著者自身が「転職10回経験したキャリアコンサルタント」であること。その10回のなかには派手な失敗もあれば、中途半端な転職として終わったものも、軸をずらしていくことで確実に年収アップさせたものもあるという。
10回目の転職で独立したそうだが、ともあれ実体験(と、それを立証する論理)が明確になっているからこそ、「なるほど」と実感させてくれるのだ。
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年収300万円から脱出する「転職の技法」森田 昇日本能率協会マネジメントセンター
筆者紹介:印南敦史
![](https://ascii.jp/img/2023/08/16/3587116/x/c9de6a18ea526b6f.jpg)
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。 1962年、東京都生まれ。 「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。 著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。
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