中国製チップで5G対応(?)のファーウェイ「Mate 60 Pro」はやはりカメラが強力
ASCII.jp / 2023年12月13日 12時0分
「iPhone 15」シリーズの発表直前にファーウェイが中国で発表した「Mate 60」シリーズはスペックの一部が隠された状態で発売されるという、異例とも言える販売を行なっている。アメリカ政府の制裁を受け、5Gスマートフォンの製造ができないファーウェイだが、このMate 60シリーズは非公式ながら5Gに対応し、高性能なカメラを搭載したフラッグシップモデルだ。今回はシリーズ中核モデルの「HUAWEI Mate 60 Pro」を香港でレビューした。
◆ハイブリッドボディーの上質なデザイン
HUAWEI Mate 60 Proは6.82型(2720×1260ドット、120Hz)のLTPO OLEDディスプレーを搭載する。ディスプレー表面はファーウェイが開発した強化ガラス「Kunlun Glass」の第2世代モデルで覆われており、傷への耐性をさらに高めている。フロントカメラは1300万画素で、TOFカメラとセンサーを合わせ3つのパンチホールが並ぶ。
iPhoneのDynamic Islandのような形状にしなかったのは、非表示エリアをなるべく少なくするためだろう。
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背面は上側の2/3をヴィーガンレザー、下部側を金属素材としたハイブリッド仕上げ。淡いパステル系の仕上げは上品な印象で、男性・女性どちらにも受けるカラーリングと言えそうだ。カメラはメインの広角が5000万画素で絞り可変式、超広角が1200万画素、3.5倍の望遠が4800万画素となる。
なお、上位モデルの「HUAWEI Mate 60 Pro+」は4800万画素+4000万画素+4800万画素と超広角カメラの画素数を高めている。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653779/x/34afa0f2f89fd000.jpg)
本体サイズは約79×163.7×8.1mm、重量は約225g。カラバリは今回レビューするパープル以外にグリーン、ホワイト、ブラックの4色があり、いずれも背面はハイブリッド素材仕上げだ。右側面の電源ボタンにはファーウェイのコーポレートカラーの赤のラインが入っている。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653780/x/cc093166df1fc3c3.jpg)
バッテリーは5000mAhで88W充電に対応、100%充電に要する時間は30分だ。またワイヤレスでも50Wの急速充電に対応する。手に持ってみると背面は左右対称デザインであり、写真撮影する際にアングルを自由に決めやすい。側面の角を丸めているため、ホールド感も高い。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653781/x/8f31b85d5ec86520.jpg)
高性能なカメラを搭載しているが、カメラバンプのでっぱり部分はほとんど気にならない高さだ。ケースをつければこのでっぱりはほぼ目立たなくなるだろう。なお上位モデルのHUAWEI Mate 60 Pro+もカメラバンプのサイズは変わらない。
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◆HarmonyOS 4搭載、通信速度から5G対応を確認
OSはファーウェイ独自開発のHarmonyOSで、搭載されているのは最新バージョンのHarmonyOS 4だ。ファーウェイの音声AI「Celia」の性能が強化されたほか、同OS採用の他のデバイスとの接続性も大きく進化している。アプリケーションをそのままウィジェット化し重ねて表示するなど使いやすいUIも健在だ。
なお、HarmonyOSはOS構造を分散化しており、IoT機器などメモリー容量の少ないデバイスにも必要なモジュールのみを搭載できる。たとえば、10月に日本でも発売したウェアラブルデバイス「HUAWEI Eyewear 2」にもHarmonyOSが搭載されている。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653783/x/2f9eaf061ff3c123.jpg)
HUAWEI Mate 60 ProのチップセットはKirin 9000sを搭載する。ただし、ファーウェイはチップセット情報を公開しておらず、海外の調査機関が端末を分解して同チップであることが確認されている。システム情報にもチップセット情報は表示されていない。それどころかモバイルデータ通信の設定を見ると、一般的なスマートフォンやほかのファーウェイスマートフォンでは見られる通信方式の切り替え設定もない。
現在市販されているスマートフォンは「5G優先」や「5G/4G/3G/2Gオート」のように、通信モードをを固定したり優先する設定ができるが、HUAWEI Mate 60 Proではその設定項目すらないのである。つまり、端末が5Gに対応しているかどうかも設定画面からはわからない。これは大手メーカーの上位モデルとしては異例と言えるだろう。
なお、衛星通信にも対応しており、中国国内ではキャリアの電波がない場所でも衛星経由でSMSの送信が可能だ。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653784/x/fb1741d2afacab4a.jpg)
設定画面からは中国の認証情報も確認できる。ベンチマークを測定したところAnTuTuで693724という結果だった。Kirin 9000sのベースアーキテクチャは3年前、2020年10月に発売になった「Mate 40」シリーズ搭載のKirin 9000であり、当時のクアルコムのハイエンドチップセットであるSnapdragon 865相応であることを考えると、このスコアは妥当といえるだろうか。
