ビザが下りなきゃ日本へ強制送還!? 中国・深センへ香港空港からフェリーで入国&中国新幹線で出国してみた
ASCII.jp / 2023年12月6日 7時30分
各国でコロナ禍中に厳しくなっていた各国の入国制限も、以前とほぼ同じ状況に戻ってきて気軽に海外旅行ができるようになりました。ですが、そのなかで以前厳しいままの状況なのが中国です。入国時の「健康申告」こそ不要になりましたが、現状中国へ日本人が入国する際には、ビザが必要です。
しかも申請には時間がかかります。今年9月に中国メーカーのプレスツアーでビジネスビザを申請したときには、必要書類がそろってから1週間以上もかかりました。仕事の場合、受け入れ企業が現地で申請する必要もあるため、実際には2週間から1ヵ月以上かかるケースもあるそう。そのため以前のように、気軽に「中国へ行こう!」というわけにはいきません。
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事前にビザを取得しなくても 中国に入国できる場所/方法がいくつかある
そんな中国ですが、事前にビザを取得しなくてもいいケースがいくつかあります。そのひとつが、香港に隣接する深センへの入国。世界の工場、ガジェット生産の最先端エリアとして、やはり海外からの入国を厳しく制限するワケにはいかないのでしょう。ビザを到着してから取得する、アライバルビザ(VISA ON ARRIVAL)というシステムが使えます。
このビザは「特区旅遊(E)ビザ(S.E.Z VISA)」という名前で、1度のみ有効なシングルエントリーで、最長で入境翌日から5日間、深セン市内のみという条件がついています。ですので、このビザで深センに入って、そこから上海や北京など中国各地へ移動はできません。
深センのアライバルビザを利用できるのは、現在4ヵ所。香港から地下鉄やバスでアクセスして入境できる羅湖口岸(らこ こうがん)と皇崗口岸(こうこう こうがん)を使うのが一般的で、理由は後述しますが深センに行くならこの手段が断然オススメです。
もう2ヵ所は、飛行機で深センの宝安国際空港にアクセスする方法と、香港空港から香港へ入国せずフェリーで蛇口口岸へとアクセスする方法です。今回は、この「フェリーで中国・深センへの入国」にチャレンジしてみることにしました。
9月にも深センには行きましたが、ケース問屋やオモシロガジェットなどがある電気街の華強北をまわるチャンスがなかったんですよね。それがちょっと物足りなくて、1泊だけでも行ってこようと、今回足を伸ばしたのです。
ビザが下りなきゃ日本に強制送還!? 香港空港からフェリーで蛇口口岸へ行ってみた
旅程の関係で今回は日本からではなく、台湾の桃園空港から香港国際空港へと移動。到着したら香港の入国審査を受けずに制限エリア内にあるフェリーのチケット購入&チェックインカウンターへ向かいます。フェリーチケットを買う際には、預け荷物がない場合は出発の30分前であればオーケー。飛行機に荷物を預けている場合は、1時間前までに乗り継ぎカウンターE2で荷物の載せ替え手続とチケットの購入が必要です。
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今回は預け入れ荷物がなかったので、12時過ぎに香港空港のフェリーチケットカウンターに到着し、13時のフェリーを購入できました。価格は310香港ドル(約5840円)です。チケット購入自体はクレジットカードも使え問題ないのですが、このルートでの深セン入りがあまりオススメできない注意点を、購入時に念押しされます。
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それは「アライバルビザが発給されるのは100%確実ではない。もしビザが発給されなければ、香港ではなく香港空港からさらに出発地へ自費で戻ることになる」との説明。つまり、もしビザが発給されなかったら、代わりに香港へ入国というわけにはいかず、今回の自分の場合なら台北へ。日本からのフライトなら日本へと戻ることになるわけです。
このリスクはかなり大きいです。香港へ入国して陸路で羅湖口岸もしくは皇崗口岸からなら、アライバルビザが発給されず戻ることになる場合でも、香港に戻るだけですみます。この条件は深センの宝安国際空港も同じだと思いますので、リスクを抑えて深セン入りするなら、現状は香港へ入国してからがオススメです。
