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キャリアは「真の5G」をプレミアムなオプションにしてはどうか

ASCII.jp / 2023年12月6日 7時0分

エリクソン・ジャパン野崎哲社長 筆者撮影

 日本で5Gサービスがスタートして3年半が経過するが、いまだに盛り上がりに欠けた状態だ。

 スマートフォンで「5G」が受信された状態でも、超高速の通信を体感できるわけでもなく、5Gならではのキラーサービスも皆無と言える。 

 キャリアにネットワーク機器を収めているエリクソン・ジャパンの野崎哲社長は、「2023年6月時点で5Gの加入者数は7500万件、人口カバー率は96.6%であり、ほかの国と比べて突出しているが、展開エリアの多くは4G LTEの周波数帯を転用しているだけにすぎない」と指摘する。

 実際のところ、KDDIとソフトバンクは4G LTEで使われていた周波数帯を5Gに転用してきたため、5Gのエリア展開は早かったが、通信速度の面では4G LTEと変わらない状態であった。

 一方、NTTドコモは4G LTE転用よりも、5G向けに割り当てられた周波数帯できっちりと5G展開しようとしていたが、結果的に5Gのエリア展開がままならず、4G LTEの周波数帯にトラフィックが集中し、ネットワーク品質の低下を招いているようだ。

「なんちゃって5G」から「真の5G」に移行する必要がある

 本来であれば、5Gに割り当てられた周波数帯の基地局を一気に展開すべきだった。しかし、4キャリアに割り当てられた周波数帯は、通信衛星が地上局との通信に使う電波と干渉するという問題を抱えており、特に関東地区ではなかなか基地局を設置できないという問題を抱えていたのだった(一方、大阪などは衛星との干渉問題がないため、楽天モバイルの5Gは大阪では三木谷浩史会長が自慢するほど爆速だったりする)。

 3年半、なかなか5Gが浸透しなかったが、この干渉問題もようやく目処がつき始めてきようで、ようやく関東でも5Gのエリア展開がさらに加速することになりそうだ。

 そんななか、野崎社長は「2020年から30年にかけてデータトラフィックが14倍になるという指摘がある」と語る。

 これまでKDDIやソフトバンクは4G LTE転用による「なんちゃって5G」エリアの拡大を急いできたが、これからは「真の5G」に移行する必要がある。

 実はこれまでの5Gは、4Gの設備を併用した「5G NSA(ノンスタンドアローン)」となっていた。これを「5G SA(スタンドアローン)」という5Gに特化した設備にしていかなければならないのだ。

「5G SA」によって安定した高速通信が可能に

 この5G SAによって、「スライシング(分割)」という技術が導入できる。

 現在、KDDIが実証を進めているが、例えば、野球やマラソンなどのテレビ中継で、カメラからの映像をスマートフォン経由で5G基地局に送信する際、ネットワークスライシングで接続できれば、映像を遅延なく、安定して送信することが可能となるのだ。

 また、スマートフォンでゲームをする際も、ネットワークスライシングで、ゲームだけの通信を流すということをすれば、これまた安定して高速な回線で、eスポーツで対戦するということもできるようになる。

 ここ数年、各キャリアは政府からの圧力によって、料金値下げをせざるを得ず、収益面で大きなダメージを追ってきた。今年になって、ようやく通信料収入も復活しつつあるが、5Gネットワークを展開するからにはネットワークで稼げるようにならないといけない。

 単にスマートフォンユーザーにインターネットにつながる通信サービスを提供するだけでなく、企業などに新たな付加価値できるネットワークに進化していかなければならない。

 その際、必要となってくるのが5G SAというわけだ。

 3年半前、「5Gは超高速で大容量、超低遅延が特徴」と散々、言われてきたが、ようやく5G SAによって、そのメリットが出てくるようになる。

ネットワークスライシングを有料オプションにしてはどうか

 個人的にはネットワークスライシングによって「周りに多くの人がいても、反応が良く、高速で安定的につながるオプション」というのがあれば、毎月1000円ぐらいは払ってもいいかと思うほどだ。

 飛行機で言えばビジネスクラス、電車ならグリーン席のように、同じ目的地に行くのは変わらないが、道中、快適なサービスを提供してくれるのであれば、多少の出費は許容範囲だ。

 総務省は、一方的に「通信料金を安くしろ」という議論に持って行きがちだが、NTTドコモのネットワーク品質の低下など、料金とともに品質も下がってしまった感がある。

 もちろん、料金値下げは歓迎なのだが、一方で「仕事でスマートフォンを使うので、いつでも快適で安定したネットワークを提供して欲しい」というニーズがあるのも事実だ。

 キャリアは5G SAによるネットワークスライシングで「プレミアムなネットオプション」というのも検討してみてはいかがだろうか。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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