ただし、1年前にファーウェイが発売した「HUAWEI Mate 50 Pro」はSnapdrago 8+ Gen 1 4Gを搭載しており、CPUやGPU、NPU性能では前モデルよりスペックダウンしている。
5G対応が不明のため、香港で5G契約のSIMカードを入れて速度テストをした。試用する時間が短く速度テストは数ヵ所でしかできず、またブラウザーを使っての計測となったことから、測定できた最高速度は下りが約230Mbps。この速度だけ見ると4G接続のようにも見えるが、同じ場所で同じHUAWEI Mate 50 Proでの4G接続速度は50Mbps前後だった。相対比較からHUAWEI Mate 60 Proのこの速度は5Gに接続していると判断していいだろう。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653785/x/3d2050e0fac31708.jpg)
◆XMAGEテクノロジーと可変絞りで質の高い撮影が可能
HUAWEI Mate 60 Proのカメラは前述したように広角が5000万画素で24mm、f/1.4からf/4.0までの可変絞りを搭載する。超広角は1200万画素で13mm、画角120度でf/2.2。そして望遠は4800万画素、90mm(3.5倍)でf/3.5のペリスコープ型を内蔵する。ファーウェイ独自開発のイメージング技術「XMAGE」を採用しており、円形に配置されたカメラの中央部分にロゴがプリントされている。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653786/x/b443a1385702a4a8.jpg)
カメラのモードは「アパーチャ」「夜景」「ポートレート」「写真」「ビデオ」「プロ」「その他」。写真はデジタルで最大100倍までに対応する。ビデオモードでは720p/1080p /4Kの切り替えを画面右上のタップでできるようになった(HUAWEI Mate 50 Proでは設定画面を開く必要があった)。
ビデオの最大倍率はデジタル15倍だ。そのほかのモードには、高画質撮影固定の「ハイレゾ」、ほかのHarmonyOS搭載スマートフォンのカメラをHUAWEI Mate 60 Proの画面から操作できる「マルチカメラ」などのモードが備わる。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653787/x/6ea191a1a2e42155.jpg)
可変絞りは昨年発売のHUAWEI Mate 50 Pro以降、ファーウェイのフラッグシップモデルの大きな特徴になっている。アパーチャモードに切り替えると、絞りの設定は「仮想アパーチャ」または「物理アパーチャ」が選べる。仮想アパーチャはほかのスマートフォンでも搭載しているAIによるソフトウェア的な絞り調節で、f/0.95からf/16までの切り替えが可能だ。
ただし、ソフトウェア絞りのため被写体が重なり合っているときなど、境界線がきれいにボケてくれないこともある。これはほかのスマートフォンでも同様のことだ。
一方、物理アパーチャを選ぶと、レンズ部分の絞り羽を実際に動かして光量を調整できる。切り替えできるのはf/1.4、f/2.0、f/2.8、f/4.0の4段階。プロモードではf/1.4からf/4.0までより細かく11段階で絞りを調節できる。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653788/x/f7bb4ae6383d2f1f.jpg)
夜景モードもより細かい設定が可能になった。以前のモデルでは夜景モードに切り替えると周辺の暗さからシャッター速度が自動調整され、数秒でシャッターを切ることができた。HUAWEI Mate 60 Proでは夜景モードからISOとシャッター速度を手動で設定できる。夜景モードを起動するとどちらも自動設定となり、従来の夜景モード同様に最適なシャッター速度で撮影ができる。
そして、手動でISOやシャッター速度を切り替えれば、より凝った夜景撮影が可能になるというわけだ。夜景撮影時に夜景モードではなくプロモードを使うケースも多いようだが、HUAWEI Mate 60 Proの夜景モードは設定を簡素にした「夜景特化のプロモード」なのである。
![HUAWEI](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3653776/x/a76bb78465e8ee30.jpg)
以下はHUAWEI Mate 60 Proのカメラ作例だ。
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【まとめ】アメリカ制裁からの復活の狼煙になりそうなハイエンド
HUAWEI Mate 60 Pro搭載のKriin 9000sは中国の半導体ファウンドリーSMICが製造している。台湾TSMCなど海外企業に頼らず中国国内で5G対応チップセットを国内製造することが可能になったことで、今後はスマートフォンのみならずより高性能なKirinチップセットの開発にもはずみがつくだろう。HUAWEI Mate 60 Proの全体のパフォーマンスは2~3年前のハイエンドモデルに留まるものの、XMAGEテクノロジーによる画像処理は業界のトップクラスの性能と感じられる。
中国ではHUAWEI Mate 60 Proはもとより、下位モデルのHUAWEI Mate 60、上位モデルのHUAWEI Mate 60 Pro+への関心も高まっており、Mate 60シリーズ全モデルはファーウェイストアやECサイトで常に品切れが続いているほどだ。
アメリカ政府の制裁が続く中、ファーウェイは約3年間4Gスマートフォンしか発売できなかった。SMICのKirin製造の歩留まり(全生産数に対する合格品の割合)問題や、グーグルサービスではなく独自のHarmonyOSエコシステムをグローバルに展開できるのか、といった不安材料もあるにはある。だが、5G対応かつ高性能カメラを搭載したHUAWEI Mate 60 Proからは「ファーウェイのスマートフォンの復活」を十分感じることができた。
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