自分はフェリーでアクセスする方法でスケジュールを組んでいたため、その条件を承諾してフェリーチケットを購入しました。購入後はチケットカウンターの裏にあるエスカレーターで地下に降りて、専用の列車でフェリーターミナルの「SkyPier(スカイピア)」へと移動します。
(次ページ:いよいよフェリーへ乗船)
いくぞ! 中国! フェリーに乗船 利用客は、私をいれても7人だけ
スカイピアの乗船ロビーは4階。きれいな建物ですが施設としては両替用のカウンターとセブン-イレブンがあるだけです。このスカイピアからはマカオや今回利用する深セン・蛇口のほか、中山や東莞、珠海といったほかの中国本土への航路もあります。ただビザの関係もあることから、利用客はまばら。深セン・蛇口へのフェリー利用客は、私をいれても7人だけでした。
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乗船時間が近づくと、音声での案内が流れます。中国語や英語のほか日本語もありました。ビザ免除だったコロナ禍以前は深センへ手早くアクセスできるルートとして、このフェリーも人気だったことがうかがえます。
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フェリーは2階建てで、2階はファーストクラスになっていました。一応チケットには座席番号が記されていますが、なにせ7人しか乗っていないので1階の好きなところに座ります。乗船時間は30分ほどなので、座って落ち着いているとすぐに到着といった感じでラクチンです。
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問題となるビザ申請は、蛇口港到着後の入国審査手前にカウンターがあります。ですが、カウンターには係員がおらず、近くにいた警備員さんに声をかけて呼んでもらいました。というのも、乗船していた7人のうちビザ申請をしたのは私だけ。ここでビザ申請をする人は少ないようです。
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手続自体はカウンターにある申請書に記入し提出。次にカウンター脇にある証明写真の撮影機で顔写真を撮影するだけ。受付を完了してから10分ほどであっさりとビザは発給されました。料金は275中国元(約5700円)で、フェリー代とあわせると1万円を超えます。
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自分はコロナ禍以降では未経験ですが、陸路の羅湖口岸や皇崗口岸は利用者も多く、かなり並んで時間がかかるとのこと。また1日の発給数も決まっているそうで、午後遅くに行くと受け付け終了というケースもあるとのこと。それを考慮するとフェリーでのアクセスもありかなとは思いますが、万が一、ビザが発給されなかった場合は日本に戻されるというリスクを考えると、判断が難しいところです。
いよいよ入国審査 なかなか進まないが……大丈夫!?
さて。いよいよ入国審査を受けるのですが、ここも窓口がひとつしか開いておらず、ビザ発給後に最後列に並んだ状態で前に5人いました。つまり、まだひとりしか通過していない……。聞き耳を立てていると、渡航理由や仕事など事細かく聞かれていました。
大丈夫かな……といろいろと想像してしまいましたが、幸い自分は何も聞かれずに通過できました! よかったー! 無事ビザも取得できて、中国に入国することができました。時間がかかっていたので少し心配していたのですが、もうちょっとフェリーの利用客が多いと、さらに時間がかかりそうですね。
無事入国審査を通過すれば、あとはフェリーターミナルから5分ほど歩いた場所に地下鉄駅もあるので、目的地となる深センの各地へとアクセスできます。蛇口フェリーターミナル自体は、豪華客船なども停泊できる大きな施設なので、ここで食事などをしてから移動するのもアリですね。
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というわけで、香港空港からフェリーで深センへとアクセスして、アライバルビザで中国に入国したわけですが、前述のとおりビザが発給されなかった場合のリスクが大きいので、現状では積極的にオススメできませんね。ただ、香港に入って陸路でアクセスするよりは、乗り換えなどもなく断然ラクなので、コロナ禍前のビザ免除の状態に戻ってから使うのが良さそうです!
(次ページ:帰りは「中国新幹線」で香港へ)
帰りは「中国新幹線」で香港へ チケット購入は旅行代理店サイトがオススメ
ここからは、深センに到着した翌日、深センから香港へ戻るルートをお伝えします。深センに入るときと同じく、陸路やフェリーといった手段が使えますが、もうひとつ中国の高速鉄道、いわゆる中国新幹線を使ったアクセス方法があります。
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とはいえ中国の高速鉄道は、このコロナ禍中にすっかり中国人が使いやすいようにシステムが最適化されていて、外国人が利用するにはちょっとしたコツが必要です。まずチケットですが、自動券売機は中国の身分証カードがないと使えないため、外国人旅行者は基本的に利用できません。
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そのため窓口を使うのですが、高速鉄道の発着する深セン北駅へ行ってみると、長蛇の列でなかなか列がすすみません。さすがに大昔の横入りが横行するようなカオスな状況ではありませんが、これを待っているのは辛いところ。
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というわけで外国人旅行者が中国の高速鉄道を購入するなら、Trip.comという旅行代理店サイトがオススメです。日本語も使え購入の際には列車や座席指定も可能。パスポート番号を入力して購入手続を済ませると、数分後に、メールで発券のお知らせが届きます。ただしメール自体に購入した列車の番号や時刻、座席などが記入されており、添付されているのは領収書だけ。eチケットの控えのようなものはありません。
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中国では高速鉄道のeチケット情報と 身分証カードがリンクしている
実は中国では高速鉄道のeチケット情報と身分証カードがリンクされており、中国人は身分証明書を改札にかざして乗車できます。なのでキップの自販機でも身分証カードが必要というわけです。日本に置き換えると、新幹線乗車時にマイナンバーカードを登録して、あとは改札でマイナンバーカードをかざせば乗車できる・・・・・・そんなシステムです。
もちろん外国人旅行者は中国の身分証カードがないので、パスポート番号で管理されています。これがちょっとめんどうで、中国の高速鉄道駅全般が同じだと思いますが、深セン北駅構内に入るときに、自動ゲートで身分証カードを使ったチェックと手荷物検査があります。
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この自動ゲートは日本のパスポートに対応していないようで、外国人旅行者は係員のいる有人ゲートに並んで対応してもらいます。深セン北駅では駅構内入り口のいちばん端が有人ゲートでした。
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ちなみに中国の高速鉄道は列車が到着する直前までホームに降りられません。またホームに降りる際にも身分証カードでの改札があります。ここでもひとつだけ係員のいる有人ゲートがあるので、そこでパスポートを渡して対応してもらいました。
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この身分証カードが使われる前は、オンラインでチケットを購入しても窓口でチケットの引き取りが必要だったりと結構めんどうだったので、それに比べれば手間はかからなくなっています。それでも、あまりに中国国内向けに特化したシステムなので、外国人にはちょっと使いにくいです。
(次ページ:香港側までは新幹線であっという間)
深セン北駅構内には売店や飲食店も多くて楽しい とはいえ香港側までは新幹線であっという間
深セン北駅構内には売店や飲食店も多く、一面にマッサージ機が広がっているなど時間を潰す施設は結構あります。深セン北駅から香港側の西九龍駅までの新幹線の乗車時間は18分ほどなので、がっつり食べ物を買って乗り込んでも、あまり時間がないので注意です。
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香港側の西九龍駅に到着したら、降車後に西九龍駅内の施設で中国の出国手続と香港の入国手続をします。出国手続や入国手続はそれぞれの国や地域でするのが一般的ですが、この中国新幹線を使って中国と香港を移動する場合、香港側の西九龍駅に着いてからまとめてする形になります。これは香港側から中国本土に行く場合も同様で、香港の出国手続と中国の入国手続を西九龍駅でするのですが、残念ながら現状ではアライバルビザには対応していないので、中国ビザを取得した人でないと、香港からはアクセスできません。
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高速鉄道の料金は、Trip.comで1561円でした。フェリーに比べると断然安いし、羅湖口岸や皇崗口岸を使ったアクセスと比べても移動時間は断然速いです。中国は12月1日にフランスやドイツ、マレーシアなど6ヵ国の人に対してはビザを免除にするなど、徐々に入国制限を緩和してきています。
日本も対象となれば、フェリールートも強制送還のリスクはほぼなくなったり、中国新幹線を使った時短アクセスも利用できるようになるので、日本人のビザ免除措置早期再開を期待したいところです。
YouTube動画でも深センへのフェリーでの入国と、香港への中国新幹線移動をレポートしているので、そちらもぜひご覧ください!
訂正とお詫び:中国新幹線乗車時の中国出国手続/香港入国手続について、より正しい表現に訂正いたしました。(2023年12月6日11:00)
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
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世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
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